地上では得られない、宇宙の特殊な環境を利用することを宇宙環境利用と呼びます。特に無重力環境は、高均質、高品質、高性能な材料の製造を可能とするので大いに注目されています。当社は、無重力を利用した諸実験を行うための装置・システムの開発にとどまらず、実験手段の提供、地上予備実験、実験装置の搭載(インテグレーション)、さらには宇宙実験運用など、この分野で幅広く活動しています。
国際宇宙ステーションは、高度400kmの地球周回軌道上に日、米、露、欧等の国際協力で作られた、恒久的、発展的、多目的な有人施設(全長110m、幅約75m)で、科学観測、宇宙観測、宇宙通信実験、材料・医薬品の製造などを行います。日本が開発を担当した実験棟「きぼう」は、日本では初めての有人施設です。当社は、きぼうの船外実験プラットフォームおよび船外パレットの他に船内実験室に搭載される実験ラックや実験装置、宇宙ステーション補給機(HTV〉曝露パレットならびに推進モジュール等の開発を行っています。
宇宙空間にさらされたこの施設では、地球・宇宙観測や通信実験を行います。船外パレットは船外実験装置ならびに「きぼう」の曝露系システム機器を搭載し、船外実験プラットフォームへの補給および船外実験プラットフォームからの回収のために運搬されます。
軌道上宇宙環境のデータ取得や部品・材料の耐宇宙環境性能評価を行います。宇宙ステーションのロシア・サービスモジュールに取り付けられました。
当社が開発を担当している溶液・蛋白質結晶成長実験装置、流体物理実験装置および供試体、温度勾配型電気炉は「きぼう」の船内実験室に搭載され、軌道上で微小重力実験を行うための共通実験装置の一部です。
当社は、(財)無人宇宙実験システム研究開発機構(USEF)がH-ⅡAロケット3号機で打ち上げた次世代型無人宇宙実験システム(USERS)の回収カプセル部分(REM)とREMに搭載された超電導材料製造実験装置(SGHF)の設計、開発を担当しました。また帰還運用、探索回収作業を担当し、2003年5月に小笠原東方の太平洋上で無事回収に成功しました。
JAXA宇宙科学研究所のMUSES-C計画で、M-Vロケット5号機で打ち上げられた探査機「はやぶさ」の回収カプセル及び小惑星ローバ「ミネルバ」の設計、開発を担当しました。小惑星は惑星生誕時の様子を留めているとされ、その石の分析や表面の状況を観察する事で、太陽系誕生の謎解きをする事ができます。地球以外の天体からサンプルを採取する試みは、米国のアポロ計画以来で、小惑星では例がありません。
当社は、大気圏再突入時の過酷な空力加熱に耐える耐熱材(CFRP)の設計・製造技術を有しており、その耐熱材は、今後の惑星探査カプセルに順次適用されていく予定です。
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