金本「外れます。迷惑かけられない」連続フルイニング出場止まった…阪神

８回２死二塁、代打で登場した金本だったが二ゴロに倒れた

　◆横浜４─８阪神（１８日・横浜）　アニキの不滅の記録がついに止まった。連続フルイニング出場の世界記録を更新中だった阪神・金本がスタメン落ち。広島時代の１９９９年７月２１日の阪神戦（甲子園）でスタートした記録は、１４９２試合でストップした。右肩痛が完治せず「これ以上チームに迷惑をかけられない」と自ら決断した。鉄人の大英断に一丸となったチームは逆転で横浜を破り、貯金を１とした。

　その瞬間、横浜スタジアムは、何とも言えない空気に包まれた。試合前のスタメン発表。「４番…」。そこに続くべき名前は「金本」のはずだった。しかし、コールされたのは「新井」。どよめき、悲鳴がわき起こる一方で、どこからか、歓声も上がった。金本が積み重ねてきた連続フルイニング出場は、１４９２試合、実に１万３６８６イニングで途切れた。

１回、横浜の早川をベンチから見つめる金本（右）

　自分で、決断した。右肩痛で、投げられない。１７日の試合で８回２死二塁、左前安打の内野への返球が、グラウンドにたたきつけるようなものになり、三塁手の新井のところへも届かなかった。二塁走者の本塁生還を許し、失策になった。右肩の重症度を物語る衝撃のシーンだった。

　一夜明け、この日の試合前練習。打撃練習後、外野でキャッチボールを始めたが、すぐにベンチ裏へ引き揚げた。金本は意を決し、トレーナー室で、真弓監督に告げた。

　「監督もヘッドも、最後まで『出ようよ』と言ってくれたけど、これ以上チームに迷惑をかけるわけにはいかない。特に、ピッチャーに迷惑をかける。あのスローでは…。勝つための手段として、僕は外れます、と言った。最後の悪あがきでテーピングをしてやろうとしたけど、ダメだった」

代打で登場し二ゴロに倒れ打席で声を上げる

　テーピングは真弓監督からの指示で、固く施すことで出場の可能性を探った。ブルペンに移動し、最後のテストを行ったが、本人のＧＯサインには至らなかった。だが、グラウンドを横切り、ベンチへ向かう際、鉄人の表情が一瞬、ほころんだ。決心が固まり、吹っ切れたようにも見えた。

　１９９９年７月２１日の記録スタートから３９２４日目。指揮官は「こちらとしては、１試合でも、１イニングでも長く続けてほしいと思っていた。本当にこれでいいのか、と思った」とためらった。監督室で最後の話し合いを行い、メンバー表の４番打者の名前が書き換えられたのは、メンバー交換の５分前だった。

　「『これ以上迷惑をかけられない』と言ってきた。こちらとしては、『もう少しがんばろう』と説得したが、スタートから外してほしいということだった。『チームのために、自分の記録が途切れてもいい』と言ってきた」

　２００６年４月９日、米大リーグ記録とされるカル・リプケン（元オリオールズ）を超える９０４試合連続フルイニング出場の世界記録を達成したのも、０８年４月１２日、通算２０００安打を達成したのも横浜戦。今回も４月、そして相手は横浜戦。奇遇という言葉では片づけられない、運命的な何かを感じさせた。

　８回に代打で登場し、歴代２位の連続試合出場は１６３８試合に伸ばした。二ゴロに倒れたが、勝利には笑顔で、痛めている右肩を上げ、右手でのハイタッチで仲間を迎えた。「監督とヘッドが、最後まで『出よう』と言ってくれた。その気持ちがうれしかった」。その表情には一点の曇りもなく、迷いや後悔の影は見あたらなかった。

　▼連続４番先発出場もストップ　阪神・金本知憲外野手（４２）は１８日、対横浜５回戦（横浜）で先発メンバー落ち。広島時代の９９年７月２１日対阪神１８回戦（甲子園）から続けていた、自らが持つ連続試合全イニング出場のプロ野球記録が、１４９２試合（１万３６８６イニング）で、０４年４月２日対巨人１回戦（開幕戦・東京Ｄ）からの連続先発４番出場のプロ野球記録が８８０試合で、ともにストップした。なお、この日は８回に代打出場し、広島時代の９８年７月１０日対ヤクルト１５回戦（広島）から継続している連続試合出場は、１６３８試合に伸びた。

　◆金本　知憲（かねもと・ともあき）１９６８年４月３日、広島県生まれ。４２歳。広陵高から東北福祉大を経て、９１年のドラフト４位指名で広島入団。０３年に阪神にＦＡ移籍。０４年は打点王。通算２２０５試合出場で打率２割９分、４４５本塁打、１４２７打点。年俸は４億５０００万円。１８０センチ、８９キロ、右投左打。家族は夫人と１女。