ヘイリー米国連大使が突然の辞任表明 20年大統領選出馬は否定

Outgoing US Ambassador to the United Nations Nikki Haley talks with President Donald Trump in the Oval Office

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米国のニッキー・ヘイリー国連大使(46)が9日、辞任を発表した。

ヘイリー氏はサウスカロライナ州知事を経て2017年1月、国連大使に着任。大使として2年近く務めた。トランプ政権の数少ない女性高官だった。

大統領執務室での辞任表明にはドナルド・トランプ米大統領が同席した。トランプ氏はヘイリー氏について「素晴らしい仕事」をしたと述べた。

ヘイリー氏は辞任の理由は明らかにしなかったが、2020年米大統領選に出馬するのではという臆測は否定した。

トランプ氏は後任を2~3週間の内に選ぶと語った。

ヘイリー氏の後任にはイバンカ・トランプ氏(左)やディナ・パウエル氏の名前が取りざたされている

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トランプ氏は次期国連大使に、ディナ・パウエル元大統領副補佐官(国家安全保障担当)の起用を検討すると明らかにした。また、娘のイバンカ・トランプ氏も国連大使として「抜群だろう」が、そんなことをすれば身内ひいきだと批判されるだろうと自ら述べた。

数時間後、イバンカ氏自身がツイッターで、「多くの素晴らしい同僚たちと共にホワイトハウスで仕えるのは栄誉だし、大統領はヘイリー大使の後任に手ごわい人物を指名するはずです。その後任は私ではありません」と投稿。自分が後任になるのは有り得ないとの考えを示した。

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ヘイリー氏は何と

ヘイリー氏は突然の辞意表明について詳細を語らなかった。次に何をするかについても明かさなかった。

ヘイリー氏は公職を務めた期間について、「厳しい8年間だったし、私は任期制限の信奉者だ」とし、「これからどこに行くのか、何も決めていない」と語った。

さらに、報道陣に向かってトランプ氏を指差し、「この人」のために運動するつもりだと述べた。

トランプ氏は、ヘイリー氏から少し前にしばらく休暇を取りたいと聞かされていたと語った。

トランプ氏は、ヘイリー氏が「僕にとって特別で、素晴らしい仕事ぶりだった。彼女は何より非常に優れた人だが、それと同時に、色々なことが分かってる人だ」と話した。

「できれば、いつか戻ってきてほしい。いいね。違う立場でもいい。自分で選んでいいよ」というトランプ氏の言葉に、ヘイリー氏は笑顔を見せた。

ニッキー・ヘイリー氏とは

  • インド移民を父母に生まれ、ニムラータ・ランダワと名づけられた。サウスカロライナ州バンバーグでシーク教徒として育ったが、後にキリスト教に改宗した
  • 13歳の時、家族が営む衣料品店の経理係として働いたのが最初の仕事だった
  • 2010年、女性としても少数民族出身としても初めてのサウスカロライナ州知事となった。米国で最年少の州知事でもあった。2014年には再選を果たした
  • 2015年、サウスカロライナ州チャールストンの黒人教会で銃乱射事件が起こると、ヘイリー氏は議会議事堂に掲げられていた南部連合旗の撤去を決め、全米の称賛を受けた。この旗は南北戦争時代に南部連合が使用したもので、白人至上主義の象徴とみなされることもある。銃撃犯は犯行当時、車のナンバープレートに南部連合旗をつけていた
  • 2016年米大統領選では、当初トランプ氏を支持していなかった。フロリダ州選出のマーコ・ルビオ上院議員を支持していた
  • サウスカロライナ州兵のマイケル・ヘイリー大尉と結婚。10代の子供が2人いる
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在任中出来事

ヘイリー氏は辞任を表明する前日、贈り物として高級航空便による7度の個人移動をサウスカロライナ州産業界の大物らから受け取っていたとして、反汚職監視機関から告発されていた。

監視団体「Citizens for Responsibility and Ethics in Washington(責任と倫理のためのワシントン市民)」は8日、ヘイリー氏が年次の資産公開報告書で、数十万ドル分の航空便費用を過少計上したと指摘した。

一方でイバンカ・トランプ氏は9日、「ヘイリー大使は尊厳と分別を持ってアメリカに仕えた。ヘイリー氏は力強い改革者で、合衆国内での真実、信念ある現実主義、誠実さの王者であり続けている。ジャレッド(・クシュナー氏。イバンカ氏の夫)と私はヘイリー氏との友情に感謝している。私たちは幸運だ」とツイートした。

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他の政権関係者と衝突することもあった。トランプ氏の側近が今年4月、対ロ追加制裁についてヘイリー氏の公表が早すぎたと示唆した際、大使はこれに強く反発した。

トランプ氏の経済顧問を務めるラリー・クドロー国家経済会議(NEC)委員長は、ヘイリー氏が「先回りして」、「一瞬混乱」したと述べた。

だがヘイリー氏は数時間後、米フォックス・ニュースに対し、「失礼ながら、私は混乱などしない」と反論した。

2016年米大統領選では、ヘイリー氏はたびたびトランプ氏を批判した。

ヘイリー氏は当時、性的暴行でトランプ氏を告発した女性に「耳を傾けるべきだ」と述べた。

また、ヘイリー氏はトランプ氏の物言いが世界大戦を引き起こす可能性があると指摘したこともあった。

辞任表明への反応は

トランプ氏とヘイリー氏は先月、共に国連総会に出席した

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共和党議員らは9日、辞任表明の報道を受けてヘイリー大使を称賛した。

自分も引退を表明しているポール・ライアン米下院議長は、「物事をより良くするために、ヘイリー氏は敵味方なく挑戦し続けた」と述べた。

リンジー・グレアム上院議員(サウスカロライナ州選出)は、ヘイリー氏が国連で「改革を真剣に追求した」と話した。

一方で民主党からは、上院外交委員会筆頭委員のロバート・メネンデス議員が、「トランプ政権の外交政策がいかに混乱を極めているか、さらに明らかになった」と指摘した。

またメネンデス議員は、大使辞任による「指導力の空白と、混乱が続くこの時期の離脱による国家安全保障への影響を、深く懸念している」と付け加えた。

トランプ政権で辞任した、もしくは解任された人物一覧(辞任予定のヘイリー氏を含む)
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<解説>今後に注目――ニック・ブライアントBBC国連特派員

トランプ政権の回転扉から、また1人高官が出て行く。政権でも飛びぬけて注目度の高い女性で、ドナルド・トランプ大統領が振るう反グローバル主義の鉄球から国連を守るのに大きな役割を果たしてきた国際主義者、ニッキー・ヘイリー米国連大使だ。

ヘイリー氏は国連で、ロシアとシリアを厳しく批判し続けた。国連が反イスラエルで偏向していると主張し、痛烈に批判した。国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への資金拠出中止を支持したのもヘイリー氏だし、在イスラエル米大使館をテルアビブからエルサレムへ移転するというトランプ政権の決定を積極的に擁護し、国際的な批判を浴びた。北朝鮮への厳しい制裁体制を支持するよう、中国に圧力をかけるのにも、ヘイリー氏は大きな役割を果たした。

しかし時に、ヘイリー氏のやり方は同僚と軋轢(あつれき)も生んだ。米国を支持しない国を繰り返し攻撃的に警告したため、親しい同盟国でさえ不快感を募らせた。それでも、国連最大の平和維持活動の対象はトランプ氏のホワイトハウスだとしきりに言われる状況では、ヘイリー氏は国連にとって重要な協力者だとみなされていた。

サウスカロライナ州知事も務めたヘイリー氏は、将来の女性大統領と広く噂されるほどの、有能な政治家だ。2020年にトランプ氏の対抗馬となることは否定したが、ニッキー・ヘイリーの物語はこれで終わりではない。

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