読売・渡辺社長にケンカ売った?漫画

渡辺恒雄読売新聞社長 朝日新聞朝刊社会面に掲載されている4コマ漫画「ののちゃん」に先週から、読売新聞の渡辺恒雄社長(74)=写真左=をモデルにしたキャラクター「ワンマンマン」が登場し話題になっている。「ワンマンマン」は作者のいしいひさいち氏(49)=同右下=の他の漫画にも登場する人気キャラ。渡辺社長は日本新聞協会会長、読売巨人軍オーナーで、横綱審議委員会の委員長にも就任したばかり。「ワンマンマン」の登場は、言論界からスポーツ界へも“勢力”を拡大する渡辺社長への朝日新聞のけん制?

漫画家・いしいひさいちさん 「ののちゃん」にワンマンマンが登場したのは、1月22日朝刊から。

 宿題を忘れたののちゃんが、「たすけてワンマンマン!」と叫ぶと、窓ガラスをぶち破り、ワンマンマンがののちゃんの部屋に飛び込んできた。23日も、子供たちの仲間はずれをこらしめるために登場した。

 ワンマンマンは気に入らないことがあると「バーロー」を連発して暴れる人気キャラクターで、いしいひさいち氏が連載する週刊誌などに度々出てくる。モデルはディフォルメした顔や言動などから読売新聞の渡辺恒雄社長であるのは、一目瞭然だ。

 ワンマンマンが初登場した22日、渡辺社長は日本相撲協会の諮問機関、横綱審議委員会の新委員長に就任。渡辺社長は、巨人軍のオーナーであり、2年前に日本新聞協会会長にも就任。今や言論界からスポーツ界まで「快進撃」を続け、その一挙一動に注目が集まっているキーマン。そんな渡辺社長をけん制するかのようなライバル紙、朝日新聞への登場だったのだ。

 ワンマンマン登場に何らかの意図はあったのか。いしい氏と朝日新聞に聞いてみると…

 両者とも、「作品はあくまでフィクションで、特別の意図はない」との解答。いしい氏のマネジャーは、「作品中で役柄を変える漫画の技法。(渡辺社長を)モデルとしてますが、本人とは違う。むしろ、あのキャラクター(ワンマンマン)は本人からはずれていっています」と説明。

 朝日新聞広報部では、「ワンマンマンは『ののちゃん』に以前から登場していた町内会長さんが『ある時は子供たちの味方』に変身するというキャラクターで、『変身』は作者の独創」としている。

 今回、2日続けて登場したのは、「読者に認知してもらうため」(いしい氏のマネジャー)といい、朝日新聞広報部でも、「町内会長さんから派生して、一人歩きできる独自のキャラクターとして、今後も折に触れて登場させる意向を筆者は持っているようです」という。

 当の渡辺社長は今回の登場にお怒りの様子。こんなときこそ、ワンマンマンに頼むしかない?

★渡辺 恒雄(わたなべ・つねお)
 大正15年5月30日生まれ。74歳。読売新聞社社長、巨人軍オーナー、横綱審議委員会委員長、新聞協会会長などを務める。昭和25年、東京大学文学部哲学科を卒業後、読売新聞社に入社。政治部記者、ワシントン特派員などを経て、解説部長、取締役論説委員長などを歴任。平成3年、社長就任。10年には前立腺(せん)がんであることを公表し、雑誌に病状を掲載した。
 

★いしい・ひさいち
 昭和26年9月2日、岡山県玉野市生まれ。49歳。関西大学社会学部に在学中の47年、求人誌「日刊アルバイト情報」で「Oh!バイトくん」を連載。卒業後の52年、プレイガイドジャーナルから「4コマまんが集バイトくん」を出版。54年、「がんばれ!!タブチくん!!」(双葉社)で大ブレークした4コマ漫画の第一人者。

★渡辺社長は怒っています

 モデルとなった読売新聞の渡辺社長は、サンケイスポーツの取材に同社広報部を通じてコメントした。

 いしいひさいち氏がこれまで渡辺社長をモデルとして描いた漫画について、「通常漫画に許される風刺やユーモアの域を越えたものであり、しかも単なる“モデル”でなく、『ナベツネ』とか『巨人』とか『ヨミウリ』といった実名が出ていることからも、悪意と中傷と侮辱の意に満ちたものです」と、かなりご立腹の様子。

 「これが刑法230条(名誉棄損)、231条(侮辱)に違反するものかどうかについて検討していますが、小生も多忙で放置していました」とも。今のところ読売新聞読者や渡辺社長の知人からの反応はないというが、「小生および読売新聞並びに巨人軍のイメージダウンを狙った意図によるものであることは、何人も容易に理解できるでしょう」としている。

 朝日新聞については、「読売新聞社長としては、朝日新聞とは、再販や言論の自由、独立等を守るため協力していくつもりです」と協調路線を示した。が、「朝日新聞ともあろう名門の大新聞が、このような漫画を掲載するとは大人げなく、あえて申せば、新聞倫理綱領にも反する疑いのあるもので、まことに遺憾に思います」とクギを刺している。

★「ののちゃん」★

 平成3年から朝日新聞朝刊社会面に連載されている人気4コマ漫画。連載当初は、「となりのやまだ君」というタイトルだった。ののちゃんは本名が山田のの子といい、山田家の長女で小学生。その山田家に起きるさまざまなエピソードを、ユーモラスに描きファンも多い。11年夏には、この漫画を原作とした映画「ホーホケキョとなりの山田くん」(高畑勲監督)も公開された。