1.ハマオモトの花芽分化は, 熱帯の多雨地帯では一定の季節がないものと思われる.同様に, 日本の多雨, 亜熱帯的傾向の地では, 年間緑葉を存し, もつと小さい株にも開花をみるが, 冬期葉枯れの多いところでは, 約20年も経た直径10cm内外の大きな鱗茎を有つものにおいて, 6, 7, 8, 9月の温度も十分な多湿期すなわち葉の最も繁茂する時期に, その最大
葉腋
に花芽が形成されるものと考えられる.これは花芽分化期において, 花芽分化したものに対して, 温度の不十分や葉鞘部剥離等の条件を与えて, その生活力を失わしめ, そのまま放任しておいた場合, これが後に葉芽の発生に転じて分岐性を有するに至ることからも, これを証しうるであろう.また寒い環境で育てると, 開花をみるに至つた大株が往々分岐性となるのもこの原因ではなかろうかと考えられる.
2.無加温の低温室で作つたもので調べてみると, ハマオモトは6月下旬から6, 70cm内外, 幅2cm内外×1.5cm内外の花軸を抽出し, 約10日前後して7月上旬より開花し始める.1花序の上に1日平均2花内外開く.それは外回り4, 中廻り4, 内廻り通常4, 時にn (2とか5とか6) の順に規則正しい散形花序に開く.花は自花受精であるが, 開花直後人工媒助を行なうと種子数は増す.各花は夕刻から開いて両3日もち, 花期2週間に及ぶ.開花後40日内外から5, 60日で採種できる.採種期間は約1週間内外, 果実は熟すると緑花から黄白色に変る.種子は熟して重い胚の位置が傾いた果実の下に変り, そのままで落ちるが, 水に投ずるとそのままの位置で浮く.1株から出る花軸数は株の大きさによつて異なり, 1株より1つのことも, 2つのこともあるが, 大株では3花軸も出すので, 花期は7月上旬, 下旬から8月上旬にも及ぶ.盛夏が大体花期, 果実の熟するのは9月上旬~10月上旬に及ぶ.
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