第2節
我が国における再生可能エネルギーの導入動向
我が国においては、これまで再生可能エネルギーの導入が進んでいますが、利用形態毎に導入障壁や課題があり、こうした実態を踏まえて導入拡大に向けた対策を講じていくことが重要となります。ここでは、エネルギー供給・需要業態における代表的な導入形態について詳しく触れていきます。
(再生可能エネルギー源別の国内の導入実績等の動向については、第2部第1章第3節2.参照)
1.エネルギー供給業態における再生可能エネルギーの導入実態
(1)電気事業
①太陽光発電
2008年7月29日に閣議決定された「低炭素社会づくり行動計画」における「太陽光発電の導入量を2020年に10倍、2030年には40倍とすることを目標として、導入量の拡大を進める」、「3~5年後に太陽光発電システムの価格を現在の半額程度に低減することを目指す」等の方針や2009年4月の麻生太郎内閣総理大臣スピーチにおける「太陽光発電の規模を、2020年までに今より20倍に」といった方針が決定され、住宅用太陽光発電の導入に対する補助金の開始(2009年1月~)や太陽光発電による電気の新たな買取制度の開始(同年11月~)など、様々な施策を講じてきたところです。
一方、その普及促進を図るに当たっては、
- 「国民全員参加型」での普及促進を図る観点から、買取制度については、電力会社がその買取りに要した費用を一般家庭や産業界等へ広く薄く転嫁をすることになるため、太陽光発電の普及促進の意義や買取制度の趣旨、費用転嫁の考え方について、全国各地で開催したソーラータウンミーティングのように、国民との相互理解に努めること、
- 中長期的な視点に立った計画的かつ積極的な技術開発を進め、低価格化、効率化を図ること、
- 高い導入目標達成のため、安定的な原材料供給や、電気の安定供給を実現するための世界最先端の系統制御システム等が必要なこと、
といった課題があります。
②風力発電
2008年3月に閣議決定された京都議定書目標達成計画において、2010年度の風力発電の導入目標(2005年度実績:44.2万kl)は下位ケース5で101万kl、上位ケース6で134万klを目安とされています。1997年度に創設された「新エネルギー導入事業者支援事業」による支援措置や、RPS法7に基づく取組の推進により風力発電の導入は年々増加しています。また、更なる推進のため、新たに、洋上風力発電の可能性調査・実証事業や、小型風力発電の性能評価(ラベリング)制度への着手等に取り組んでいます。
一方、その普及促進を図るに当たっては、
- 立地適地の数的制約、地域住民の理解、電力系統制約等が影響することから、国や自治体、電力会社等による情報共有・協力や適切な規制の見直しが必要なこと、
- 日本の風力発電機メーカーの国際競争力強化のため、蓄電池等を用いた系統安定化対策、落雷対策、洋上風力発電等に関する技術など、技術力の蓄積と、そうした技術開発のための支援が必要なこと、
といった課題があります。
- (出所)
- NEDO「風力発電ガイドブック」(2008年2月)
- (出所)
- 新エネルギー部会「新エネルギー部会 中間報告」(2009年8月)、NEDO「風力発電ガイドブック」(2008年2月)をもとに作成
③水力発電
短時間での発電が可能で、需要変化への素早い対応が可能という他の再生可能エネルギーにはない特徴もあり、その普及促進のため、電気事業法における累次の規制改革による行政手続きの簡素化・合理化を図ってきたところです。また、河川法においては、従属発電に関する工作物の新築等に係る許可手続きの運用の明確化・申請図書の簡素化による手続きの円滑化を図ってきており、2009年度末には「小水力発電を行うための水利使用の許可申請ガイドブック」を作成し、許可手続きが必要なものの内容を明確化したところです。
一方、そのさらなる普及拡大を図るに当たっては、
- 初期投資が大きいことに加え、昨今、大規模水力から中小水力にシフトしていることにより、その採算性確保が一層厳しくなっていることから、太陽光や風力など他の再生可能エネルギーと同レベルで、開発補助や能力アップのための更新投資に対する補助を拡充が必要なこと、
- 水力発電に係る諸規制に関して、行政手続きの明確化・迅速化についてさらなる改善が必要なこと、
といった課題があります。
なお、第五次包蔵水力調査の結果から、今後の開発ポテンシャルがあるのは中小規模水力であることが示されています。
- (出所)
- 資源エネルギー庁「水力発電に関する研究会中間報告」(2008年7月)
④地熱発電
地熱発電は、その開発可能地点が日本全国に広く分布しており、年間日照時間が相対的に短く、太陽光発電の普及が難しい東北や北陸、北海道の日本海側のポテンシャルが大きいということもあり、地域環境への影響に配慮するとともに、経済性の向上や開発リスクの低減を図りつつ、その開発及び導入を促進してきましたが、1999年の八丈島地熱発電所の操業以降、新規立地がありません。
- (出所)
- 地熱発電に関する研究会「地熱発電に関する研究会中間報告」(2009年6月)
その背景としては、
- 地下深部の調査を要することから開発のリードタイムが15~20年と長いことや調査・開発段階で多数の坑井掘削が必要なこと等からコストが高いこと、
- 有望開発地域の多くが温泉地域近傍に存在していることから、地元温泉事業者等との調整が必要であること、
といったことが要因に挙げられます。
今後、地熱発電の開発及び導入を更に促進するためには、地熱発電の開発には長期間がかかることから、
- 太陽光や風力など他の再生可能エネルギーと同レベルで、地熱発電開発補助金の補助率や補助対象の拡充を図ること、
- これまで40年以上にわたる地熱発電開発に係るデータや知見の活用等により、温泉事業者等の関係者との調整をスムーズにすること、
等について速やかに着手する必要があります。
⑤その他の再生可能エネルギー(バイオマスエネルギー)の導入
電気事業において上記以外に再生可能エネルギーの導入を行っている例として、石炭火力発電におけるバイオマス混焼が挙げられます。現状は、電力会社の石炭火力発電所において、混焼率1~5%程度で利用されており、主に混焼が容易な木質ペレット(木くずを固めたもの)や木質チップが利用されています。石炭火力発電におけるバイオマス混焼は、バイオマスの使用量が同じ場合、バイオマス専焼発電と比較して混焼を行う方が、熱効率が向上することが確認されています。
電力会社の石炭火力発電所は数十万~百万kWと大規模であるため、木質ペレットや木質チップの量も膨大な量が必要です。そのため、電力会社によっては、海外から輸入する形で調達している場合もあります。
国内外から調達された木質ペレット等は、火力発電所の敷地内の石炭ヤードや石炭サイロ等に準じた設備で保管され、石炭とともにベルトコンベアで石炭粉砕機に掛けられボイラーに投入される形で使用されています。
バイオマス混焼利用を拡大する方策として、一施設当たりでのバイオマスの利用量を増やすという方法とより広範な石炭自家発電設備でバイオマス混焼を行うという方法が考えられますが、前者については、技術等の条件による制約が大きく、混焼率の引き上げによって、より広く普及させることは難しい現状が指摘されています。また、より多くの施設で利用するという場合、木質バイオマスの調達について、低コストで安定的に調達できる環境の整備が課題として挙げられています。
燃料種別 | 導入実績 | 備考 | |
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産業廃棄物 | 家畜排せつ物 | ||
下水汚泥 | ○ | 混焼運用中 | |
廃棄紙 | |||
食品廃棄物 | |||
製材工場等残材 | ○ | 国内賦存量のほぼ全量有効利用 | |
建築発生木材 | ○ | 実機混焼試験中 | |
農作物非食品部 | |||
一般廃棄物(ゴミ) | ○ | 実証試験中 | |
林地残材 | 国内賦存量のほとんどが未利用800万t/年※ |
※バイオマス活用推進会議事務局調べ(2010年5月時点)
- (出所)
- 資源エネルギー庁「低炭素電力供給システムに関する研究会報告書(2009年7月)
- (出所)
- バイオマス活用推進会議事務局調べ(2010年5月時点)
(2)燃料供給事業
我が国の燃料供給においては、バイオエタノール(サトウキビ、トウモロコシなどの農作物や草、木材などのバイオマスを原料とする発酵エタノール)等のバイオ燃料が、主に、自動車等で利用される輸送用燃料の形で利用されています。
バイオ燃料導入への動きとして、国は、京都議定書目標達成計画において2010年度までに国産バイオエタノールを含むバイオ燃料を原油換算50万kL導入することを目指しています。現在、この目標達成に向けて、石油業界における取組や地産地消等での取組が進められています。
石油業界は、2007年度からのバイオ燃料混合ガソリンの流通実証事業を踏まえ、2009年度からは本格的に導入を開始しました。2010年3月現在で全国1,200箇所の給油所でバイオ燃料混合ガソリンの販売を行っていて、今後も拡大する予定です。
地方自治体や民間企業等が主体となり、首都圏、大阪、宮古島等において、流通体制や品質管理状況等の課題への対応を図った実用化システムのモデルを構築し、自立性の検証を行っています。また、バイオ燃料の高濃度利用に向けた規格化の検討についても進めています。
一方で、バイオ燃料の導入に当たっては、世界的に原料栽培・生産・流通を含めたLCA(ライフサイクルアセスメント)での実際の温室効果ガス削減効果や、食糧との競合、生態系の破壊等といった問題が顕在化しています。このため、欧米においては、LCAによるガソリンの温室効果ガス排出量と比較した場合の温室効果ガス排出削減効果等の持続可能性基準が策定されていて、持続可能な形でのバイオ燃料の導入が進められています。
EU:再生可能エネルギー導入 促進指令 |
英国:RTFO (Renewable Transport Fuel Obligation) |
アメリカ:RFS2 (Renewable Fuel Standard) |
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LCAの温室効果ガス 削減義務 |
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食料競合への対応 |
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生物多様性への影響 |
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― |
- (出所)
- 「バイオ燃料導入に係る持続可能性基準等に関する検討会」(2010年3月)
経済産業省、農林水産省、環境省の3省が連携し検討した「バイオ燃料導入に係る持続可能性基準等に関する検討会」において、原料栽培の際に森林を農地に転用して製造したバイオ燃料等は、LCAで評価した場合、土地利用変化による温室効果ガス排出のインパクトが大きく、ガソリンのLCAでの温室効果ガス排出量よりも温室効果ガス排出が増加する場合が相当数あるということが報告されております。
また、同検討会の報告書(2010年3月)において、欧州と同水準の温室効果ガス排出削減基準(EUはガソリン比50%以上の温室効果ガス排出削減効果があるバイオ燃料に限定。)を設けた場合、基準を満たすバイオエタノールは現状、ブラジルの既存農地分、及び国産のてん菜等の一部原料のみであり(第122-1-8)、サトウキビ等を原料とする既存バイオ燃料で十分な温室効果ガス排出削減効果があるものの、供給量は限られる可能性があることも示唆されています。
欧米では主に余剰農産物の活用を目的とし、自国産の原料を利用しバイオ燃料の生産をしており、現状、バイオ燃料の自給率が低い我が国においては、国産バイオ燃料の増産や開発輸入による導入の促進が必要です(第122-1-9)。
※ブラジル産サトウキビのうち、「草地からの転換」については、今後、実証データが蓄積された場合には改訂をすることとする。
- (出所)
- 「バイオ燃料導入に係る持続可能性基準等に関する検討会」(2010年3月)
食料との競合を回避し、我が国のバイオ燃料の自給率を高めるためには、今後は草や木等を原料とするセルロース系エタノールや藻類等を原料としたバイオディーゼル燃料・バイオジェット燃料といった次世代バイオ燃料の技術開発を促進する必要があります。将来的に次世代バイオ燃料の製造技術が確立し、製造に係るコストの低減が進んだ場合には、次世代バイオ燃料を中心として、バイオ燃料の導入を進めていくことが重要です。
- (出所)
- 「バイオ燃料導入に係る持続可能性基準等に関する検討会」(2010年3月)
(3)ガス供給事業
バイオマス資源をガス化したバイオガスの利用については、これまでも、食品工場や下水処理場などにおいてオンサイト利用が行われています。バイオガスは有機物の発酵時に発生するメタンガスが原料となり、この原料となるメタンガスの主な発生源は、食品廃棄物の発生場所(食品工場や廃棄物処理場など)、下水汚泥の発生場所(下水処理場など)、家畜糞尿の発生場所(畜産場など)です。
バイオガスは、その発生と都市ガスとして利用するための設備コスト等を勘案すると、発生元(オンサイト)での自家消費が最も合理的とされています。例えば、食品工場においては、食品廃棄物をメタン発酵させてバイオガスを作り出し、コジェネレーション設備によりバイオガスと都市ガスを混焼させて、発生する電気と熱を有効利用することができます。これにより、工場内でのエネルギー消費量を抑制し、省エネ・省CO2を図ることが可能となります。このようなオンサイトでのバイオガスの利用を促進するためには、ガス事業者等の関連事業者がガス精製・貯蔵等のための技術開発を進めることが必要です。
一方で、バイオガスをオンサイトで利用せずに、都市ガス製造工場において都市ガス原料として利用することも可能です。例えば、下水処理場で発生する下水汚泥をバイオガス化する際、都市ガス製造工場が近接するような場合には導管により工場まで輸送して天然ガスと混合させることができます。これにより、都市ガス原料である天然ガスの消費量を抑制することができ、さらに、バイオガスの発生元で精製・熱量調整等を行ったバイオガスを近接するガス事業者が導管に受け入れ、都市ガスとして供給することも可能です。
これまで、バイオガスを都市ガスの導管に注入して供給された事例はありませんが、現在、大手ガス事業者を中心に、ガス導管への注入実証が進められるとともに、バイオガス購入要領を策定するなど、バイオガスを都市ガスの導管に注入して供給するための環境整備が進められています。
都市ガスの供給における導管へのバイオガス注入については、バイオガス発生源を保有する事業者が、導管接続する上での大きなハードルとなっている精製プロセスについて、より簡易かつ低コストに行えるように技術開発支援を推進することは、バイオガスの調達を円滑にする上で必要です。また、バイオガスにより都市ガスに混入する可能性のある物質として酸素やシロキサンなどがあり、こうした不純物除去への対応も必要です。
また、品質を都市ガスと同等に高める必要があり、精製、昇圧等の高コストの設備投資が必要となるといった点も指摘されています。
都市ガスの供給におけるバイオガスの利用をさらに拡大するためには、消化槽を持たない下水処理場に消化槽の整備を促すことや既に消化槽を持つ下水処理場において下水汚泥以外のバイオマスと一体的にバイオガス化すること、廃棄物の中でもバイオマス資源である食品廃棄物を分別し、バイオガス化して利用するような再生利用方法も活用し、関係省庁・自治体等の関係者の連携・協力を図ることも重要です。
- (出所)
- 総合資源エネルギー調査会都市熱エネルギー部会政策提言「低炭素社会におけるガス事業の在り方について」(2009年7月)
(4)熱供給事業
熱供給事業(主に地域熱供給事業)は、特定の地域内にある複数の建物に、その建物の冷房や暖房、給湯などで必要となる熱を供給する事業ですが、この熱供給事業においては、河川、下水や海洋の温度差を利用した再生可能エネルギーの導入が行われています。
熱供給における再生可能エネルギーの導入については、エネルギーの面的利用(個々の建物ではなく複数の建物でエネルギーの最適化を図る)の観点から評価されており、京都議定書目標達成計画等においてもその促進の重要性が掲げられています。
- (出所)
- 資源エネルギー庁・エネルギーの面的利用促進研究会「エネルギーの面的利用に関する調査報告書」(2005年3月)
再生可能エネルギー導入の実際の事例としては河川水利用、海水利用、地下水利用、下水利用などがあり、温度差エネルギーを利用している地域熱供給地区は、2010年3月時点で16地区あり、同じく河川水利用が4地区、海水利用が4地区、地下水利用が2地区、下水利用が6地区であり、多くの場合、天然ガスコジェネレーションなどの熱源の補助的な位置づけとして使用されています。例えば、取水口から取り込まれた河川水等から、ヒートポンプを利用して熱を取り出し、建物内の配管を流れる温水へ熱を供給し、暖房利用されたり、冷房期には、建物内の配管を流れる冷水から熱を取り出し、河川水等へ放熱することで、冷房用冷水の温度を下げ、再び冷熱供給を行っています。
地域熱供給の導入については、建物の冷暖房システムと一体となっていて、既存の建物への導入を拡大していくために必要な投資が大きい点が指摘されていることから、地域の再開発やビルの新築・建替時などに積極的に熱供給システムを採用する方向が期待されています。
例えば、河川等から取水した水の熱の利用に当たっては、水利権の調整等が必要となるほか、取水・排水口の設置に当たっての許可や、取水・排水のモニタリングへの対応が必要となり、より円滑な手続きが図られるよう調整を図ることが重要です。
2.エネルギー需要業態における再生可能エネルギーの導入実態
(1)産業部門における代表的なエネルギー利用
次に、エネルギー需要業態、特に産業部門における再生可能エネルギーの導入実態について紹介します。我が国でエネルギー多消費産業は、鉄鋼業、化学工業、セメント製造業、製紙業といった産業が挙げられますが、鉄鋼業や化学工業において、主に原料(マテリアル)としての利用が大きな割合を占めているのに対して、製紙業においては、エネルギーとして、セメント製造業においては、原料(マテリアル)としても、エネルギーとしても積極的な活用を図っています。
①セメント製造業
セメント製造業では、原料・エネルギー・製品の一部として廃棄物・副産物を積極的に活用してきており、最近では、下水汚泥や一般ごみなどの活用も増加しています。セメント製造業の製造プロセスは、原料工程、焼成工程、仕上工程の大きく3つの工程から構成されています。そのうち熱エネルギーのほぼ100%が焼成工程プロセスで消費されており、こうした熱エネルギーの発生源の一部として、再生可能エネルギー源が利用されています。
具体的には、木くず・建築廃材などの木質バイオマスが多く、その他、肉骨粉などが利用されています。業界全体では、2008年に木くず40.5万トン、肉骨粉5.9万トンが原燃料として利用されています。
利用されている非化石エネルギーは、もっぱら焼成工程に投入して利用されており、キルンでセメントの原料となるクリンカを焼成する段階で供給されています。
また、セメント製造業における自家発電比率は近年上昇しており、火力自家発電においても木くず等の代替燃料の有効利用が積極的に進めています。2005年度以降、自家発電におけるエネルギー代替燃料の利用割合が増加しています。
再生可能エネルギー源の一つである木くずについては需給が逼迫し、調達コストが割高となっています。一般的に、建築廃材、製材工場等残材、森林資源の順に、調達コストが高くなっていく傾向にあります。そのため、エネルギーとして安定的に利用していくための市場の整備が必要といった点が指摘されています。
また、廃棄物に該当する再生可能エネルギー源については、廃棄物の処理及び清掃に関する法律や関連法規が適用されるため、地元自治体からの許可の取得等、法に基づいた適正な取扱が必要です。
- (出所)
- 社団法人セメント協会「セメント産業における地球温暖化対策の取り組み」(2009年11月)
- (出所)
- 新エネルギー産業ビジョン検討会「新エネルギー産業ビジョン」(2004年6月)
②製紙業
製紙業では、パルプの製造工程において、電気、熱エネルギーを必要としています。こうしたエネルギーは、石炭や都市ガス、重油を利用した自家発電設備や、木材チップから繊維のみを取り出した際に得られる黒い液体(黒液)を燃料として利用する回収ボイラー等によって供給されていますが、他の産業と比べても、高い割合で再生可能エネルギーが利用されています。
2008年度ではエネルギー消費量全体の約4割が再生可能エネルギーとなっており、再生可能エネルギーの約8割が黒液、その他の再生可能エネルギーとしては廃材やペーパースラッジが利用されています。また、廃棄物やRPFなども全体の1割程度利用されており、近年その使用量は増加傾向です。
- (出所)
- 日本製紙連合会「第12回(2009年度)「環境に関する自主行動計画(温暖化対策)」フォローアップ調査結果(2008年度実績)」(2009年9月)
- (出所)
- 日本製紙連合会ホームページ(http://www.jpa.gr.jp/env/energy-saving/nonfossil-energy/index.html)
再生可能エネルギー源である黒液、木質バイオマスの調達については課題が指摘されています。まず、黒液については、製紙業の生産工程における古紙・再生紙の割合が増えてきていること等に伴い、長期的には黒液の利用できる量が減少する可能性が指摘されています。一方、セメント製造業と同様に、木質バイオマスの調達に関しては、競争が激しくなっていて、価格も高くなる傾向がみられます。また、林地残材については、適正な価格でパルプ化・燃料化するための集荷・運搬システムの重要性が指摘されています。
また、製紙産業において、マテリアル利用とエネルギー利用の調整が必要といった点や資源のカスケード利用の重要性についても指摘されていて、今後の導入拡大に当たっては、こうした点を踏まえた対応が重要です。
(2)産業部門等における太陽光発電の導入
これまで我が国における太陽光発電の導入については、住宅用を中心に普及しました。産業部門の工場等における太陽光発電の導入については、1997年より特定の補助要件を満たす太陽光発電設備の導入補助が開始されたことにより、一部の事業者で活用が進みました。現在、導入されている太陽光発電システムは、数10~数100kWの規模のものが多く、1,000kW超級のいわゆるメガソーラーの導入について、今後の普及拡大が期待されています。
工場等における利用の実態としては、事業所内の電力供給の一部として充当、日中の需要のピークカット効果を期待した導入に加え、企業の社会的責任(CSR)活動の一環としての取組が挙げられます。
- (出所)
- 太陽光発電協会ホームページ(http://www.jpea.gr.jp/04doc01.html)
なお、国内電力業界(電気事業連合会)として、今後、2020年度までに、全国約30地点で、約14万kWのメガソーラー発電所(約7万トンのCO2排出量削減に相当)の建設を計画していることが2008年5月に発表されています。
3.導入拡大に当たっての視点
これまで紹介してきたとおり、我が国で利用されている再生可能エネルギーのうち、もっぱら電気事業に供しているものについては、既に技術的に確立され商用利用が行われているものが多く、特に、太陽光発電等は各種施策により導入規模が拡大しています。
一方で、燃料利用に供しているものについて、気体燃料や固体燃料は既に技術的には商用化されていますが、資源の偏在性ゆえに地産地消やオンサイト利用が主たる利用形態となっていること、エネルギー利用についての優先順位付けが明確でない等を踏まえ、導入拡大に向けた対応が必要です。
また、液体燃料のうちバイオ燃料は、LCAでの十分な温室効果ガス排出削減効果、エネルギーセキュリティ、コスト低減を確保しつつ、持続可能な形での導入が重要であり、食料との競合を回避するためにも、技術革新を進めています。
これらのエネルギー源について、それぞれの特徴・課題を概観すると以下のとおりであり、それぞれのエネルギー源ごとのメリットを最大限活かす一方、デメリットを克服するような取組みが必要です。
エネルギー源 | 特性 |
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太陽光 |
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太陽熱 |
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風力 |
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バイオマス |
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水力 |
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地熱 |
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- (出所)
- 新エネルギー部会「新エネルギー部会 中間報告」(2009年8月)等をもとに作成
一方で、再生可能エネルギー(特に太陽光発電)の発電コストは、他のエネルギーに比べて高いといった点も挙げられますが、今後技術革新や需要拡大によるコストの低下が期待されています。
- (出所)
- 太陽光:太陽光発電協会のデータより資源エネルギー庁試算、風力:総合資源エネルギー調査会第7回新エネルギー部会(2001年6月)
- 水力・火力・原子力:総合資源エネルギー調査会電気事業分科会コスト等検討小委員会(2004年1月)
- 地熱:地熱発電に関する研究会(2009年6月)
また、再生可能エネルギーの導入拡大に当たっては、政策と事業者の行動が有機的に連携を図ることが重要です。具体的には、事業のフィージビリティスタディを進めていくに当たって、政策側のアクションとして行われるガイドライン等に示される条件を所与のものとして検討するものと考えられます。そのため、ガイドライン等において、事業者側の導入時の課題を提示した上で、事業者自ら課題を踏まえて事業を実現する方向へと誘導することが望ましいです。一方で、事業者自らの取組みでは解決が困難である課題に直面する場合がありますが、そのような場合には、掲げた導入目標を達成するために必要な支援や規制の見直しを行っていくことが求められます。
なお、再生可能エネルギー導入拡大に向けた我が国の新たな政策展開については、第4節で紹介します。