日本臨床免疫学会会誌
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総説
CD4+ヘルパーT細胞分化の基礎と臨床
臼井 崇
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2007 年 30 巻 6 号 p. 419-427

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抄録

  抗原特異性を持つCD4+ヘルパーT細胞(Th細胞)は,獲得免疫機構において中心的な役割を担っている.Th細胞は胸腺で教育・選択を受けた後,末梢組織に分布し,抗原提示細胞による刺激を受けると,周囲のサイトカイン環境や副刺激の種類により,IFN-γを主に産生するTh1細胞,IL-4, 5, 13を主に産生するTh2細胞,あるいはIL-17を主に産生するTh17細胞という少なくとも3種類の異なるエフェクター細胞へと分化し,それぞれ細胞性免疫,液性免疫,炎症免疫機構を担っている.Th1分化にはIL-12, STAT4, T-betシグナルが,Th2分化にはIL-4, STAT6, GATA3シグナルが,そしてTh17分化にはIL-1β, TGF-β, IL-6, IL-23, STAT3, RORγtシグナルが重要である.特に最近その概念が確立され,独立したエフェクターCD4+ T細胞であるTh17細胞の解析により,これまでのTh1-Th2パラダイムだけでは説明できなかった多くの炎症病態が説明可能になってきている.今後は,このIL-17制御を目的にとした新たな薬剤開発が活発となるであろう.

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© 2007 日本臨床免疫学会
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