上海のロックダウンが延長、市内全域に拡大
中国・上海は5日、新型コロナウイルス対策のロックダウンを延長し、対象を市民2500万人すべてに拡大した。同市では感染者が急増している。
上海では当初、市の東部と西部で別々の対策を取っていた。しかし今回、市内全域を対象に無期限の規制を実施した。
中国がロックダウンを実施した単一都市としては、上海は過去最大。
主要な金融センターである上海では、1カ月以上にわたって新型ウイルスの新たな感染の波が広がっている。
報告された感染者は1日あたり1万3000人を超えている。ただしこれは、国際的にはそれほど高い数字ではない。
住民によると、厳格な対策のため、誰も住宅の敷地から出ることを認められておらず、必要な食料も調達できない状況になっている。
インターネットで食料や水を注文できるが、物資と配達員の不足で注文できる時間が制限されており、うまくいかないこともあるという。
徹底排除の政策
中国は、感染を徹底的に抑え込む「ゼロ・コロナ」戦略を取っている。ただ、隔離規制をめぐって市民らの怒りが強まっており、上海では同戦略の限界が試されている。
中国以外の国は、新型ウイルスとの共存を探っている。
オミクロン変異株は感染力が強く、症状は比較的軽い。そのため、中国が現在の戦略を長期に続けるべきなのか、疑問の声も出ている。
上海の保健当局者は、「現在、上海の感染拡大の防止と抑制は、最も困難で危機的な段階にある」との見方を表明。ゼロ・コロナ政策の順守が重要だとした。
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上海は全域でウイルス検査を実施しており、4日には過去最多の1万3086人の感染が確認された。
同市には国内の他の地域から3万8000人以上が派遣されており、2020年初めに武漢が封鎖されたとき以来の、全国的な大型医療対策が取られている。
<分析> スティーヴン・マクドネル中国特派員
この国の「ゼロ・コロナ」システムは、よく言って、対応に苦しんでいる。
中国はこれまでも新型ウイルスのロックダウンを実施してきた。だが今回ほどの規模のものはなかった。
2500万人を自宅にとどめ、食料を提供し続けるのは、物流などの面で非常に困難だ。
ソーシャルメディアには、宅配システムが機能せず、食べ物を注文できないと訴える住民たちの怒りの声があふれている。
感染者が集められている隔離施設では、キャンプ用ベッドを使っている人も多く、シャワーなどの設備もない。感染者たちは隣り合うように押し込まれ、あふれかえっている。
中国で信頼できる数少ないメディアの1つ、財新によると、感染者の濃厚接触者は近隣の省に移動させられるという。上海市民の数十万人が対象になる可能性がある。
中国政府の完全排除政策は、標語のようなものになっている。中国政府は諸外国について、自国民を犠牲にして国を開放しているとあざ笑っている。
医療の専門家の中には、予防接種を受けた人がオミクロン株に感染しても恐らく病院に行く必要はなく、自宅で回復できるというメッセージを伝えようとする人もいる。
このことを認識している中国人は、ほとんどいないとみられる。当局や国営メディアは、この事実を隠している。
それゆえロックダウンは続いており、上海以外にも広がっている。吉林市(人口360万人)、長春市(同900万人)、徐州市(同900万人)、鉄鋼都市の唐山市(同770万人)のほか、さまざまな町や村でも住民が屋内に閉じこめられている。
人々への負担、および経済的コストは、とてつもないに違いない。