ノーベル文学賞、今年の発表見送り 委員家族の性的暴行疑惑で

The Nobel Literature Prize medal

画像提供, AlfredNobel.org

ノーベル文学賞を選考するスウェーデン・アカデミーは4日、今年の文学賞受賞者発表を見送ると発表した。会員の夫による性的暴行疑惑が浮上して以来、スウェーデン・アカデミーの対応が厳しく非難されていた。

スウェーデン・アカデミーは、今年の文学賞受賞者は2019年の受賞者と共に発表する方針を明らかにした。世間の信頼を失ったことを理由に挙げている。

選考委員で詩人・作家のカタリーナ・フロステンソン氏の夫、フランス出身の写真家ジャン・クロード・アルノー氏に対して、女性18人が性的暴行を受けたと訴え出たのを機に、フロステンソン氏のほか、同アカデミー会長と委員4人が辞任した。

選考委員の中には、伝統を守るために今年も受賞者を発表するべきという意見もあったが、現在のスウェーデン・アカデミーは受賞者を選考できる状態にないという意見もあった。

同アカデミーは、今回の発表に先立ち、ノーベル文学賞の評判に大きな傷がついたと認めるコメントを発表。世間の信頼回復のための対策をとる方針を示していた。

ノーベル文学賞が1901年に創設されて以来、最大の醜聞となった。2回の世界大戦に重なる6年間を除き、同文学賞が発表されなかったのは1935年のみだった。また、当初「該当者なし」だった1936年の文学賞は翌1937年に、米作家ユージーン・オニールに与えられている。

スウェーデン・アカデミーの醜聞は昨年11月に、女性18人がアルノー氏を糾弾したのを機に表面化した。暴行事件の一部は、同アカデミーが所有する建物内で起きたとされる。アルノー氏は加害行動を否定している。

アルノー氏は、同アカデミーが資金提供する文化プロジェクトを運営していた。

同アカデミーは後に、フロステンソン氏の解任について反対の議決をした。これ以外にも、利益相反や受賞者氏名の漏えいなどの指摘が相次ぎ、組織は紛糾。サラ・ダニウス会長とフロステンソン氏を初め、幹部が複数辞任した。

このため現在の会員は11人に減り、新規会員を投票で迎え入れるために必要な定足数12人が確保できない。

スウェーデン・アカデミーの会員は終身制で、厳密には辞任できないが、運営や議決への参加を拒否することはできる。残る会員11人のうち、ケルスティン・エクマン氏は1989年以来、活動を停止している。同氏は、「悪魔の詩」を書いた英作家サルマン・ラシュディに対するイランの殺人命令について、アカデミーが非難しなかったことに抗議している。

同アカデミーを後援するスウェーデンのカール16世グスタフ国王は、会員の正式辞任を可能にするため、アカデミー規則を変更する意向を示している。

性的暴力を告発する動きとしてハリウッドから世界中に広まった「#Me Too」運動が、今回のスウェーデン・アカデミーの判断に影響した可能性もある。今の混乱状態のアカデミーに選ばれても、受賞者は賞を受けとるか難しい立場に立たされたとも言われている。