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2021.07.09第8回 宮城 気仙沼 “大漁旗”に込められた祈り

宮城県在住、ライターTです。
第37回(7月6日放送)の大漁旗を船にかかげ、餅をまき、及川新次(浅野忠信)の新しい船のお披露目は印象的なシーンでした。
息子の亮(永瀬 廉)や妻の美波(坂井真紀)、みんなの笑顔がありました。

進水式に込められる思い

気仙沼の港は、年間3万隻が入港する全国有数の漁港です。世界の海に出て漁をする遠洋マグロ漁船や、大型サンマ漁船がずらりと並ぶ景色は圧巻のひと言。
そんな気仙沼の晴れの行事が「進水式」です。

「進水式」とは、造船所で造られた船を初めて海に浮かべるときに行う儀式のこと。
常に危険と隣り合わせの漁業者にとって、大切な「祈りの場」なのだそう。船主が主催し、神社の宮司さんが神事を取りしきります。

気仙沼大島にある「延喜式内名神大社 計仙麻けせま 大嶋神社おおしまじんじゃ」の宮司・小松勝麿さんに、新次の船と同じ大きさの小型漁船の式についてのお話を伺いました。

小松さん「船主は地域の人たちに船をお披露目して、神様のご加護もともに分かち合う。海の仕事はみんなで仲よく協力することが大切で、力を合わせないとできないことが多いから。地域みんなの船だって気持ちで、みんなでお祝いするんです。」

進水式の前夜、棟りょうが船に「お船霊ふなだま」という船の魂を納めます。
そうして初めて船は完成するそう。

小松さん「船の祭壇に米・酒・餅・魚・野菜・果物・塩・水をお供えします。本殿が見える海上まで船を出し、『荒潮取り』という祭儀で、船のおはらい・海上安全・大漁満足を祈願します。その後、海上を右回りにぐるっと3回まわり、港に戻ります。」

そして、お供えされた餅は、お披露目での餅まきでふるまわれます。
餅まきは「神様のご加護を一緒にいただいてください」という意味があるのだとか。

色鮮やかな守り神・大漁旗

そして、進水式で大切な役割を果たすのが、大漁旗。

ドラマでは、モネの祖父・龍己(藤 竜也)が新次にプレゼントしていましたね!

そして、こちらが気仙沼で使われている本物の大漁旗です。

日の出、富士山、たか、カキ、マグロ、メカジキ…、原色の大胆な色づかいは、見ているだけで心が浮き立ちます。
大漁旗には「守り神」の意味があり、親類縁者、取引先、漁業仲間が船主に贈るもので、「ふらいき(福来旗、富来旗)」とも呼ばれる縁起物として大切に扱われています。

気仙沼市で150年前から続く染工場の6代目、菊田栄穂さんを訪ねました。

菊田さん「もともとは着物などの染色が主で、大漁旗は頼まれれば時々染めるぐらいでしたが、戦後、遠洋漁業が盛んになると注文が増え、いつしか本業になっていました。

菊田さんの工場の大漁旗の歴史は、気仙沼の漁業の歴史でもあるんですね。

大漁旗は木綿の染物。図案描き・のり置き・染め・洗い・乾燥など、全ての工程を一人で手作業で行い、縫製は奥さまの担当です。
失敗すれば一からやり直しに。その真剣勝負の「気」が、完成した旗からも伝わってくるようです。

菊田さん「一枚一枚手作りなので、全く同じものはできません。お客様の発注を受けてから作りますから、注文にも個性が出ますね。」

大漁旗は、綿々と受け継がれる伝統と、発注する人の思い、作り手の丁寧な仕事が合わさってできる「祈りの形」。関わる人々の思いがあふれているから、見る私たちに元気をくれるのかもしれません。

海が育む祈りの心

海には「板子一枚下いたごいちまいしたは地獄」という言葉があるそうです。
船の底板一枚を挟んだ下は、深く危険な海。豊穣ほうじょうの海は豊かな恵みをもたらしてくれますが、危険も伴います。大海の厳しさが信仰心や助け合いの心を育んでいるのですね。

モネが生まれ育った気仙沼のことを、少しだけ深く知れたような気がしました。

次回もお楽しみに!

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