2009年10月10日8時46分
福岡県中間市で08年9月、指定暴力団工藤会(本部・北九州市)傘下の組幹部が射殺された事件について、福岡地検小倉支部が裁判員裁判の対象から外す請求を福岡地裁小倉支部にすることを検討していることが9日、分かった。事件は内部抗争とみられ、裁判員に危険が及ぶ可能性があると判断したという。
地検小倉支部は9日、工藤会系の組幹部坂本敏之(41)、組員岩永哲平(30)の両容疑者を殺人などの罪で地裁小倉支部に起訴した。起訴状によると、坂本容疑者らは08年9月10日未明、工藤会系の安高(あたか)毅・組幹部(当時66)宅で、安高幹部の頭や胸など4カ所を拳銃で撃ち、殺害したとされる。
裁判員裁判からの除外請求を検討する理由として、地検支部は(1)工藤会系組員が過去に一般市民を狙った凶悪犯罪を起こしている(2)事件は工藤会内部の勢力争いを背景にした組織的犯行とみられ、構成員が組織維持のため裁判員に圧力をかける恐れもある(3)裁判員が選任される北九州地区4市9町の地域と工藤会の勢力範囲がほぼ一致しており、裁判員が恐怖を感じる可能性がある――ことを挙げる。
地検支部の関係者は「暴力団構成員が傍聴席に押し寄せると、裁判員が恐怖を感じて裁判所に来られないということもありうる。一般市民を狙うことが少なくない工藤会の悪質性も考慮すると、除外を積極的に検討すべき事件だ」と話している。
裁判員法は、裁判員裁判の対象事件でも、裁判員や親族に危害が及ぶ恐れがある場合は裁判所の判断で、裁判官だけで公判を開くことができると定めている。
同様の請求は、さいたま地検も検討している。最高裁広報課は除外の基準について「事件内容や地域性などケース・バイ・ケース。今後、除外事例が蓄積されていくことで基準ができるのではないか」と話している。
福岡県警によると、工藤会が一般市民を狙った事件には、03年に暴力追放運動に熱心だった飲食店に手投げ弾を投げ込んで11人に重軽傷を負わせた事件や、市民への強要事件で組長が服役したことへの報復で07年、被害者の市民が刺された殺人未遂事件などがある。