【高橋祥子】投稿一覧

高橋祥子
高橋祥子

高橋祥子

ジーンクエスト 取締役ファウンダー

ジーンクエスト 取締役ファウンダー

大阪府出身。京都大学農学部卒業。2013年6月、東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程在籍中にジーンクエストを起業。2015年3月に博士課程修了。個人向けに疾患リスクや体質などに関する遺伝子情報を伝えるゲノム解析サービスを行う。2018年4月、ユーグレナの執行役員に就任。
【注目するニュース分野】バイオテクノロジー、ゲノム解析

大阪府出身。京都大学農学部卒業。2013年6月、東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程在籍中にジーンクエストを起業。2015年3月に博士課程修了。個人向けに疾患リスクや体質などに関する遺伝子情報を伝えるゲノム解析サービスを行う。2018年4月、ユーグレナの執行役員に就任。
【注目するニュース分野】バイオテクノロジー、ゲノム解析

2023年

  • これはとても面白いですね。「HLA-B*15:01」という遺伝子タイプの人が新型コロナウイルスに感染しても無症状の傾向にあるとのこと。この遺伝子は、実は弊社ジーンクエストで行った新型コロナワクチンの副反応の研究でも関連が出ており、ワクチン接種で発熱しやすいと明らかになりました。 記事の通り「この特定のタイプの人は、新型コロナへの感染前からコロナウイルスのたんぱく質の一部に反応する免疫細胞を持つ傾向がある」とのことで、副反応が出やすいのかもしれません。事前に遺伝子タイプによって、ワクチン接種の副反応が出やすいかどうか・感染時無症状かどうかを予測することでワクチンの接種判断をできると興味深いです。

  • 良い傾向かのように思うかもしれませんが、実態としては共働きのうちフルタイム共働きはほぼ増えておらず、女性は非正規雇用が多く短時間労働者の割合も高いと、男女格差は依然大きいです。結局子どもが体調不良になったときには女性が休まざるをえなかったりなど育児負担が偏ることでキャリアやチャンスを得づらい構造です。例えば私の夫の会社では、男性が子の体調不良を理由に休むことがはばかられる風潮で心の底から腹が立ちます。男性型長時間労働社会のままではなく、女性の有業率があがり男女が平等に働いたとしても家庭と仕事が両立できるような社会・企業の制度、社会の風潮を作らなければ、日本の少子化を促進するだけでしょう。

  • 遺伝子的に3人の親を持つ子が生まれるミトコンドリア置換法は、子供が持つ可能性のある遺伝子疾患を回避することができるものです。不妊治療にも活用できるのではないかとも注目されており、最近の臨床試験では実際に不妊治療に有効である可能性を示す証拠も示されました。
    テクノロジーの発展は止められませんので、記事にある「変化を受け入れるのか、伝統的な家族観を守るのか」の問いはあまり意味がなく、問うべきは「どのように変化を受け入れるのか」です。変化していくことは当然受け入れざるを得ない上で、人類は何を許容として何を規制するのか。最先端の科学の場では、常に人類の鼎の軽重が問われます。

  • 子どもを持つことのリスクでいうと、働き盛りかつ育児世代の同年代でよく聞くのが「キャリアか育児か」の二者択一の社会環境になってしまっていることです。上司や同僚が長時間労働している職場で、育休を取ったりお迎えのために帰ることは、女性だけでなく男性にとってもキャリアを失うことに繋がるので育児参画は進みません。先進国では女性の労働力率が高まるほど出生率が高くなっているにも関わらず、日本ではそうなっていません。女性の労働参画率を高める際に、他国が同時に行っている強力な労働時間改善を日本はやっていないからです。根本的な社会全体の長時間労働環境を変えないと、キャリアか育児かという環境は変わらないと思います。

  • 個人的にはこのWHOの見解には懐疑的です。というのも、非糖質系甘味料の影響を調べる研究論文の多くは「何も摂取していない状態」との比較研究であり、「同じ甘味を感じる程度の砂糖を摂取した状態」との比較ではないからです。例えば今年Nature Medecine誌に掲載された論文ではエリスリトールが2型糖尿病等のリスクを増大させると報告がありましたが、人口甘味料ではなく普通に砂糖の摂取に変えると、逆によりリスクを増大させるだけです。何を摂取するのかを考えるときに、何との比較をした結果なのかをきちんと考えることが大事ですし、指針を作る際にもその観点を織り込むべきです。

  • 子宮内膜組織のエピゲノム状態が着床不全を引き起こしていることを示す研究です。例えばこれまで原因不明であった不妊の人の子宮内膜のエピゲノム状態を調べることで、原因を特定することができる可能性があるという点で、希望のある研究結果ですね。エピゲノムは遺伝子配列とは異なり可変な情報であるので、将来的にはエピゲノムを変えることで治療ができるようになるかもしれません。
    一方本題とは異なりますが、科学的発見のニュースを扱う際に、せめて当該研究が掲載された科学雑誌名などのソースを、日本の新聞記事は明記してほしいです。詳細を確認するために元となる論文を探すのに大変苦労します。

  • こども未来戦略会議の委員の1人です。現金給付などの話はよく議論されていますが、この国を少子化に導いている根本的な原因である社会環境・労働環境を変えなければ財源がどんどん必要になるだけです。また、働き盛りかつ子育て世代の同年代で、働きたくても育児と仕事の両立が難しくキャリアを諦める友人がいかに多いことか。日本の未来のために国が環境を整えるべきことは、男女ともに長時間労働を手放したとしても回るよう国全体の生産性を高める仕組みを作ることだと思います。国がいくら育児支援をしたとしても長時間労働を強いる国では少子化を止めることは難しいため、企業・働き方も一体となった施策が必要だと感じます。

  • 昨年12月にイーロン・マスク氏率いるニューラリンクの進捗発表会があり、半年以内に「脳に電極」埋め込みの治験を開始する予定を発表していました。人間の脳とコンピューターをつないで情報をやりとりするデバイス(BMI)により、例えば視力を失った人の視力回復や、麻痺に苦しむ人の運動機能の回復、障害を持つ人が手を使わずに脳の信号でコミュニケーションできるようになるなど期待されています。一方で、脳へのチップの埋め込みの実験対象としたサルが死亡したことで動物愛護団体から批判を受けていましたが、結局安全性が証明できないと活用できないため、その点をヒト試験でいかにクリアしていくのか、今後の注目です。

  • ゲノムから将来の病気のリスクなど未来だけでなく、祖先ルーツなど過去のことが明らかになることは面白いです。ジーンクエストの遺伝子祖先解析でも、ミトコンドリアDNAを調べることで、およそ19万年前に誕生した現生人類の共通祖先が、どのような経路を辿って日本列島に到達したのか、という自身のルーツを探ることもできます。欧米では祖先解析を目的に遺伝子解析サービスを利用する人も多く人気を集めていますが、例えば日本人の解析を行うと、遺伝子解析からおおよそその人がどの地方出身なのかを推定することができます。記事のような研究が進むことで日本の起源についてより深く理解できるようになるのは興味深いです。

  • 基本的にヒトなどの動物は自然環境よりも体温を高く保ってウイルスなどの病原体から身を守ってきたものの、ウイルスやその他微生物の方がヒトよりも進化のスピードが速いので温暖化により耐熱性を獲得したことで新たな感染症の脅威になると考えられています。温暖化が今後の感染症のリスクを高める要因はそれだけでなく、温暖化が進み南極の永久凍土が溶けるとその中にも大量の未知のウイルスが放出されるとも予想されています。地球環境を守ることは必ずしも利他的な姿勢ではなく、自分達の身を守ることに直結するのだと改めて感じます。