唐臼ない、陶土ない… 2年続きで被災、小鹿田焼悲鳴 民陶祭、見通し立たず

熊本地震で壁面が崩れ、九州豪雨でさらに崩壊が進んで陶土を取ることができなくなった採土場=大分県日田市
熊本地震で壁面が崩れ、九州豪雨でさらに崩壊が進んで陶土を取ることができなくなった採土場=大分県日田市
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 2年続きの災害で、大分県日田市小野地区の国指定重要無形文化財「小鹿田(おんた)焼」の窯元が苦境に立たされている。昨年4月の熊本地震では崖崩れで陶土が取れなくなり、今年7月の九州豪雨では陶土を砕く唐臼の多くが被災。毎年10月の展示即売会「民陶祭」の開催も危ぶまれ、300年以上の伝統が息づく民陶の里から悲鳴が上がっている。

 小鹿田焼協同組合によると、集落を流れる大浦川が増水し、44基ある唐臼の6割以上が動かなくなった。原材料になる良質なマツの入手も困難で、坂本工理事長は「全てが厳しい状況」と苦しい胸の内を明かす。

 集落内にある唯一の採土場は、熊本地震による崖崩れで陶土が取れなくなっていた。復旧工事が始まる直前、豪雨で崖はさらに崩壊し、工事開始のめどは立っていない。各窯元には最大2、3カ月分の陶土しか残っていなかった上に、水害で虎の子の陶土の多くが流失。完全になくなった窯元もある。

 豪雨では集落へ通じる県道も被害を受けた。アスファルトが剥がれてアクセスが難しくなり、陶芸ファンら観光客の足も遠のいている。組合は、唐臼などへの直接的被害をはじめ、陶器生産が滞ることによる組合全体の被害額を約4千万円と推計。生産ができない状態が続けば被害額はさらに膨らむ恐れもある。

 坂本理事長は「こんな状況で民陶祭ができるだろうか。市の意見も聞き、結論を出したい」と話している。

=2017/08/03付 西日本新聞夕刊=

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