アダルトレーベルの歴史研究

1992年5月に誕生したAVメーカー「MAX-A」は、「Calen」と「サマンサ」の両レーベルを矢継ぎ早に立ち上げた。前者は麻生早苗や早坂ひとみ、高樹マリア、柚木ティナなどで知られ、後者のレーベルでは白石ひとみ、美竹涼子、吉沢明歩、蒼井そら、みひろなどの活躍が多くのファンの記憶に残っているはずだ。AV業界を彩る幾多のトップアイドルを世に出してきたこの二枚看板は、時を経て、社名を冠した「MAX-A」レーベルに集約され、いまに至っている。

第6回 MAX-A「Calenに込めたウチらしさ」


「美セレブCAはセックスがお好き 若槻シェルビー」(放送:スプラッシュ)

第6回 MAX-A「Calenに込めたウチらしさ」

レンタルビデオ店で貸し出されるVHSテープが、アダルトコンテンツの中核だった時代。かつてのAV業界では、強いつながりを持つ大手5社が、市場シェアを分け合っていた。当時を振り返っていただこうと、MAX-A制作部の担当氏に話を聞いた。

「当時、単体女優の作品を中心として新作をリリースしていた5社、つまり、ウチとアリスJAPAN、宇宙企画、アトラス21(元VIP)、KUKIを、私たちは、『エレクターズ』と称していました。5社共同で、『エレクターズ』というタイトルの冊子も作っていましたね。5社の新作のパッケージをひとまとめにして、レンタルビデオ店やレンタル物のAVを扱っているショップに配付していたんです」


「本物の素●人妻!国際結婚おパイパン奥様AVデビュー 一条星空」(放送:フラミンゴ)

これらライバル会社と比べ、MAX-Aは最後発のメーカーだ。アリスJAPANを主力レーベルとする、ジャパンホームビデオの関連会社としての発足だった。そうした経緯もあって、他の4社とMAX-Aとの間には、大きな方向性の違いがあったという。

「先代の代表がよく言っていた言葉を覚えています。『ウチはパイオニアでいる必要はない』。ウチ以外の4社はAV創成期からあるパイオニアのメーカーで、スター性のある新人を見つけては、大々的な売り出し方で専属デビューさせていました。しかしMAX-Aは、そういったやり方をせずに、『ウチらしい新人女優』に絞り込んで勝負しようと考えました。その舞台として名づけられたのが、Calenレーベルなんです」


「欲求不満などすけべ人妻に 生ハメ中●し」(放送:チェリーボム)

同レーベルの第1作は、川奈さおりの「恋するカレン」。アリスJAPANや宇宙企画などの専属女優とは違う、「MAX-Aらしさ」とは、何なのだろうか。

「一般のタレントさんやモデルさんのようなタイプではなく、純朴な女の子ですね。ダイヤの原石感のあるコを、磨いていければいいなという。この理念はいまに至るまで変わってません」

たしかに、まるでクラスの同級生のような雰囲気をただよわすタイプが、初期のMAX-A作品では目立っていた。我々AVライターも、そうした女優に対して、「MAX-Aらしい女の子だね」という形容をしていたことを思い出す。

そしてもう一つ、「MAX-Aらしさ」として挙げるべきは、ドラマへのこだわりだろう。エレクターズの他社と比べ、早い段階から同社はドラマ物に力を入れていた。

「ドラマ性にこだわるというのは、メーカー発足時のコンセプトにあったことです。ピンク映画の監督を多く起用していたのは、ウチならではですね」


「潮吹きガマン 露出セックス 小倉奈々」(放送:スプラッシュ)

MAX-Aの作品に携わったピンク映画の監督としては、福岡芳穂や北沢幸雄などが知られる。またピンク出身の監督ではないが、凝ったシナリオや丁寧に仕上げた美術セットなど、映画作りのスタンスをAV作りに取り入れたTOHJIROの存在は、同社の飛躍に大いに貢献した。彼は1993年からの2年間、MAX-Aの伝説的なシリーズ『監●ボディドール』を立ち上げから担当。自由を奪われて泣き叫びながら、男の歪んだ愛情の餌食になる女たちの姿を執拗に追った。

単なる美少女AVメーカーにとどまらないハード路線はさらに加速し、犯される聖職者を描いた『女教師狩り』が誕生。その後、今度は生徒側の視点で作ろうということで、女子●生が主人公となる『制服狩り』も開始。他に、おっぱいに徹底フォーカスする『不法侵乳』や、リリカルな路線の『妹の秘密』も人気を得た。これらはいずれもドラマ性重視で、MAX-Aの名を世に知らしめるシリーズとなった。


「奥さまは魔女」(画像提供:MAX-A)

もちろん、こうした多数の作品群は、生え抜きの女優陣だけでは回せない。CalenはMAX-Aから専属デビューする女優用のレーべルだと先述したが、もう一枚の看板である「サマンサ」は、すでに実績を持つ人気女優を起用した作品のレーベルという位置づけとなる。そのリリース第1弾は、ティファニー(現h.m.p)で1990年にデビューして以来、業界を席巻していた白石ひとみだ。

彼女のMAX-Aでの第1作『奥さまは魔女』(1992年)を売り出すレーベルとして名づけられたのがサマンサであり、レーベルのロゴは、ホウキにまたがって飛ぶ魔女だ。ちなみに、1960年代に同名のタイトルで人気を博したアメリカのテレビドラマにおいて、主人公として登場する魔女の名前がサマンサである。


「Super Star☆高樹マリア」(画像提供:MAX-A)

ただ、同じサマンサ女優ながら、冒頭で挙げた美竹涼子、吉沢明歩、蒼井そら、みひろなどは、業界で長くキャリアを積んだ白石ひとみのケースとは毛色が違う。例えば美竹は2002年1月にアリスJAPANからデビューしており、MAX-Aでの出演作品は、翌月の発売だ。

「エレクターズ5社の中で、共同リリースを始めるようになったことが、直接の理由です。月ごとに複数社の間で交代でプロデュースするというシステムですね。そうした新人女優は、当社ではサマンサでのリリースとなりました。例えば、蒼井そら(2002年デビュー)や吉沢明歩(2003年)は、MAX-AとアリスJAPANの2社専属デビュー。あいだゆあ(2004年)は、MAX-AとKUKIの2社専属デビューです。彼女たちは、ひと月ごとに両メーカーの作品に出演していました」


「Super☆Star彩乃なな」(画像提供:MAX-A)

ところが、こうして大切に育てられてきた2レーベルのロゴは、2000年代前半にVHSからDVDへの切り替えが進むにつれ、パッケージから徐々に姿を消していくことになる。

「1つはデザイン上の理由です。DVD作品の流通が始まったばかりの頃は、いまのようなトールケースではなく正方形のジュエルケースで売られていました。縦長の大きなVHS用のパッケージと違って、レーベル名を入れるスペースが窮屈なんですよ。そして2つめの理由は、メーカー名の認知を上げたいという判断。そのために、Calenやサマンサではなく、『MAX-A』という統一レーベルをパッケージに大きく入れて、作品を売っていこうと考えたんです」


「濃交 友田彩也香の真正中●しSPECIAL」(画像提供:MAX-A)

だが、2014年10月に、制作路線の変更を余儀なくされる。かつてCalenが担ってきた「MAX-Aらしさ」に、ピタリとハマる大型新人女優が出現したせいだ。

「彩乃ななのデビュー作『Super☆Star彩乃なな』(2014年)のパッケージで、Calenのロゴを復活させたんです。それまでウチの新人デビュー作は、『New Comer 希志あいの』(2008年)や『New Comer 小倉奈々』(2010年)といったタイトルが基本です。『Super Star☆高樹マリア』(2003年)や、『Super Star☆みひろ』(2005年)は例外中の例外です。それを彩乃の作品のタイトルに持ってきたということで、いかに我々が彼女に社運を賭ける思いでいたか、おわかりいただけるでしょう」

彩乃は惜しまれながらも今年引退を表明したが、彼女がMAX-Aの看板女優として長らく奮闘してきた事実は変わらない。彩乃の出演本数は、小倉奈々の48本、長瀬麻美の42本に次ぐ位置につけている。

そんな彩乃と長瀬が立て続けに活動を休止したことで、いま専属女優としてMAX-Aの看板を背負うのは、友田彩也香ただ1人だ。人気企画単体女優だった彼女は、2018年8月からMAX-Aの専属女優に転じた。


「美少女たちの本気中●しセックス「濃交」大槻ひびき/深田結梨」(放送:レッドチェリー)

「友田彩也香さんは、作品に向き合う姿勢や、単体女優としての意識が素晴らしいということで白羽の矢を立てたんです。知名度も申し分ないですし、MAX-Aのブランドを広めるにはうってつけの存在です」

同社は2018年9月デビューの青葉夏まで、ほぼ毎月1人のペースで専属の新人の作品をリリースしてきたが、実力と実績のある企画単体の女優で作品を撮る方向へと転換。友田の起用は、この流れを象徴していると言えるだろう。

実力派女優たちが、その力をフルに発揮する同社の人気シリーズとして知られるのが、『濃交』。専属の友田彩也香、長瀬麻美、彩乃ななをはじめ、波多野結衣、大槻ひびき、深田結梨など、エロプレイに定評のある企画単体女優の顔ぶれがズラリだ。

「『濃交』は、自分なりのエロ表現というものをしっかりとできる女優さんのみをキャスティングしています。細かいセリフなどはなく、体だけで濡れ場を表現してもらうという内容です。大槻ひびきちゃんの作品は、1チャプター、1カットで全編撮りきったというのが売り。表現力が長けている彼女ならではの仕事ぶりにどうぞ圧倒されてください。深田結梨ちゃんは、本●が始まるとたちまちスイッチが入る。そのスイッチが2段階あって、エロ行為が始まると没入し始め、男性器が挿入されるとさらに反応が変わる。ふだんのおぼこい雰囲気とのギャップがすごいです」


「美少女たちの本気中●しセックス「濃交」大槻ひびき/深田結梨」(放送:レッドチェリー)

また、MAX-Aのブランドを広める観点から、同社は積極的にイベントを展開している。AV女優たちを秋葉原のイベントスペースに集めて『エロ大喜利』を2017年に立ち上げ、その後も定期的に開催しているという。

「それまでは新作リリースのイベントしか手がけていなかったのですが、もっとお客さんを巻き込むような興行をやっていこうという声が社内で高まりまして。専属女優はもちろん、ウチの作品に出てくれている人気企画単体女優も一緒になって、バラエティ色が強い非アダルトのイベントをやろうと考えたんです。そうすればR18のような年齢制限が要らないですし、女性のお客さんも参加しやすい。業界内での認知も進んで、女優さんから『私も出たい!』と言ってもらえることも増えてきました」


「溺れる堕人妻 麻生早苗 ~目の前で夫の上司と~」(放送:フラミンゴ)

この『エロ大喜利』で大暴れした人気企画単体女優のビッグネーム・涼宮琴音は、今年8月からMAX-Aの専属女優として迎えられる。エロスキル抜群の彼女の第1弾は、もちろん『濃交』だ。これはAVファンならずとも、要注目だろう。

最後に、改めて今後の展望を担当氏に聞いた。

「AVがなかなか売れない時代になっていますが、それでもCalenレーベル誕生の頃から大事にしてきた、『MAX-Aらしい新人』は意欲的に発掘していきたいし、女の子に寄り添ってものを作っていこうという姿勢にブレはなくやっていきます」

今月放送される『溺れる堕人妻 〜目の前で上司と〜 麻生早苗』(フラミンゴ)は、担当氏の言葉の裏付けになるだろう。MAX-A専属女優で最初の殿堂入りスターは、1995年デビューの麻生早苗。1998年に引退した彼女は、2012年に復帰するにあたって、MAX-Aを選んだのである。レジェンド女優の熟れた肉体は、女優とメーカーの幸せな関係を覗かせてくれる。

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文・沢木毅彦
さわき・たけひこ 1961年生まれ。フリーライター。AV草創期よりAV専門誌にレビュー、取材記事を寄稿。月刊誌、週刊誌、WEBで細々と執筆中。香港映画と香港街歩きマニア。ビールは香港の海鮮屋台で飲むサンミゲル(生力)とブルーガール(藍妹)が最好。
twitter:@berugiisan

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