2010年2月23日15時26分
強盗殺人事件での裁判員裁判の初公判が開かれる鳥取地裁の法廷=23日午前、鳥取市、代表撮影
強盗殺人事件の裁判員裁判の傍聴券を求める人たち=23日午前、鳥取市の鳥取地裁、新井義顕撮影
鳥取県米子市で税理士ら2人を殺害し、口座から約1200万円を引き出したとして、強盗殺人など六つの罪に問われた影山博司被告(55)の裁判員裁判が23日、鳥取地裁で始まった。被告は、罪状認否で殺害は認めたものの、「強盗目的で殺害したというのは事実と違います」と述べ、強盗目的を否認した。
被害者が複数に上る強盗殺人事件の裁判員裁判は初めてで、審理は26日まで4日間ある。強盗殺人罪の法定刑は死刑または無期懲役で、検察側が26日に同裁判で初めて死刑を求刑する可能性がある。判決は3月2日。
22日の選任手続きで選ばれた男性4人、女性2人の裁判員が、裁判官3人とともに初公判に臨んだ。スーツにネクタイ姿で出廷した影山被告は、罪状認否で殺害された2人の名前を挙げ、「取り返しのつかないことをしたという思いでいっぱい」と謝罪。さらに「裁判の結果をしっかり受け止めたい」と述べた。
起訴内容は、影山被告が昨年2月、自ら勤めていた会計事務所の経営者で税理士の石谷英夫さん(当時82)と、同居する大森政子さん(当時74)を強盗目的で首を絞めるなどして殺害したうえ、石谷さんのキャッシュカードなどを奪い、1210万円を引き出したとするもの。
検察側は冒頭陳述で、会計事務所の経理担当だった影山被告が、事務所の資金繰りのために個人資金をつぎ込み借金をふくらませたと主張。大型モニターで借金の増減のグラフなどを示しながら、石谷さんへの長年の恨みを晴らし、預金を引き出すために殺害を決意した、と指摘。強盗目的だったと強調した。
一方、弁護側は、強盗目的はなかったと主張した。影山被告が石谷さんから給料を全額支給されていなかったことや、日常的に叱責(しっせき)され、私的な用事の手伝いを度々強いられていたことなどの事情を指摘。殺害行為は「もう我慢できない」と精神的に追いつめられ、石谷さんら2人との関係を解消しようと思い詰めた結果であると述べた。
初公判には、事件の被害者が被告に質問をしたり、独自に求刑したりできる「被害者参加制度」を利用して大森さんの息子が出席した。