副市長人事、異例の「再議」へ 「政治慣習やめるべき」

大久保貴裕
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 広島県安芸高田市の石丸伸二市長は21日、市議会に否決された公募副市長の人事案をめぐり、議会側に再議(審議のやり直し)を求めた。人事案に反対した議員が説明責任を果たしていないためと主張。昨年から続く議会側との対立は異例の展開をたどり、出口は見えないままだ。

 「民主主義が崩れてきている。世に横行している政治風習、慣習が正しいとは思わない。やめるべきだ」。石丸市長は21日朝、記者団にこう訴えた。問題視したのは、政治の現場で広く行われている議員たちの水面下での合意形成や根回しなどだ。

 石丸市長の主張によると、この人事案でも複数の議員が事前に反対理由を「議会の掟(おきて)」「有力者に強く言われた」などと明かしていたが、一般公開される審議では触れなかったり、ほかの理由を持ち出したりしたとされる。再議書ではこうした点が「自由討議の推進」を定めた議会基本条例に反すると指摘した。

 また、副市長の人件費を含む今年度予算案に賛成していた議員が、人事案の反対理由に財政難を挙げたなどとして「矛盾」と批判。同条例の「論点や争点を明らかにする」との規定に反すると訴えた。

 対する市議会の宍戸邦夫議長は記者団に、石丸市長の指摘について「条例違反には当たらない」との考えを示した。ただ、再議は首長の「特別拒否権」とも呼ばれる強い措置だ。地方自治法が、議決に法令違反があると首長が認めれば再議を行わせることができると定めるためで、市議会は28日にも審議を行う方向で調整している。

 副市長人事をめぐっては、石丸市長が全国公募で約4千人から選んだ女性の登用を目指したが、3月と6月の市議会で2度にわたって否決。すでに登用断念を表明しており、再議は人事案可決を目指すためではなく「意思決定の過程を市民に示すため」と説明している。(大久保貴裕)

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