この企画はスポーツ紙4紙のウェブサイトによる初の共同プロジェクトです
長嶋JAPAN、アジア1位でアテネへ―。決勝リーグ最終日で韓国と対戦した日本は、先発・和田毅から黒田、岩瀬、小林雅の4投手の継投で韓国打線を完封。3戦全勝で6大会連続の五輪出場切符を手にした。アテネ五輪の球技で出場権を獲得したのは、女子ソフトボールに次いで2競技目。3試合で計1失点と、あえて大砲不在の代表を編成した長嶋茂雄監督(67)の構想が実った。来年8月のアテネ五輪では、1984年ロサンゼルス五輪以来の金取りに挑む。また、台湾が2位で3大会ぶりの五輪出場を決めた。
冷えきった外気をかき消すだけの熱情を、長嶋監督は全身から発していた。端正な顔立ちは興奮で赤く染まり、髪形の乱れも忘れて、声をからした。ゲームに集中するため、初めて眼鏡をかけてさい配をふった。これまでの野球人生で得た栄光と名声のすべてをかけた新たな戦いで、また勝利した。 9回、小林雅が最後の打者を空振りの三振を奪うと、人を魅了してやまないあの笑顔で選手一人一人と握手を交わした。「ウチの投手も1、2番手、そして最後の小林君が仕上げてくれて。理想的な展開となった」戦前のもくろみ通り、投手力で韓国をねじ伏せた。 戦前は天王山になると思われた韓国戦に、思いきってルーキー和田を先発させた。「シリーズほど緊張しないと思っていたが、実際に日の丸をつけて戦うと緊張感があった」日本シリーズで見事な投球をした天才左腕は、4回には2死満塁のピンチを招きはしたが、張盛好(チャン・ソンホ)をスライダーで空振りの三振。6回1死まで4安打9奪三振で無失点と、見事な投球を披露した。 ここ一番での勝負度胸と、左の強打者が多いことをにらんで、長嶋監督は早くから和田の韓国戦登板を模索していた。都内での自主トレ期間中、対戦したことのあるパ・リーグの打者を呼んで、その長所を聞いた。 「直球と変化球の腕の振りがまったく同じ。球持ちが長いので、速さを感じるし、変化球も手元で曲がるため、球種の判別もつきにくい」パの猛者の絶賛を直接、耳にして、アジア最大のライバルに、エースの上原ではなく、新人左腕をぶつける大胆な選択を決めた。 初戦、上原で勢いをつけ、松坂で切符を確実にして、和田で決める。戦略は見事に当たった。台湾、韓国の強豪2か国を相手に2試合連続の完封を達成。3試合でわずか1失点と、完ぺきな防御で、念願のアジア予選1位通過を果たした。 昨年10月、釜山で行われたアジア大会を、強化本部長として視察した。プロアマ混成の日本は韓国に大敗。台湾にすら勝てなかった。「負けることは仕方ない。しかし負けに慣れるのが怖い」指揮官は訴えた。 日の丸への誇りが失われることも恐れた。選手同士が誇れるチームをつくって、巻き返す必要がある。最強JAPAN編成へ。自ら泥をかぶる覚悟でユニホームを身につけ、1年前の雪辱を果たした。 「我々は究極の目的はアテネでの戦いだ。国際大会は一発で決するケースは多くない。機動力を使い、つないで点を取り、守りを充実させたい」アジアを制したのと同じ野球で、アテネのメーンポールに日の丸を掲げる。(山本 理) 日本・長嶋茂雄監督「3連勝でアテネの出場権を手中に収めたかったので、実践できて喜んでいる。待ったなしの1本勝負の中で、理想に近い展開ができたと思う。われわれの究極の目標である来年の本番に向け、これからスタッフの人選などを抜かりなくやっていきたい」 竹田恒和・日本オリンピック委員会(JOC)会長「最初のうちは日の丸を背負った硬さが見られたが、実力を発揮してくれて大変うれしく思っている。野球は国民的スポーツなので(五輪に)出ると出ないでは盛り上がりが違う。本番でもベストメンバーを組んで、金メダルを目指してほしい」
《スターティングメンバ−》
[遊]松井(西) [二]宮本(ヤ) [中]高橋由(巨) [捕]城島(ダ) [右]福留(中) [左]谷(オ) [指]井端(中) [一]小笠原(日) [三]二岡(巨) [投]和田毅(ダ)
[中]李晋暎 [二]金鍾国 [一]李承Y [指]金東柱 [右]朴栽弘 [三]鄭成勲 [左]張盛好 [捕]趙寅成 [遊]朴鎮万 [投]李丞鎬