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統一教会問題で岸田首相の「多様性尊重」が吹き飛んだ

山田道子・元サンデー毎日編集長
新型コロナウイルスに感染し、コロナ対策や自身の旧統一教会を巡る報道などについてオンラインで取材対応をする岸田文雄首相=首相官邸で2022年8月24日午後1時56分、竹内幹撮影
新型コロナウイルスに感染し、コロナ対策や自身の旧統一教会を巡る報道などについてオンラインで取材対応をする岸田文雄首相=首相官邸で2022年8月24日午後1時56分、竹内幹撮影

 切羽詰まると「女性活躍」や「女性登用」が吹き飛ぶ。これが私の持論だ。岸田文雄首相が8月10日に踏み切った内閣改造で、閣僚19人中女性はたったの2人。昨年の政権発足時も3人と少なく、その後閣僚枠が減って1人が辞めて2人になっていた。

 「多様性の尊重」を掲げた岸田首相。ところが、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題で支持率が低下し、切羽詰まった。最大派閥の安倍派と党内バランスに配慮し、「女性登用」どころではなくなった。

 参院選直後の7月13日、世界経済フォーラムが2022年版「男女格差(ジェンダーギャップ)報告」を発表した。日本は146カ国中116位、政治分野では女性議員・閣僚が少なく139位だった。そのなかでの内閣改造。東京新聞は「男女共同参画の旗振り役であるはずの首相が範を示せない結果となった」(8月11日朝刊)と断じた。

旧統一教会の家族観

 一方で、自民党と旧統一教会との関係の広がりを目の当たりにし、改めて強く感じることがある。それは、切羽詰まっても詰まらなくても「女性閣僚2人」は自民党には自然の流れだったということだ。

 旧統一教会は、伝統的な夫婦・家庭を重視し、選択的夫婦別姓や同性婚に強く反対する。政治団体の国際勝共連合も運動方針に「同性婚合法化、行き過ぎたLGBT人権運動に歯止めをかけ、正しい結婚観・家族観を追求する」と掲げる。

 ジェンダー平等やジェンダーフリーは、旧統一教会にとっては社会における男女のあり方、家庭のあり方を根本から変えてしまう危険な思想だ。その団体と広く関係を持つ政権政党だからジェンダーギャップ116位は当たり前。「女性閣僚2人」も当然の帰結かもしれない。

安倍元首相のメッセージ

 安倍晋三元首相は昨年9月、旧統一教会系の「天宙平和連合」(UPF)の集会にビデオメッセージを送った。安倍氏を銃撃した山上徹也容疑者の犯行の引き金とされているものだ。

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元サンデー毎日編集長

1961年東京都生まれ。85年毎日新聞社入社。社会部、政治部、川崎支局長などを経て、2008年に総合週刊誌では日本で最も歴史のあるサンデー毎日の編集長に就任。総合週刊誌では初の女性編集長を3年半務めた。その後、夕刊編集部長、世論調査室長、紙面審査委員。19年9月退社。