サバヒー餌料化試験



本県基幹漁業の一つであるカツオ一本釣漁業で使用するカタクチイワシ、キビナゴ等の代替活餌として、サバヒーに着目しその飼育技術の開発及び活餌としての有効性実証試験を実施した。温泉水を用いた本種の飼育マニュアルを作成し、民間での養殖も始まった。カツオ一本釣の他、マグロ延縄等多くの漁業で活餌としての有効性が実証された。

担当者名
鹿児島県水産技術開発センター 種苗開発部
連絡先
Tel.0993-27-9200
推進会議名
西海ブロック
専門
飼育環境
研究対象
浮魚
分類
研究
「研究戦略」別表該当項目
2(2)適正飼育環境の解明と好適生産環境の制御技術の開発

[背景・ねらい]

本県基幹漁業の一つであるカツオ一本釣漁業は、カタクチイワシ等の活餌を撒餌として使用しているが、高水温に弱く、漁獲も不安定なため、その操業に支障を来すこともある。そこで、東南アジアで広く養殖されているサバヒーに着目し、カツオ一本釣用の代替活餌としてその有効性を実証するとともに、温泉水を用いた種苗飼育技術を確立し本県漁船漁業と内水面養殖業の振興を図る。

[成果の内容・特徴]

  • サバヒー稚魚の導入から出荷までの漁法別のフローを明らかにした(図1)。
  • カツオ一本釣り操業試験では、同量ずつ撒き餌した場合、サバヒーはカタクチイワシに比べて、カツオに良く捕食されていることが判明した(図2)。
  • タチウオ延縄漁業での餌を替えた試験操業では、活サバヒーによる釣獲率は、冷凍キビナゴの4倍(表1)、活カタクチイワシとほぼ同程度であった。
  • マグロ延縄操業試験では、サバヒー餌の場合、冷凍ムロアジや人工餌料の時よりも釣獲率が高かった(表2)。
  • 上記のような釣獲率の良さに加え、輸送時の斃死率が低いこと、揚げ縄時の死亡率が低く繰り返し使用できることもサバヒーの特長であり、カツオの一本釣り、タチウオ・マグロの延縄釣り用の活餌として優れていることが実証された。

[成果の活用面・留意点]

  • 温泉水を利用して行うテラピア養殖等の代替種として、内水面養殖の振興を図ることができる。
  • 高水温や運搬によるへい死がほとんどないことから、カツオ一本釣漁業の計画的操業が行える。
  • キハダマグロ延縄やタチウオ延縄等、高水温時に活餌を用いて行う各種漁業の活餌確保が容易となり、操業の効率化が図られる。

[その他]

研究課題名:
県単事業
研究期間:
平成12~15年度
予算区分:
 
研究担当者:
仁部玄通、原田彰久、奥原誠
発表論文等:
サバヒー餌料化試験報告書(平成12~15年度)

[具体的データ]

図1 サバヒー稚魚(日齢20~25日)の導入から出荷までのフロー

水温30℃でサバヒー稚魚を飼育すると,成長の早いものでは、種苗導入から約2ヶ月でカツオ一本釣り用の活餌、約3ヶ月でマグロ延縄用の活餌として出荷できる。飼育水温は27℃以上とし、選別は種苗10万尾の場合、マグロ延縄用活餌サイズまでに6回行う。

図2 カツオ一本釣り操業試験において,カタクチイワシとサバヒーを同量ずつ撒いて漁獲されたカツオの胃内容物

漁獲したカツオ30尾の胃内容物を調査した結果、サバヒーのみを捕食していたものは6尾、カタクチイワシとサバヒー両方を捕食していたものは17尾で、少なくとも77%のカツオがサバヒーを捕食していた。また,サバヒーは輸送中の斃死率が極めて低かった。


表1 タチウオ延縄漁業で餌として冷凍キビナゴと活サバヒーを使用した場合の釣果の比較

活サバヒーと冷凍キビナゴの釣獲率を比較すると、前者は後者の約4倍であった。また、活きサバヒーと活カタクチイワシの釣獲率はほぼ同程度であったが、サバヒーは輸送中の斃死率が極めて低く、揚げ縄時に生きていることから、繰り返し使用可能であった。


表2 サバヒーを使ったマグロ延縄操業試験の結果

餌毎に釣獲率(釣り針100本当たりの釣獲尾数)を求めた結果、サバヒーは他の餌と比較して釣獲率が高く,また、揚げ縄時にほとんどが生きており、急激な水温(水温差10℃),水圧(水深差300m)の変化に耐えられることが分かった。