様々な言語活動を行っている時の脳の活動部位を特定する有力な方法として, 脳血流をPET (positron emission tomography) で計測しSPM (Statistical Parametric Mapping) で解析する手法がある. SPMは脳全体にわたって有意な活動部位を検出する優れた解析方法である. しかし, 従来これらの表示方法は平面スライス, 3方向投影図, 脳表面着色図がほとんどで, これらでは立体的位置関係が分かりにくく読影が困難であった. そこで今回我々は脳機能画像をより分かり易く読影できるよう, これらを3次元再構築した画像作成を試みた.
対象は正常ボランティア12名で, 日常会話文聴取時のPET画像をSPMで解析した後, 1) SPM付属の従来の表示, 2) 3次元静止画像, 3) 3次元動画の作成を試みた. 2), 3) の3次元表示にはVTK (The Visualization Toolkit) のvolume rendering機能を使用したのが特徴である. また, 脳機能画像には元の脳画像が含まれないため, MRI脳画像との合成などを自作C++プログラムによって行った. 3) の動画は2) の静止画で一コマーコマを作成し, 市販ソフトウエアを用いて動画にした. 2), 3) の画像作成はパソコンを用いて行った.
この結果, 従来の表示方法に比べ, 3次元再構築を行うことで脳活動部位の同定がより容易となった.
脳機能画像は従来神経内科, 脳外科などの領分であったが, 耳鼻咽喉科でも言語の聴取, 表出を扱っている点から今後ますます重要な領域になると考えられる. 今回のように, 従来分かりにくかった脳機能画像を正確な3次元表示画像にすることが, 脳機能画像を正確で直感的に読影するのに重要であり, ひいてはこの分野での発展につながると考えられた. また, 3次元表示で一般的に知られている手法はsurface modelであるが, 脳のようなものの表示には今回用いたvolume renderingの方が優れていると考えられた.
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