高浜2号機が再稼働 関電が12年ぶりに

佐藤常敬 小田健司
[PR]

 【福井】運転開始から47年を超える関西電力高浜原発2号機は15日、約12年ぶりに再稼働した。稼働から40年超の関電の老朽原発3基がすべて再稼働となったが、古い原発の安全性への懸念などから運転の停止を求める声もあがった。

 関電によると、高浜1、2号機の中央制御室では運転員やメーカー社員ら計24人が作業に従事し、県や高浜町の担当者ら5人も現場に立ち会った。

 関電原子力事業本部(美浜町)にはプレスセンターが設置され、中央制御室での作業の様子を中継した。午後3時、運転員が制御棒を操作する液晶画面に触れて原子炉を起動させると「2号原子炉起動しました」と放送が流れた。

 2号機の再稼働で、廃炉作業中をのぞく関電の全7基が稼働可能な体制になった。2011年7月以来のことで、来年4月に7基の同時運転となる時期が来る見通しだ。

 関電は「安全最優先で緊張感を持って作業を進める」としている。一方、杉本達治知事も談話を発表し、関電に「これまで以上に慎重かつ安全な運転に努め、原子力に対する県民の信頼を得ていかなければならない」と求めた。

 2号機がある高浜町の野瀬豊町長も報道陣の取材に応じた。再稼働について「町民にとっても基幹産業が再開され、安堵(あんど)感があるのではないか」と歓迎した。ただ、使用済み核燃料が増え続けている問題は待ったなしで、「事業者を中心に不断に様々な可能性を探ってほしい」と注文した。

 一方、高浜原発近くでは、再稼働に反対する市民団体約110人によるデモ行進も行われ、関電側には原発の運転停止を求める申入書を手渡した。市民団体代表の木原壮林さん(80)は、「運転の危険性がとても高い老朽原発の廃炉を突破口に、すべての原発の停止にもっていきたい」と話した。

 高浜2号機は1975年に運転を開始した。東京電力福島第一原発事故後の11年11月に定期検査に入った後は長期間停止していたが、21年に高浜町や県が再稼働に同意した。

 今年7月中旬に再稼働の予定だったが、原子力規制委員会から施設の火災防護に不備があると指摘され、追加対策を実施。当初の予定より約2カ月遅れて再稼働した。(佐藤常敬、小田健司)

 福井県内では稼働から40年を超える老朽原発3基(高浜1・2号機、美浜3号機)がすべて稼働した。しかし、関西電力が3基を稼働させ続けられるかどうかはまだ見通せない。

 関電は2021年、この3基の再稼働の是非をめぐる議論の中で、23年末までに県内の原発から出る使用済み核燃料を搬出する中間貯蔵施設の計画地点を示せなければ、3基の運転を止めると約束したからだ。

 関電の動向が注目される中、今年6月に森望社長が県庁を訪れ、電気事業連合会フランスで行う研究で、高浜原発の使用済み核燃料200トンを搬出する計画を説明した。そのうえで、杉本知事に「計画地点の確定と同等の意義がある。福井県との約束はひとまず果たされた」と一方的に主張した。

 言葉通りの「約束」は果たされていないはずだが、杉本知事は関電の姿勢に態度を表明していない。ある県議は知事の気持ちをこう推察する。「中途半端な回答だが、知事も原発を止めたいわけではないだろうから、とりあえずボールを投げてくれてありがたかったのではないか」

 そうした中での8月、関電がかかわる中間貯蔵施設の建設計画が山口県上関町で浮上した。同町では約40年前に原発建設計画が浮上したが、11年の東京電力福島第一原発事故で計画が頓挫。中国電力が関電と共同開発する施設で、町は調査の受け入れを決めた。

 実現すれば福井県から搬出される可能性があるが、杉本知事は「推移を見守る」と目立った反応を示していない。県幹部は「関心があるのは確かだが、それ以上は何も言う立場にない」と説明する。

 別のある県議は「先走ると反発が起きる。(青森県)むつ市の経験から、刺激しないようにしているのではないか」と言う。搬出先の有力候補地とみられていた同市の中間貯蔵施設については、地元の理解を得ないまま報道が先行するなどして頓挫した経緯がある。

 約束の期限まで3カ月半。注目されるのは、知事が「総合的な判断」をすると繰り返していることだ。何らかの条件が整えば関電の言い分をのんで、計画地点を示さなくても3基が止まらない可能性もあるかもしれない。(小田健司)

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません