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II.兵力動員体系

1.正規軍の召募(徴集)体系

 現在、北朝鮮正規軍の総兵力は、約120万程度と推算されており、総人口に比し、正規軍の数字を見れば、世界で最も高い比率である。北朝鮮が現在最悪の経済難と深刻な食糧難を経験しつつ、このように多くの兵力を維持しているのは、数種類の原因があるが、それは、@先端武器の劣勢を兵力の優位で相殺し、また、韓国のような山岳地形では、兵力の数的優勢が戦闘に有利であると判断したため(6.25時の中共軍の経験で見たように)であり、A劣悪な軍服務環境により、兵力維持費が少なく(韓国軍1名の維持費用で北朝鮮軍20名以上を維持できる。)、B大規模工事を始めとする人海戦術が必要なところに軍兵力を派遣し、資金を少なくして工事を行えるためであり(南浦閘門、高速道路、発電所工事場等、多くの大型工事は、主として軍兵力を投入し、建設している。)、例を挙げれば、97年春から、各級軍部隊部隊長を農場管理委員長に指定し、1年間、割り当てられた農事の責任を負い、運営するようにする等、農事にまで軍を投入している。最近、北朝鮮から帰順した 安ソングク、金ウォンヒョン氏は、「金正日が、農事がだめなら軍隊が入って農事を担わなければならないと人民武力部に指示した後、農事までも軍隊が管理している」と伝えている。C北朝鮮軍の組織編制の特性上、長期服務が不可避なためである(北朝鮮軍には、職業下士官制度がなく、古参兵が下士、中士、上士、特士等の下士官の職級を遂行させられている。)。

 以上のような理由により、北朝鮮は、世界に異例のない膨大な兵力を維持しており、青年の軍服務期間も10年以上と世界で最も長い。

ア.召募(徴集)制度

 1992年4月9日に改正された北朝鮮社会主義憲法第5章第86条には、次のように規定されている。「祖国保衛は、公民の最大の義務であり、栄誉である。公民は、祖国を保護しなければならず、法が定めたところにより軍隊に服務しなければならない」。従って、憲法によれば、北朝鮮は、軍民皆兵制度を実施しているものと見られるが、首領の教示が憲法より優先する北朝鮮では、徴集制度も金日成、金正日の教示と指示により変更されている。

 北朝鮮は、48年2月8日、人民軍創建から3年間の戦争期間を除外して、56年までは、形式的な徴兵制度を実施したが、56年からは、当時の民族保衛省(現人民武力部の前進)命令により、「軍服務条例」を発表し、平時には、召募(徴集)対象を18〜25歳、戦時には、18〜45歳と徴集年齢を定めた義務兵制度を実施した。当時までは、男子が18歳になれば、「召募通知書」が発布され、義務的に身体検査を受け、合格すれば、そのまま軍に入隊しなければならなかった。

 しかし、60年代の経済成長により徴集対象人口が速く増え、反対に10年間の軍服務年限は、少なくされ、兵力数が幾何級数的に増え、いわゆる「社会主義大建設」が始まり、者会にも多くの労働力が必要とされるや、1972年からは、労働党が選抜する者だけを軍に入隊させる形式上の志願兵制度を再び実施した。このような志願兵制度は、事実上選抜されれば、軍に入隊しないことができないため義務兵制度と特に違った差がなく、1994年頃からは、大学推薦者を除外した絶対多数を入隊対象者に選抜、召募しているものと知られている。

イ.召募(徴集)対象

1)平時

 平時に徴集対象は、法に従い18〜20歳までの男子として、成分調査と身体検査に合格した者とし、次の対象は、徴集から除外される。
 

  1. 大学入学者
  2. 身体検査不合格者
  3. 成分が極めて不良な者(出身及び社会成分不良者として軽微な者は、最近、一部徴集実施)
  4. 越北者と北送僑胞及び外国帰還者の子女(最近、一部徴集実施)
  5. 独り息子(子供が1人だけの場合)
  6. 犯罪者(裁判係留中であるか、裁判を受けた者)
  7. 軍需工場勤務者及び社会安全員
  8. 鉄道勤務者
  9. 身体障害者及び精神病者

 女性の場合は、少ない人員を召募する関係で徹底した支援による徴集を実施しており、成分、身体検査等、合格項目で最も高い基準を適用して召募する。特異なのは、大学入学者を徴集対象から除外したことで、北朝鮮当局は、これらインテリ養成を強化するための政策であると言っているが、大学に推薦される者の80%以上が幹部の子息であるため、事実上、幹部の子息は、合法的に兵役を免除されている計算である。

2)戦時

 北朝鮮は、戦時徴集対象者を男子18〜45歳までと規定しているが、北朝鮮社会の属性上、戦時にこのような規定は、無視され得る。実際に、6.25戦争時にも、16〜51歳まで徴集された事例があることを見れば、今の年齢規定は、何の意味も持たない。

 戦時には、全ての公民が徴集に応じなければならない義務があり、実際、義務兵制度に転換される。戦時に軍服務忌避者は、反逆者として規定され、即決処分を行うようにされている。女性の場合にも、選抜されれば、義務的に服務しなければならず、次の各号に該当する者だけが徴集対象から除外される。
 

  1. 軍需工場勤労者

  2. 鉄道勤務者

  3. 身体障害者又は精神病者

  4. 社会安全員

  5. 刑執行中にある犯罪者

 しかし、この中でも、平時、地方軍に編入されている人員は、そのまま正規軍に編成されるため、自動的に軍服務を行わされる。

ウ.召募(徴集)関連機関

1)人民武力部総参謀部隊列補充局

 北朝鮮の全体正規軍及び予備兵力(人民武力部、護衛司令部、平壌地区防御司令部隷下兵力と人民警備隊兵力、そして地方軍兵力及び赤い青年近衛隊を含む。)の管理と充員は、戦・平時を問わず、人民武力部総参謀部隊列補充局(通常名称、軍事動員局。以下隊列補充局という。)において単一管掌する。

 隊列補充局は、各軍種司令部及び軍団隊列部を通して、兵力の損失の有無と充員需要を掌握し、傘下の各道、市、郡(区域)軍事動員部を通して、兵力を召募して欠員の兵力を充員する役割を担当する。隊列補充局はまた、最高司令官命令と人民武力部命令に従い、各軍部隊の編制調節事業も担当し、同時に赤い青年近衛隊の兵力現況も掌握指導する。隊列補充局の構成は、大略次の通りである。
 

bullet局長(中将)
bullet党秘書(少将)
bullet副局長(少将)2名:隊列担当1、召募担当1
bullet1部(組織計画部):企画管理担当
bullet2部:前縁軍団隊列担当
bullet3部:海・空軍隊列担当
bullet4部:その他の軍団隊列担当
bullet5部:召募担当
bullet6部:除隊及び赤い青年近衛隊担当
bullet7部:編制部

 隊列補充局の各部署は、担当部隊の統計資料の報告を受け、数次に渡り隊列検閲を通して、状況を把握し、対策を立てる。例を挙げれば、隊列補充局の関係部は、管下各部隊のみならず、人民武力部の部署まで隊列検閲を行い、不必要な編制や部署が発見されれば、資料を総合して報告し、編制調節を実施する権限を持っている。

2)各道の軍事動員部

 各道の軍事動員部は、各道所在地に1ヶ所ずつあり、隊列補充局所属の現役軍官(将校)で構成されており、自己の事業に対して、隊列補充局に毎日報告する。各道の軍事動員部は、管下の市、郡(区域)軍事動員部を通して、召募対象者現況と移動状況を毎日掌握し、隊列補充局の指示に従い、市、郡(区域)軍事動員部に年2回、召募指示を下す。各道の軍事動員部の任務は、次の通りである。
 

  1. 道内召募対象者(除外対象者を含む。)現況把握及び赤い青年近衛隊の人員変動把握

  2. 隊列補充局の指示により、道内市、郡(区域)軍事動員部に召募指示

  3. 管下市、郡(区域)軍事動員部において1次身体検査に合格した召募対象者に2次身体検査実施(各道人民病院利用)

  4. 2次身体検査合格者に対する最終徴集確定

  5. 各軍種司令部及び軍団隊列部接受軍官(将校)への徴集された人員の引渡

 各道の軍事動員部の構成は、大略次の通りである。
 

bullet部長(上佐)1名
bullet副部長(中佐)1名
bullet上級指導員(少佐)2名
bullet指導員(大尉)3名
bullet労務者(軍務員)2名

3)市、郡(区域)軍事動員部

 市、郡(区域)軍事動員部もまた、隊列補充局所属の軍官(将校)で構成され、各市、郡(区域)に1ヶ所ずつある。市、郡(区域)軍事動員部は、道軍事動員部に直属し、道軍事動員部の指示を受ける。市、郡軍事動員部の任務は、次の通りである。
 

  1. 管下市、郡内の学校及び社会機関を対象に後年度徴集対象者カードを作成する。このとき、徴集対象者の年齢、性別、家庭環境、成分、身体正常有無及び疾病有無等を詳細に記録したカードを作成、備置する。

  2. 管下各学校の赤い青年近衛隊隊列情況を常に把握する。

  3. 道軍事動員部の指示により、当該年度召募を実施し、召募された対象者に1次身体検査(郡人民病院利用)を実施し、合格者を道軍事動員部に送る。

  4. 召募対象者の移動情況を把握し、移動する者に軍事移動証を発給する。

 市、郡軍事動員部の構成は、大略次の通りである。
 

bullet部長(中佐)1名
bullet副部長(少佐)1名
bullet上級指導員(大尉)1名
bullet指導員(上尉)2名
bullet労務者(軍務員)4名

エ.召募(徴集)手続

1)平時

 北朝鮮軍の服務年限は、1956年「内閣決定第148号」により、地上軍3年6ヶ月、海・空軍4年と規定されているが、以前に叙述した各種要因により、今まで継続年齢除隊(一般兵種27歳、軽歩、狙撃、海軍30歳)を実施している。従って、下戦士(士兵)の服務年限は、10〜13年となっている(入隊18歳)。

 このような関係で兵力召募は、各軍団隊列部から人民武力部隊列補充局に来年度年齢除隊者及びその他の予想欠員者(成分除隊、事故等)を報告すれば、隊列補充局が統計に従い各道軍事動員部に兵力召募を指示させる。道軍事動員部は、隊列補充局から召募人員を指示されれば、管下各市、郡(区域)軍事動員部に召募人員を割り当て、市、郡(区域)軍事動員部は、管下市、郡(区域)内の徴集対象者中から人員を選抜し、召募通知書を送って1次身体検査を実施する。

 従って、北朝鮮の現在の兵役制度は、義務兵制度というのも難しく、志願兵制度というのも難しく、召募に選抜される者は、義務的に軍服務を行わなければならないが、除外される者(例を挙げれば、大学入学者)は、兵役の義務を守らなくても差し支えない。また、志願して、全員召募されることもない。80年代中盤以前に大学に行けなかった青年の大多数が軍隊に自己を願ったが、それは、軍隊に長く服務すれば、労働党に入党する確率が多かったためである。

 しかし、その後、軍隊において入党が難しくなり、また、経済難により軍生活が劣悪となり、服務条件が悪くなるや、漸次青年の中から軍に入隊するのを嫌う風潮が拡散しており、父母も子息を軍隊に送らないようにしている。

 1次身体検査を通過した各市、郡(区域)召募対象者は、道所在地にある道軍事動員部に移動し、2次身体検査を受けさせられ、義務兵制を実施していた1970年代初めまでは、1回に召募される人員が多く、学校のようなものを借りて、2次身体検査を実施したが、現在は、道人民病院のようなところを指定して実施している。

 2次身体検査に合格した対象者は、そのまま道集結所に移動し、軍服に着替えて待機させられるが、このとき、各軍種(陸・海・空軍・護衛司・平防司・警備隊等)が決定し、一切の外出、外泊、面会等は、原則的に禁止される。従って、父母、親戚の歓送のようなものは、その前に機転を利かせて行わなければならない。そして、接受軍官(将校)の引率下に各部隊に移動(移動手段は、主として汽車)させられ、行先地と出発時間は秘密とされており、駅で歓送することすらないが、時間を知って出てきた父母と友人の歓送を妨げることはない。

 新兵が目的地(各軍種司令部及び軍団隊列部)に到着すれば、各部隊(師・旅団)に配置を行い、各師・旅団に設置されている新兵訓練所で新兵訓練を受けさせる。我々のノンサン訓練所のような大規模新兵訓練所はなく、軍種司令部または軍団級には、軍団直属部隊のための新兵訓練所だけがあり、残りは、師・旅団別に新兵訓練を受ける。

2)戦時  戦時状況下での召募(徴集)は、平時と異なり、多くのことが省略される。即ち、現在、赤い青年近衛隊に召募的である軍事訓練を実施しているのを見れば、戦時、男子の軍入隊年齢は、16歳からに下方調整される可能性が高く、過去の6.25戦争時の先例に鑑み、51〜55歳までも徴集される可能性があるものと見られ、平時の複雑な成分分類手続も無視される可能性がある。また、徴集除外対象も、全て徴集対象に含まれるものと見られる。そして、徴集関連機関も、現在の各道、市、郡軍事動員部は、そのまま機能するだろうが、過去の6.25時の経験により、戦時状況下では、各師・旅団隊列課が現地で自体に入隊させ、損失した兵力を補充する方法も使用するものと見られる。

2.予備兵力(民間武力)動員体系

 1992年4月9日に改正された北朝鮮社会主義憲法第4章第58条には、次のように規定されている。

 「朝鮮民主主義人民共和国は、全人民的、全国家的防衛体系に依拠する。そして、全民武装化、全国要塞化、全軍幹部化、全軍現代化を基本内容とする自衛的軍事路線を貫徹する。」

 このような全人民的防衛の原則下に北朝鮮は、正規軍に次ぐ準軍事組織である地方軍、赤い青年近衛隊、労農赤衛隊、大学生教導隊等を置き、文字通り全民が武装しており、迅速な動員体系を備えている。

ア.地方軍(教導隊)

1)組織編制

 地方軍は、韓国の予備軍に該当する武力として当初には、教導隊と呼ばれた。教導隊が初めて創設されたのは、1972年12月だったが、このとき、金日成は、「教導旅団を組織してみましょう。噂を立てないように静かに作りなさい 。」と教示した。教導隊は、初期に、党責任秘書が司令官となり、地域の中堅幹部を参謀長にして、主として労働者密集地域を中心に組織し、訓練と兵器支援も該当地域衛戍司令官が保障するようにされていた。初期の教導隊は、100%除隊軍官及び除隊軍人で構成され、中隊長以下の指揮官と下戦士(士兵)は、除隊前の軍事称号(階級)をそのまま付着するようにしており、従って、指揮系統も複雑で、部隊を統率することも難しかった。

 このような弱点を克服するため、1980年代初め、人民武力部の隷下に4個の地区司令部(軍団級)を設置し、教導旅団を地区司令部に編入させ、名称も地方軍に改称した(地区司令部は、正規旅団2〜3個、教導旅団5〜6個で構成)。その後、1995年頃、北朝鮮首脳部の軍事力増強政策により、再び地区司令部を軍団に昇格させ、現在、増えた北朝鮮軍の9、10、11、12軍団がそれである。現在、この軍団には、3〜4個の正規軍旅団と共に地方軍旅団が配属されている。

 現在、地方軍の総兵力は、約160余万と推算され、約20〜30個に達する地方軍旅団は、正規歩兵旅団に準じる編制と武装をしており、これらは、戦争勃発時、即刻正規予備隊として後方地域防御任務を遂行する。地方軍は、主として労働者、事務員密集地域に組織されており、企業所の規模により旅団、連隊、大隊、中隊、小隊に分けて組織されている。

 指揮官は、旅団長から大隊長までは、現役軍官(将校)が受け持っており、中隊長以下は、地方軍成員中から軍官(将校)出身者が引き受ける。地方軍の服務年限は、18歳から45歳までであり、今は、除隊軍官及び下戦士の外に様々な理由で軍隊に行けなかった年齢該当者も選別的に地方軍に編入している。

2)動員訓練

 地方軍は、平時には、軍服と個人装具のみを支給されているが、一旦召集されれば、現地で武器を支給するようにされている。地方軍の訓練期間は、年間45日で、人民武力部第1戦闘訓練局の訓練綱領に従い、該当軍団長が樹立した計画により実施する。地方軍の動員は、戦・平時を問わず、該当軍団長が発令し、地方軍の動員命令には、該当企業所党委員会が無条件協調するようにされている。地方軍は、大概機関、企業所単位で組織されているため、動員時間が極めて短いのが特徴であるが、中隊の場合、集合時間は、約15〜20分以内、大隊と連隊の場合、30〜40分以内、旅団の場合でも、1時間を超えない。

▲戦時

 地方軍の戦時任務は、後方地域の防御と海岸又は重要対象物の防御とされているが、平時にも、正規軍編制とされているのみならず、指揮体系も人民武力部総参謀部隷下軍団として秩序整然とされているために、有事の際、別途に部隊編成を行う必要がない。従って、召集だけすれば、地方軍は、直ちに正規軍となるであろう。

 そして、戦闘能力も正規軍に劣らないのみならず、絶対多数が10年以上の軍隊服務を終えた除隊軍人で構成されているため、経験が豊富で、兵士個人の戦闘能力は、むしろ正規軍より桁外れに優越する。実際に平壌地区防御司令部隷下の平壌市地方軍の定期訓練時、平壌地区防御司令部では、傘下軽歩兵旅団をして地方軍の宿営地を襲撃する訓練を多く組織するが、そのとき毎、地方軍がむしろ正規軽歩兵を成果的に掃討する戦果を上げている。従って、地方軍は、民間武力に分類するより正規武力に近いと見なければならない。

 最近、食糧難により地方軍の召集と動員訓練が以前に比し、多く劣悪となったのは事実だが、今もその動員体系は、厳然と生きている。

イ.労農赤衛隊

1)組織編制

 労農赤衛隊は、1959年1月14日、従来の「自衛隊」を発展的に解体して創設された民間軍事組織であり、韓国の民防衛隊とは、その性格が根本的に異なる。労農赤衛隊は、職場単位別又は農村の里単位で組織され、該当単位党責任秘書が最高指揮権を持つ。大隊級以上が構成される場合、専任労農赤衛隊長が配置され、それは、動員時や有事の際、参謀長の役割を代理する。

 労農赤衛隊の指揮機関としては、労働党中央委員会に民防衛部があり、各道、市、郡(区域)党委員会に民防衛部があり、訓練と動員を指揮する。2級以上の機関、企業所には、専任労農赤衛隊長が別途にいるが、農村の里赤衛隊長は、里党委員会副秘書が兼任している。

 中央党と各道、市、郡(区域)党民防衛部成員の養成は、平安南道平城市所在の民防衛大学で担当し、民防衛大学は、正規(4年)課程と短期(6ヶ月)課程を置き、民防衛関係者及び労農赤衛隊指揮官養成は、正規課程において、そして民防衛関連幹部の再教育は、短期課程で行っている。各機関、企業所、里赤衛隊長の養成は、本来、各道共産大学の「騎砲小隊」と呼ばれる特別軍事班で行われたが、民防衛大学が生まれた以後には、民防衛大学正規課程で行っている。

 教導隊(現在の地方軍)が組織される前(1972年)まで、労農赤衛隊は、18歳から60歳までの全体男子と家庭主婦を除外した全ての女性を網羅する巨大な組織として戦闘力も大きなものだった。この時期、労農赤衛隊は、個人火器のみならず、82mm、120mm迫撃砲、高射機関銃、高射砲を始めとする地上及び対空火力まで備えていた。しかし、1972年、教導隊(現地方軍)が組織され、除隊軍人は、100%教導隊に編入され、一部の女性労農赤衛隊員と軍隊に行けなかった若い赤衛隊員まで教導隊に編入されたことによって、労農赤衛隊は、現在、その数が大きく減らされ、火力も個人火器と機関銃程度の共用火器のみ所持する程度で運営されている。労農赤衛隊の編制組織は、旅団、大隊、中隊、小隊で構成され、郡(区域)労農赤衛隊が旅団に、機関、企業所の適正人員単位又は3〜4個里を合わせて大隊に、機関、企業所の適正人員単位又は1個里を中隊に、そして中隊隷下人員を30〜40名単位で分割して小隊に区分している。

 機関、企業所の労農赤衛隊人員が少数の場合(例を挙げれば、学校の教職員や小さな機関等)は、数個機関をまとめ、小隊、中隊に編成する。現在、労農赤衛隊の総兵力は、約390万名程度と推算されている。

2)動員訓練

 現在、18歳から60歳までの全ての成人男女(地方軍及び家庭主婦、大学生除外)を網羅する労農赤衛隊は、労働党中央委員会民防衛部(部長北朝鮮軍次帥金益鉉)の計画と指示に従い、定期的に動員訓練を受けている。訓練綱領と命令は、党中央委員会民防衛部から下達し、各道、市、郡(区域)民防衛部では、労農赤衛隊訓練所(常設)単位で訓練を執行する。労農赤衛隊の訓練所は、郡(区域)別に設置し、計画に従い、大隊別に訓練を召集、実施する。労農赤衛隊の定期訓練は、年間15日で年1回実施する。

 訓練執行は、各郡(区域)党委員会民防衛部が責任を負って実施する。各郡(区域)党委員会民防衛部は、年間訓練計画を各機関、企業所、里赤衛隊長に通報し、各級単位赤衛隊長は、年間訓練計画に従い、成員を訓練所に入所させる。これは、党的統制のために、誰も背くことができず、万一、これに背けば、党軍事政策に背いた罪に該当する処罰を受ける。労農赤衛隊訓練所入所通知を受けた労農赤衛隊員は、個人準備物を持参して訓練所に入所しなければならない。

▲個人準備物
 

bullet労農赤衛隊服及び帽子(自主購入)
bullet背嚢
bullet戦闘非常用品
bullet内衣1着及び下着、靴下
bulletボタン、糸、針、予備洗面道具
bullet炊事用固体燃料(枯れ木等)
bullet炊事容器(軍用飯盒、水筒又は鍋)
bullet非常食糧(米)2日分及び塩
bulletマッチ及びロウソク
bullet偽装網及び雨衣(化生放訓練用)
bullet木銃
bullet全ての労農赤衛隊員に個人火器(AK小銃)はあるが、北朝鮮は、これを大事にするため、射撃訓練と実弾射撃時にのみ使用するようにし、その他の訓練は、個人が自分で木銃を準備するようにし、木銃で訓練している。

 入所時には、訓練期間15日間食べる食料と副食物代30ウォンを持参しなければならず、武器清掃のための雑巾まで持っていかなければならない。訓練内容は、射撃術と歩兵戦術が基本で、特に反特攻隊訓練(韓国軍の空地戦に備えた反航空陸戦訓練中心)を多く行っている。反特攻隊訓練は、普遍的に敵落下傘撃墜訓練、投下された敵に対する奇襲訓練が基本だが、異例的に何らかの対象(例を挙げれば、ある機関の建物)を基準に市街戦訓練を行う場合もある。

 訓練期間には、軍隊と全く同じ規定と規律が適用され、生活も軍隊と全く同じに行っている。15日間の訓練期間が終われば、実弾射撃を実施し、個人別に訓練成績を評価し、所属機関の党委員会に送る訓練成績評価書を封印して携帯させ、各自所属する職場に帰還させる。所属する職場に帰還した後、引率責任者は、封印された訓練評価書を党秘書(又は赤衛隊長)に提出し、総和後、本業に従事する。

 このような定期訓練の外にも、各級労農赤衛隊長は、数次に渡り労農赤衛隊員を非常召集し、個人準備品検閲及び行軍訓練を実施するようにしている。また、各級労農赤衛隊の指揮権を持っている各級党責任秘書は、自然災害や緊急情況発生時、管下労農赤衛隊を非常召集し、投入できる権限を行使している。

 実際に、最近、食糧難が悪化するや、農村の里党秘書は、農作物と糧穀の窃取を防ぐため、労農赤衛隊員で田畑と糧穀倉庫に武装警備を立て、必要時、非常召集も実施し、農作物と糧穀の窃取を防いでいる。

▲戦時

 戦時、労農赤衛隊の基本任務は、後方地域各単位の自体防衛と警備、そして反動、不純分子の蠢動を掃討し、敵特攻隊から対象物を保護することだが、長期間軍隊と同じ訓練を受け、充分な武装(個人火器及び機関銃)を備えているため、そして単位別に編成されていることによって、短い時間内に正規軍に編成、戦闘に投入することもできる準軍事武力である。

ウ.赤い青年近衛隊

 1970年代初盤に創設された赤い青年近衛隊は、高等中学校5〜6学年(満16〜17歳)の全体男女学生を網羅する予備軍事組織である。高等中学校5〜6学年の全ての男女学生は、義務的に赤い青年近衛隊に加入し、5〜6学年の全期間に1回(7日間)、学年別に赤い青年近衛隊野営所に入所し、軍事規定学習と武器分解結合及び射撃訓練を受ける。

 訓練は、北朝鮮の各市、郡(区域)党委員会民防衛部において組織指揮し、訓練教官は、予備役軍官を動員して活用している。赤い青年近衛隊の平時組織網はなく、各市、郡(区域)党委員会民防衛部が訓練計画に従い、管下高等中学校5〜6年の学生の訓練名簿を作成、5〜6学年期間、漏れなく1回(7日間)野営所に入所し、訓練を受けるように指導する。

 一方、人民武力部隊列補充局は、赤い青年近衛隊の人員現況と移動情況を漏れなく掌握するが、これは、彼らが高等中学校卒業後、正規軍に入隊しなければならない徴集対象者であるためである。

▲戦時

 戦時、赤い青年近衛隊の任務は、補充兵として即刻現役に入隊し、前線に投入させることである。

エ.大学生教導隊

 北朝鮮の各大学は、連隊に編成される大学生教導隊組織とされている。大学生は、訓練期間ではない平時にも、連隊、大隊、中隊と呼ばれる組織単位で行動する準軍事組織体として活動する。大学生教導隊の場合、軍事訓練は、校内教育訓練より入営訓練に重点を置き、有事の際、即刻、現役に編入させ、戦闘任務を遂行できる正規軍水準の訓練を受ける。これらの組織に対する訓練と指揮は、人民武力部隷下平壌地区高射砲司令部において担当している。

 大学生は、男女学生を問わず、6ヶ月間、平壌地区高射砲司令部隷下軍部隊に出て、正規軍と同じ生活を行い、軍事訓練を受けなければならないが、このとき、部隊長以上の指揮成員は、全員現役軍人が受け持ち、訓練させている。教導隊訓練を終えた大学生が大学を卒業すれば、全員予備役少尉資格を付与し、有事の際には、必要な補職を与え、軍官(将校)として前線に投入する。

▲戦時

 戦時、大学生教導隊の任務は、平壌地区高射砲司令部隷下部隊で訓練中である学生は、そのまま現役に編入され、平壌市領空防御任務を遂行し、大学に残っている成員は、即刻現役に編成され、前線に補充投入される。

エ.その他

1)予備役軍官

 正規軍の軍官(将校)であるが、除隊した者は、予備役軍官の資格を持ち、年間1回(15日間)、予備役軍官訓練を受けなければならない。予備役軍官の人員掌握は、人民武力部隊列補充局が受け持ち、訓練組織は、人民武力部総参謀部第1戦闘訓練局が担当する。予備役軍官の訓練は、組織により、組を構成して、組上学形式で進行し、地形学、作戦、戦術学等により、有事の際、作戦指揮に必要な知識を習う。

▲戦時

 戦時に予備役軍官は、人民武力部隊列補充局の指示により、各道、市、郡(区域)軍事動員部において召集し、即刻正規軍各部隊に投入されるようにされている。

2)女性高射銃教導隊

 女性高射銃教導隊は、人民武力部総参謀部傘下平壌地区高射砲司令部の各部隊の大部分を大学生教導隊で運営しているが、需要に比し、大学生の数が足りない関係でこれを充当するために、別途に組織、運営される教導隊である。

 高等中学校学生は、卒業すれば、大学進学か、軍入隊、職場配置を受けるが、このとき、大学進学生か、軍入隊者を除外した女学生中から身体健康で、成分に欠格事由がない者を選抜し、女子高射銃教導隊に1年間服務させる。女子高射銃教導隊の指揮と訓練は、大学生教導隊と同じで、1年間服務後、再び大学推薦、職場配置等を受けることができる。女子高射銃教導隊の兵力は、約1,000名内外と推算される。

3)武装産業保衛隊

 産業保衛隊は、重要産業施設の警備を目的として組織され、民間工場、企業所は、非武装であるが、軍需工場やその他極めて重要であると判断される企業所及び施設には、武装保衛隊を組織運営している。そして、軍需動員総局隷下の戦時予備物資管理所には、中隊級以上の武装保衛隊が警備しており、極めて重要な軍需工場の産業保衛隊は、対空火力まで備えている。現在、武装した産業保衛隊の数は、大略5,000名内外と推算される。

3.民間人動員体系及び訓練

ア.疎開体系

 北朝鮮の全ての機関、企業所は、有事の際、戦時業務と戦時生産を中断せず、そのまま保障するために、通常「候補地」と呼ばれる戦時疎開場所を備えている。「候補地」は、機関、企業所の現在地から遠く離れていないところに設置され、一旦有事の際には、設備と装備を候補地に移し、生産を継続するようにしている。都市の場合、「候補地」は、大概周辺農村地区に建設し、都市地域ではない労働地区の場合には、最短距離内にある場所を選択する。

 「候補地」には、人員と重要設備を待避させられる「坑道」(トンネル)が準備されており、重要な生産施設である場合、地下生産も可能なように建設されている。極めて重要な機関、例を挙げれば、労働党中央委員会、国家安全保衛部、社会安全部、朝鮮中央通信社、中央放送委員会のような機関は、初めから「坑道」内に全ての設備と手段を備えておき、一旦有事の際には、人員だけ迅速に待避し、事業を継続するように準備している。

 しかし、現在、地下化されている施設(例を挙げれば、軍需工場)において稼働している機関、企業所は、別途に「候補地」が必要ない。「候補地」への疎開訓練は、年間1回行う方針が定められているが、情勢が極度に緊張したときを除外しては、実際に初回訓練を行うことはない。機関、企業所のみならず、平壌市を始めとする大都市の一般住民も、「候補地」は別にないが、一旦有事の際、農村地域に避難できる目標地域を定めておき、一旦有事の際、秩序整然と避難できるように個人携帯品を準備している。これは、社会安全部民間反航空司令部の指揮により、各洞(里、労働地区)事務所が組織、指揮するようにされている。個人携帯品の準備は、家族構成員全てが背嚢に内衣、下着、簡単な炊事道具、固体燃料(枯れ木)、雨衣、塩、マッチのようなものを入れておき、常時一定の場所に保管するようにしている。

イ.灯火管制訓練

 北朝鮮は、かなり以前から住民動員訓練の1つとして灯火管制訓練を実施している。特に、平壌市の場合、年間7〜8回、定期的に実施し、情勢が緊張するときには、より頻繁に灯火管制訓練を実施する。灯火管制は、機関、企業所や家庭の家を問わず、窓やその他の採光施設に遮光幕を設置しておき、信号に従い照明が外に漏れないように覆う訓練をいう。

 灯火管制訓練の信号は、大体、サイレンにより伝達し、時間は、通常15〜30分である。このときは勿論、街路灯を始めとする共用照明まで全て消灯する。灯火管制の訓練組織と指揮は、社会安全部民間反航空司令部において担当し、機関、企業所責任者や各洞(里、労働地区)事務所、人民班長の協調を受ける。灯火管制訓練時には、社会安全部民間反航空司令部及び協調機関に派遣された検閲隊が検閲を実施する。灯火管制訓練は、本来、有事の際に備えた動員訓練目的から出発したが、現在、住民を常に緊張させ、社会の不満を戦争対備精神で代替、宥めるための手段として利用される。しかし、最近の北朝鮮の電力事情悪化により、このような訓練も平壌市を除外した地域では、別段の効果を見せていない。

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最終更新日:2003/01/02