タリバンを公然批判、アフガン国連大使が辞任 後任は空席に?

ニューヨーク=藤原学思
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 アフガニスタンのイサクザイ国連大使が15日付で辞任した。米誌フォーリン・ポリシーが最初に報じ、アフガニスタンの外交筋や国連も取材に認めた。同誌によると、イスラム主義勢力タリバンを同国政府として承認しないよう国際社会に訴えてきたが「自信を失いつつあった」という。

 イサクザイ氏はタリバンが実権を握る前に当時のガニ政権から任命され、7月に着任したばかりだった。8月には安全保障理事会で「数百万人のアフガニスタン人を代表して発言する」と述べ、タリバンを批判。9月の国連総会会合でも、タリバンによる暫定政権の閣僚について「全く包括的ではない」と訴えていた。

 タリバン側はこうした動きに対し、独自の「後任」を任命したことを国連に通知。どちらを正統なアフガン代表として認めるか問題になったが、国連総会は今月、判断を先送りにすることを決め、イサクザイ氏が当面留任するはずだった。

 ただ、同誌によると、イサクザイ氏は「自分が国連において代表するような政府はない」と考えるようになった。大使になる前は国連機関で長くキャリアを積んでおり、今後は「エチオピアに関する国連トップの地位に就く」という。

 国連のハク副報道官によると、国連も16日、イサクザイ氏から辞任に関する事務総長宛ての書簡を受け取った。そこには臨時代理大使の名前も書かれていたというが、正式な大使ポストはしばらく空席になるとみられる。

 タリバンから「後任」に指名されているシャヒーン氏は「国連は威厳ある世界機関であり、その信頼性は中立性にかかっている。政治的な好みよりも、ルールが優先されるべきだ」として、タリバン側に大使の座を与えるべきだと訴えた。

 国連のナシフ人権副高等弁務官によると、アフガニスタンでは銀行システムが崩壊し、貧困が深刻化している上、医療などの公的サービスも限られるという人道危機に直面している。

 また、ナシフ氏は8~11月に元治安部隊や前政権の関係者ら100人以上が殺害されたという情報があるとし、「少なくとも72人がタリバンによるものとされている」と訴えていた。(ニューヨーク=藤原学思

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