林家三平を知る弟子達  #2 林家鉄平 | 古今亭志ん輔 日々是凡日

林家三平を知る弟子達  #2 林家鉄平

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前座も古株になると、寄席の時間の割り振りをする重要な仕事になる。そんなイザコザに巻き込まれて鉄平さんは、先輩の八つ当たりから膝蹴りを受けた。肋骨にはひびが入った。それでも、包帯で胸を固めながら、前座の修行を続けていた。上野鈴本演芸場の高座は、三平師匠がやんやと喝采を浴びていた。スッカリいい気分になった三平師匠は、お客様への大サービスを思いついた「どーも、実は内の弟子に体操部出身者がいるんです。どーも、タイヘンなんっすから・・バック転、知ってます?坊ちゃん、後ろにクルッと回るやつ。鉄平、鉄平、チョット来なさい」鉄平さんはサッカー部出身だったが、バク転は得意だった。高座袖にいた鉄平さんは、脇の下に冷や汗の流れるのを感じていた。心の中で「師匠、肋骨、ひび・・」こう呟いていた「早く、早く、こっちに来て、ここでやってあげなさい。坊ちゃん、待ってて、鉄平、やって・・」「・・・」度胸を決めた鉄平さんは、助走からバク転に入った。一気に両手を突いた途端「うっ」唸りながらも、無事着地した。拍手喝采を受けながら、楽屋に入った鉄平さんは「師匠・・肋骨・・ひびぃ」「あっ」三平師匠は思い出していた「ゴメン、忘れてた」すまなそうに言った師匠に愛情を覚えながら、鉄平さんは仕事を続けた。肋骨の完治は、2週間遅れた。