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#892
2023年12月3日

映画「窓ぎわのトットちゃん」

【番組司会】山口豊(テレビ朝日アナウンサー)
      八木麻紗子(テレビ朝日アナウンサー)
【ナレーター】田中萌(テレビ朝日アナウンサー)
【出演】八鍬新之介(監督・脚本)
【VTR】黒柳徹子
1981年、第二次世界大戦が終わる少し前の激動の時代を背景に、黒柳徹子さんの幼少期を自伝的に描いた「窓ぎわのトットちゃん」。
世界的ベストセラー作品がアニメーションで初の映画化!

日本のアニメ界のトップクリエイターたちが集結。
監督は映画「ドラえもん」を幾度となく手掛けてきた八鍬新之介さん。
声優陣も豪華。
役所広司さん、小栗旬さん、杏さん、滝沢カレンさん。

公開直前!監督に見どころや、舞台裏などを伺いました。

〈ストーリー〉
落ち着きがないことを理由に小学校を退学になったトットちゃん。
新しく通うことになったトモエ学園は、電車が教室という一風変わった学校でした。
そこで出会う仲間やユニークな教育。
トットちゃんの愉快な日常を通して見えてくる、日々のささやかな幸せ、個性の豊さ、恩師からの教え、家族・友人への深い愛情。



<映画化するきっかけ>
2016年に企画したんですけれども、その年はシリアの内戦で、化学兵器によって子どもが犠牲になったり、障害者施設で殺傷事件があったり暗い事件が結構あったんですね。
その時にちょうど自分に子どもが生まれて。
この子たちが大人になった時に安心して暮らせる社会になっているだろうか…と不安になりまして。
アニメーションを通して少しでも明るい社会にしていけないかなと
思って映画の原作となる作品を探したんです。

映画を製作している間に、ロシアがウクライナに侵攻して
今イスラエルとパレスチナの問題も再燃していて。
何かこう期せずしてもう一度平和について考えていただけるきっかけになる映画になるといいなと思っています。

戦争も製作のきっかけとなる大きな要素だったんですけれども
もう一つは例えば障害を持っている方への差別、あるいは子どもへの虐待や教育。
そういった複合的に社会が抱えている問題が「窓ぎわのトットちゃん」の中に全て含まれているような気がして、すごくハードルとしては高いんですけれど、それをこう何か心に引っかかるようにまとめられれば作る意義があるのかなと思って原作に選びました。



<「窓ぎわのトットちゃん」との出会い>
映画「ドラえもん」の監督をしていたんですけど、ちょうどそれが終わって、何か活字から映像化したいと思って本屋さんに行って作品をいろいろ読んでいたんです。

児童文学のコーナーに行くと、魔法とか冒険みたいなファンタジー要素のあるものはたくさんあったんですが、どれにしたらいいのかな?と迷いながら読んでいるなかで「トットちゃん」に行き着いた感じです。

本を読んだ時、当時の日本の国際情勢とか、それが表に描写されているわけではないんですけれど、これを映像にした時にそれが全て立ち上がってくるんじゃないかなっていう予感があったんですね。
であれば小説から映像化する意義もあるのかなと思ってダメ元で企画しました。

<映画化の快諾>
------黒柳徹子さんはこれまで100人以上の方からあった
   映画化の話を断ってきたそうですが。

最初から信用していただいたわけでもないんですけれど、企画書を丁寧に作ってお渡しして。
企画書の段階では原作をどう2時間にまとめるかというところを中心に書かせていただいて、それに関しては恐らく御理解いただいたと思います。

その後、お話を聞いていただけるということになりまして、プロット(物語のあらすじをまとめたもの)から始まってキャラクターデザインの案を両方とも何度も何度もこう推敲しながら段々と信用していただいて、進めていきました。

OKを出していただくまで全部で10回ぐらいは通ったと思います。

<黒柳徹子のインタビュー>
黒柳:八鍬監督、いろいろどうもありがとうございました。
   もうじき公開だそうで、すごく楽しみにしております。
   大変長いものをよく作品にしてくださったなと思って、感動しております。
   大きな画面で拝見できると思うと嬉しくてワクワクしております。
   
Q作品を見ての感想
黒柳:いやぁ、大変だったと思います。
   アニメになって余計イメージが広がるところがあって面白かったです。

Q映画化を快諾した理由
黒柳:色々話をしている中で八鍬監督がデリケートな感じがしたので、この方だったら
任せられるなと思って、これまでずっと映画化を断ってきたんですけど、「お願いします」ってなりました。

Q打ち合わせで記憶に残ること
黒柳:トモエ学園の校門が木なんですけど、そこから校庭に入って行くと、講堂があって。
   そういう間取り図を書きました。
   私の家の間取り図も書いて渡したら、御殿のような家の絵が出来上がってきたので。
   「これは大きすぎます」って言ったと思いますw

(VTRを受けて)
すごく光栄ですし、びっくりしました。
デリケートって初めて言われました。
細かい。よく言うとデリケートなんだと思うんですけど、映画を作る時っていうのは
ィテールにこだわらないと大事なことがどんどん抜け落ちていってしまう
ので、
そういう細かい部分をきっと観て言ってくださったのかなと思います。



<ディテールのこだわり>
間取り図。それは徹子さんしかわからないことなので、間取り図を書いていただい
のはすごく役立ちました。

実家の間取り図やお庭にどういった植物が植わっていたとかも徹子さんに書いていた
だいたのですが、温室があったんですよ!
当時から温室があるのもびっくりですし、池もあったんです!
思わず徹子さんに「池あったんですか!?」て聞いてしまいました。

トモエ学園の配置図も書いてもらいました。
外観の写真自体は残っていたんですけど、中がどうなっているのかは
わからないのですごく参考になりました。

徹子さんの記憶の中の図面を書いていただいた後に、美術設定の矢内京子さん
(映画「あなたへ」映画「西の魔女が死んだ」などを担当)
に実際のセットをつくれるような精度で図面を書いていただきました。
自由が丘の駅などは、徹子さんの原作にある描写と東急鉄道からお借りした当時の写真を見ながら分析、再現しました。
矢内さんは普段実写の映画で美術を担当されていて、日本アカデミー賞も受賞されている方なんです。

やっぱりノンフィクションの作品なので、できるだけ嘘をつかずに当時の建築を再
現したい
なと思ってお願いしました。

美術設定と呼ばれるものを描いていただいて、これを見ながら絵コンテを描いたり、
アニメーターが原画を描いたりするんです。

この絵は昭和15年の自由が丘の駅なんですが、トットちゃんの物語の中で年数が経
過していくとその都度、それに応じた美術設定を作っていただいて。
時代とともに変化していきます。



<キャラクターのイメージ>
「トットちゃん」というと、「いわさきちひろさんの水彩画」を思い浮かべる方も多いんですけれど、長編アニメーションを作る上で全編水彩画というのはなかなか難しい部分があるんです。

できるだけその豊かさを失わずに表現するにはどうしたらいいかということで
キャラクターデザイナーの金子志津枝さん(映画「ドラえもん」映画「クレヨンしんちゃん」などを担当)と相談しまして、一つは質感。
ハイライトという体の片側に光を入れて境界線をフワッとぼかす。
塗り残されている部分があるような、水彩画の中で全てを克明に描ききらないような効果を出すいみでハイライトをいれました。
その分、もちろん色数は増えますし、大変なんですけど。

このチェックの柄のシャツなんかもう最悪でw
柄物はアニメーションでは厳禁なんですけれど、ただ、これも徹子さんがはっきりと覚えていらした服なのでできるだけ忠実に再現しました。

------徹子さんに見せたときの反応は?

「かわいい。」って。
気に入ってくれて良かったです

<トットちゃんの声優は小学1年生>
大野りりあなさんは、最初オーディションでスタジオに入ってきた時から、すごくハッキリしゃべる子でした。
トットちゃんと小林先生が一番最初に出会うシーンで、実際はトットちゃんの話を4時間先生が聞いたんですけれど、その話をしたら「それじゃ校長先生も大変だ」って校長先生の立場を気遣うちょっと視点が普通の子と違うなというのが第1印象でした。

演技しているのを聞いていて、セリフに聞こえないんですよね。 
彼女自身が声優に初挑戦で、テクニックに頼ってないことが、まず一つ大きいと思うんです。
それから彼女は脚本すべてを読み込んで文脈を理解しているんです。
他の人のセリフも全部入っていて、感情表現がすごく的確でこちらが求めているものをスッと出してくれる。
ただそれでいて、定まった演技ではなくちゃんと子どものゆらぎもあるのでもう本当にトットちゃん役としてはベストだったなと思います。