フランス南部マルセイユで衝突と催涙ガス 警察による少年射殺に抗議続く

動画説明, フランス南部マルセイユで対峙(たいじ)するデモ隊と警察

パリ郊外で警察が少年を至近距離で射殺したことへの激しい抗議がフランス各地で5日間にわたり続く中、南部マルセイユでは7月1日、市民と警察が衝突し、警察は催涙ガスを使った。現地当局によると、少なくとも56人が逮捕された。この日の全国での逮捕者は、少なくとも322人に上るという。

マルセイユでは1日夜から2日未明まで警官隊とデモ隊が対立。オンラインで拡散されている動画では、警察が市民に催涙ガスを投げ込む様子が映っている。市内中心部の中央通り、ラ・カヌビエールが主な抗議行動の現場になっている。

フランス・メディアによると、大人数のデモ隊と警官隊が1時間以上にわたり衝突した。

パリ郊外ナンテールで6月27日、17歳の「ナエル・M」さんが交通検問から走り去ろうとする際に警官に至近距離から胸を撃たれた。その後、車は歩道に乗り上げ、衝突して止まった。少年は死亡が確認された。これに対する抗議が全国的に続いたが、5日目になる1日夜、パリ中心部では大勢の警官隊が投入されたことを受けてか、大きな混乱はなかった。

ジェラルド・ダルマナン内相はツイートで、1日夜から2日未明までの全国での逮捕者は427人に上ると発表。法執行機関の「毅然とした行動」が「これまでより穏やかな夜」をもたらしたとたたえた。

事件発生から4日間での逮捕者は2300人に上り、1日夜には全国で警官4万5000人が配備された。

全国的に6月30日夜だけで1300人以上が逮捕されている。1日夜の逮捕者数はさらに増える見通し。

Paris

画像提供, EPA

画像説明, パリ中心部のシャンゼリゼ大通りには大勢の警官が配備された

パリでは1日、中心部シャンゼリゼ大通りでの大規模デモがソーシャルメディアなどで呼びかけられていたが、大人数の警官隊が配備された影響か、抗議行動はほとんど見られなかった。

首都圏は2日連続で、午後9時以降のバスやトラム(路面電車)の運行を停止した。

パリ市警によると、1日の逮捕者は126人。

フランスのエリザベット・ボルヌ首相は、国家警察のパリ司令本部を視察したという。

北部リールでは警察の特殊部隊が警備に当たった。リール市内では1日夜、デモ隊が車に放火し、消防隊が消火にあたる様子が撮影された。

中部リヨンでは地元当局が現地メディアに、一晩で21人が逮捕されたと述べた。南部ニースや東部ストラスブールでも、デモ隊と警官隊が衝突したという。

1日に葬儀

動画説明, パリ警察が17歳のドライバーを射殺 事件の映像
Presentational white space

ナエルさんの葬儀は1日にナンテール市内のモスク(イスラム教寺院)で執り行われた。遺体は地元の墓地に埋葬される。

遺族の支援者たちはマスコミの取材を認めなかった。参列者は、スマートフォンによるものを含め、一切の撮影を禁止された。遺族の支援者は参列者に、「スナップチャットもインスタグラムも不可」と伝えた。

ナエルさんは6月27日、交通検問で警官の制止に応じなかったことから、乗用車の運転席にいるところを撃たれ、救急救命隊の到着後に現場で死亡した。その数時間後にオンラインに投稿された動画では、警官2人が車を制止しようとするほか、別の警官が銃を運転手に向けている様子が映っている。

ナエルさんに発砲し死亡させた警官はその後、殺人罪で訴追され、遺族に謝罪した。弁護士は、この警官がショックで打ちのめされていると話している。

ナエルさんの死亡によって、フランス国内での警察活動の現状についての議論が再燃している。とりわけ、2017年の法改正では、運転手が警察の停止命令に無視した場合、警官に発砲する権限があると定めており、議論の対象になっている。

法制度の議論に加え、さらに幅広く、フランスの警察における人種差別の問題も指摘されている。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は6月30日、フランスにとって現状は「法執行機関に深く根差す人種差別の問題に真剣に取り組む」きっかけになると述べた。

他方、フランスのエマニュエル・マクロン大統領は30日、少年の死が、暴力行為の正当化に利用されていると指摘。暴力行為を「最大限の断固とした態度で」非難し、「少年の死に便乗することは容認できない」とした。