第四紀研究
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日本列島北限「カラマツ」球果の変異とその古植物学的意味
矢野 牧夫
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1994 年 33 巻 2 号 p. 95-105

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抄録

東北日本, 蔵王山系の馬ノ神岳に生存する日本列島北限の「カラマツ」は, わが国におけるカラマツの主要な分布地からは150kmも離れて孤立した分布をし, 絶滅寸前の状態である.
筆者は, 馬ノ神岳において12本の「カラマツ」を確認した. それらの球果を, 中部日本に分布するカラマツと比較すると, 球果は小型であり, 種鱗は少なく, ほとんど外反しないなどの特徴がある. これらの形態的特徴はマンシュウカラマツに近く, カラマツとグイマツの中間的形態を示すものである. 最近, 馬ノ神岳に近い仙台市の富沢遺跡から最終氷期の年代を示すグイマツの遺体が大量に発見された. このことは, グイマツの分布圏がカラマツと交錯していたことを示唆するものであり, 馬ノ神岳の「カラマツ」は, 最終氷期におけるカラマツとグイマツの交雑により生じた可能性があること, あるいは, マンシュウカラマツに似た独自の分類群が残存した遺存種 (relict) である可能性があることなどを示している.

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