切羽詰まると「女性活躍」や「女性登用」が吹き飛ぶ。これが私の持論だ。岸田文雄首相が8月10日に踏み切った内閣改造で、閣僚19人中女性はたったの2人。昨年の政権発足時も3人と少なく、その後閣僚枠が減って1人が辞めて2人になっていた。
「多様性の尊重」を掲げた岸田首相。ところが、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題で支持率が低下し、切羽詰まった。最大派閥の安倍派と党内バランスに配慮し、「女性登用」どころではなくなった。
参院選直後の7月13日、世界経済フォーラムが2022年版「男女格差(ジェンダーギャップ)報告」を発表した。日本は146カ国中116位、政治分野では女性議員・閣僚が少なく139位だった。そのなかでの内閣改造。東京新聞は「男女共同参画の旗振り役であるはずの首相が範を示せない結果となった」(8月11日朝刊)と断じた。
旧統一教会の家族観
一方で、自民党と旧統一教会との関係の広がりを目の当たりにし、改めて強く感じることがある。それは、切羽詰まっても詰まらなくても「女性閣僚2人」は自民党には自然の流れだったということだ。
旧統一教会は、伝統的な夫婦・家庭を重視し、選択的夫婦別姓や同性婚に強く反対する。政治団体の国際勝共連合も運動方針に「同性婚合法化、行き過ぎたLGBT人権運動に歯止めをかけ、正しい結婚観・家族観を追求する」と掲げる。
ジェンダー平等やジェンダーフリーは、旧統一教会にとっては社会における男女のあり方、家庭のあり方を根本から変えてしまう危険な思想だ。その団体と広く関係を持つ政権政党だからジェンダーギャップ116位は当たり前。「女性閣僚2人」も当然の帰結かもしれない。
安倍元首相のメッセージ
安倍晋三元首相は昨年9月、旧統一教会系の「天宙平和連合」(UPF)の集会にビデオメッセージを送った。安倍氏を銃撃した山上徹也容疑者の犯行の引き金とされているものだ。
…
この記事は有料記事です。
残り627文字(全文1423文字)