2003年7月15日 掲載
 
「びっくり」 全選手会見、正装1人だけ
 

ウィリアムズ選手のコンサート会場に入る松井選手=13日夜、シカゴ
 【ニューヨーク支局14日道上宗雅】(15日付夕刊)十四日、シカゴ市内のホテルで行われたオールスター戦全出場選手が顔をそろえる会見。Tシャツにジーンズというラフな服装の選手が目立つ中、ヤンキースの松井秀喜選手はグレーのスーツにピンクのネクタイを身につけて臨んだ。「こういう場所はちゃんとした服装だと思っていたけど、びっくりした。でも、逆よりはいいですよね」と苦笑いしたが、ただ一人の正装はルーキーの初々しさを引き立てた。

「7番・中堅」で先発出場するオールスター戦を翌日に控えた松井は、「試合に出られること自体が光栄」と、高ぶる気持ちを抑えるように語った。

 最も多くの報道陣に囲まれたのは松井だった。ブルージェイズの強打者デルガドは「(日本で)野球がどれだけの地位を得ているか、日本人が野球をどれだけ愛しているか分かる。日本にはいいプレーヤーがいる。同じフィールドに立つのは楽しい」。松井、イチロー、長谷川ら日本人選手の存在は、日本のプロ野球界に対する大リーガーの見方を変えたようだ。

 松井は会見後、球宴の舞台USセルラー・フィールドで、他の選手たちと共に合同練習に臨んだ。キャッチボールで松井の相手を務めたのがイチロー。日本人同士としてはこれ以上ない組み合わせの豪華なキャッチボールで観客を沸かせ、中堅の守備位置に移ってからも約二十五分間にわたってボールを追いながら談笑した。

 松井とイチローは星稜高と愛工大名電高の交流により、高校時代からの知り合いである。松井は「まさかこういう場で一緒になるとは、当時は夢にも思わなかった。運命的なものを感じます」と、感激を隠さない。

 松井は恒例の本塁打競争の途中で球場を離れた。「僕もいつか(本塁打競争に)出られる打者になりたい」。十五日の本番、後攻のア・リーグで中堅を守る松井は、右翼手イチローとともに守備位置でプレーボールの声を聞く。「日本のファンは期待すると思う」。求められていることは十分過ぎるほどに分かっている。

●球宴へ向けシカゴ入り 「すべて楽しむ」

 【ニューヨーク支局14日道上宗雅】(15日付朝刊)十三日夜、ヤンキースの4番打者ウィリアムズ選手がシカゴ市内のライブハウスで開いたギターコンサートの会場に、松井秀喜選手の姿があった。カナダ・トロントからオールスター戦のあるシカゴに飛んだ松井は「とにかくすべてを楽しみたい」と、チームメートのプロ級の生演奏に聴き入り、球宴を前にした華やかな雰囲気を感じ取った。

 音楽は松井も好きだ。ピアノは三、四歳から習い始めた。小学校四年生で兄利喜さんと「マイ・ウェイ」を連弾するほどの腕前だったことを、父昌雄さんが著書「秀さんへ。」(文藝春秋刊)の中で紹介している。コンサート後、松井は「いつかバーニー(ウィリアムズ)と共演? ダメダメ。今はもう(ピアノは)弾けないよ」と苦笑いした。それでも、連戦続きの合間のひとときを十分にリラックスしたようだ。

 松井にとって、あっという間の三カ月半だった。ヤ軍の全93試合を全力で駆け抜けた。ただ、前半戦で放ったホームラン9本には、決して満足していない。「ファンの皆さんは、もっとホームランを打ってほしいと思っているはず。後半戦はもっと打てるように頑張りたい」と言えるのは、後半戦に向けて手応えをつかんだからだろう。

 トーリ監督も後半戦の松井の活躍に太鼓判を押した。「ホームランは20―25本、打点は110―120ぐらいはいくんじゃないか」。打点はともかく、残り69試合でホームランを15本程度打つとなるとペースをこれまでの倍に上げなくてはならない。しかし、トーリ監督は優勝争いが激化してくるシーズン終盤での松井の底力を信じている。

 
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