イラン反政府デモ衝突に 2人死亡か
イラン北東部で28日に始まり複数都市に広がった反政府デモは、3日目の30日には警察との衝突に発展し、北西部ドルードでは2人が撃たれて死亡したという情報もある。デモは当初、物価上昇と生活苦への抗議として始まったが、後に政府の外交政策批判や聖職者支配への批判に発展。政府改革を求めた2009年デモ以来の、大規模な反政府の意思表示となっている。
ソーシャルメディアに投稿されたビデオは、ドルードの抗議で撃たれたデモ参加者2人が死亡したと伝えている。イラン国内で撮影された他のビデオでは、デモ隊が警察車両に放火する様子が映っている。政府庁舎への襲撃もあったと言われている。
イラン政府は、各地の抗議集会は反革命分子や外国の工作員が仕掛けたものだと批判。内務省は「違法な集会」を避けるよう、国民に呼びかけている。30日には2009年のデモ鎮圧8周年を記念する各地の行事に、政府支持者数千人が集まった。
現地の状況について情報の多くはソーシャルメディアに投稿されたもので、内容の確認が難しくなっている。
北部アブハルでは、最高指導者アリ・ハメネイ師の顔が描かれた大きな横断幕が燃やされた。中部アラクでは、民兵隊バシジ(人民後備軍)の地元本部に火が放たれたという情報もある。
BBCペルシャ語によると、首都テヘランではアザディ広場に大勢が集まった。テヘラン大学のデモでは、参加者がハメネイ師の退陣を求め、警察と衝突した。
現地の革命防衛隊幹部は、首都の状況は統制できていると話している。エスマイル・コウサリ准将は学生ニュースISNA通信に、デモを続けるようなら参加者には「国の鉄拳」で対応すると話した。
一連のデモの発端となった北東部マシュハドでは、デモ参加者が警察バイクに放火する様子が撮影された。
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Twitter の投稿の終わり, 1
各地で大勢の携帯電話が、インターネットに接続できなくなっているという情報もある。
西部ケルマンシャーでは、デモに参加したマカンという男性がBBCペルシャ語に、参加者は殴る蹴るの暴行を受けたが、「それが警察によるものかバシジ民兵か分からなかった」と話した。
「私はロウハニ大統領に抗議しているのではない。確かに、大統領は経済を改善しなくてはならないが、問題は体制だ。国の体制が腐っている。イスラム共和国と国の各機関に改革が必要だ」とマカンさんは述べた。
北東部マシュハドでは28日、物価上昇に抗議するデモが「過激なスローガン」を繰り返していたと、52人が逮捕された。抗議は29日、北西部ラシュト、西部ケルマンシャーなどに飛び火した。
中部イスファハンやハマダーンなどでも小規模の抗議行動が起きた。首都テヘランでも約50人が広場に集まり、数人が逮捕されたという。
各地の反政府デモに集まる人数は、場所によって数百人から数千人で、いずれも大群衆が集まっている状態ではないという。
物価上昇への抗議を発端に、政治犯の釈放や警察暴力の停止を求め、幅広い反政府デモに拡大する動きもある。ロウハニ大統領の失政を批判するほか、ハメネイ師や聖職者による支配そのものを批判する人たちもいる。
デモでは、「国民は物乞いをしている、聖職者は神のまねをしている」などのスローガンが繰り返された。強力な権力をもつ聖職者が集まる宗教都市コムでも、デモが行われた。
ロウハニ政権が内政をおろそかにして、外国情勢に介入しすぎるという反発も強い。マシュハドでは、一部の人が「ガザでもない、レバノンでもない、自分の命はイランのため」と繰り返した。
政府の反応は
人気の通話アプリ「テレグラム」の経営責任者は、イラン通信省からの抗議を受け、警察襲撃を呼びかけていたイラン系アカウントを凍結したと発表した。
ドナルド・トランプ米大統領はツイッターで、「抑圧的な独裁政権は永続できない。イランの人たちが選ばなくてはならない日が、いずれくる。世界は見ている!」とツイートした。米国務省は29日、デモ参加者の逮捕を非難し、「基本的権利、そして腐敗の終わりを求めるイランの人々を、全ての国が表立って支持」するよう呼びかけた。
これに対してイラン外務省は、トランプ氏や米政府関係者の発言を「機に乗じたもので嘘にまみれている」と非難した。
国営イラン・イスラム共和国放送(IRIB)によると、エシャク・ジャハンギリ第1副大統領は、当初の抗議集会はイラン国内の反政府勢力が仕掛けたものだと発言した。
副大統領は、「国内の最近の事件の一部は、経済問題を建前にしているが、それ以外の何かが背景にあるようだ。こうすることで政府を痛めつけるつもりだろうが、ほかの連中も波に乗るはずだ」と述べた。
イランはシリアのアサド政権を軍事・外交的に支える主要国のひとつ。レバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラも支援している。さらに、イエメンでサウジアラビア主導の政府系連合軍と戦うイスラム教シーア派系反政府武装組織「フーシ派」に、イランが武器を供与したと疑われているが、イランはこれを否定している。
<解説> 目からうろこが落ちた3日間――カスラ・ナジ、BBCペルシャ語
30日の反政府デモは規模は小さくても、政府が主催した集会よりはるかに重要だった。
この国で政府に対して数千人が抗議の声を上げるのは、異例のことだ。
日が落ちても、まだ少なくとも9都市で抗議行動が続いていた。警察との衝突が起きた場所もあった。
各地の抗議に共通するのは、聖職者による統治を終わらせろという要求だ。
物価上昇や高い失業率への不満だけが、大勢を抗議に駆り立てているのではない。
政府にとっては、目からうろこが落ちる3日間だった。政府はデモ参加者を挑発し過ぎないよう、慎重に行動している。
イラン各地で異例の反政府デモ 物価上昇などに抗議
イランの第2都市マシュハドで28日に異例の反政府デモが起きたのを皮切りに、29日には複数の都市で物価上昇やハッサン・ロウハニ大統領に抗議するデモが相次いだ。