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サウジ、同胞団をテロ組織指定 思想的影響力に警戒

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サウジ、同胞団をテロ組織指定 思想的影響力に警戒

 【カイロ=大内清】サウジアラビア政府が7日、エジプトを発祥の地とするイスラム原理主義組織ムスリム同胞団などをテロ組織に指定し、警戒をいっそうあらわにしている。底流には、シャリーア(イスラム法)による統治を通じた「神の主権」確立を目指す同胞団イデオロギーの広がりが自国の王権を揺るがしかねないとの懸念がある。

 サウジからの報道によると、同胞団のほかにも、内戦下のシリアで活動する国際テロ組織アルカーイダ系の「ヌスラ戦線」や「イラク・レバントのイスラム国(ISIL)」、イスラム教シーア派の一派とされるイエメンのザイド派勢力、レバノンのシーア派組織ヒズボラがテロ組織に指定された。

 サウジは1950年代以降、エジプトで王政を打倒したナセル元大統領に対抗するため、同国で弾圧を受ける同胞団メンバーを教師などとして多く受け入れてきたことで知られる。

 しかし、それによって政治変革を強く志向する同胞団のイデオロギーがサウジ国内にも浸透。特に、主権は神のみにあるとする「神の主権」論を唱え66年にエジプトで処刑された同胞団の理論家指導者、サイイド・クトゥブの思想は、アルカーイダを創設したオサマ・ビンラーディン容疑者(2011年5月死亡)にも大きな影響を与えた。

 アルカーイダはサウジ王室の権威を否定しているだけに、同国支配層からみれば、同胞団の思想的影響力は大きな脅威といえる。

 同胞団とアルカーイダ系の過激派組織を同一視することはできないが、サウジとしては、昨年7月にエジプトのクーデターで同胞団主導のモルシー政権が倒れ、同胞団が弱体化している今の時期が、締め付けを強める好機と判断したものとみられる。

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