アンサンブル
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QM/MM 法と溶液の理論の融合による凝縮系の化学過程の自由エネルギー計算 (18)
—凝縮系の第一原理計算の方法論について—
高橋 英明
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2014 年 16 巻 1 号 p. 51-54

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抄録

大規模系の電子状態計算において要となるKohn-Sham の密度汎関数法(DFT)について,そのいくつかの問題点をレビューする.その1つは,Kohn-Sham 法において変分探索する電子密度の集合にある.通常のやり方では,実際には,相互作用の無い参照系の「基底状態」電子密度の集合のみを探索することになる.この密度の集合は,本来探索すべきN-表示可能な密度の部分集合にしかなっていないので,正しい電子密度に辿りつけない可能性がある.また,全エネルギーへの寄与の大きな交換汎関数Ex[n]について,これまでの主流の汎関数開発の経緯とその設計指針を論じ,それらとは異なる始点を持つBecke-Roussel 汎関数の概要と利点を紹介する.現在の主流の交換汎関数は一様な電子ガスの交換ホールをモデルとして構築されているが,このモデルは,原子や分子のように,その外縁部の密度が一様性から著しく逸脱する場合には適切ではない.Becke-Roussel のモデルは,原子,分子系の応用にとって理にかなった描像を与えるものである.

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© 2014 分子シミュレーション研究会
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