平成29年度

 

平成29年3月~6月 (月1回 全4回)

 

実業家の社会貢献とその理念
 

 

大倉精神文化研究所を創立した大倉邦彦は、紙問屋を経営する実業家でした。大倉は、自分は何のために生きているのか、何のためにお金を儲けるのか、儲けたお金をどのように使うべきかを真剣に考えました。そのたどり着いた答えが教育事業や精神文化事業でした。大倉は、これを天から与えられた自らの使命と考え、精神文化事業を通して、社会を良くしたいと考えました。

今日、海外企業からの影響で、企業のフィランソロピー(慈善活動、社会貢献活動)やメセナ(文化支援活動)などの必要性が叫ばれていますが、日本国内にも古くから神道、儒教、仏教等の教えから派生した社会貢献活動の考えがあり、江戸時代には石門心学に代表される町人道徳も形成されていました。

近代日本の実業家の中には、国内外の思想的背景を元に、様々な社会貢献活動を展開した人物が数多くあげられます。その中には、大倉のように会社経営と社会貢献活動を分けて考えた経営者と、会社経営そのものを社会貢献と考えた経営者がいました。

今回の大倉山講演会では、企業経営で成功しただけでなく、社会貢献活動においても活躍した実業家を取り上げ、それらの人々が、いかなる社会貢献を、どのような思想、理念に基づき実践したのかを学び、その上でそれらを学ぶことの今日的課題について考えることといたしました。

本年は、その第2年目であり、来年も継続する予定です。

 


 

第1回

 

御木本幸吉の二宮尊徳顕彰

 

講 師:飯森 富夫(報徳博物館学芸員)

 

御木本幸吉(みきもとこうきち)(1858~1954年)といえば、誰しもが「真珠王」という呼称を思い浮かべるのではないでしょうか。三重県英虞湾(あごわん)内で苦心の末、真円(しんえん)真珠の養殖に成功し、世界中にミキモト・パールを知らしめた実業家として有名です。

ところで、神奈川県小田原市栢山(かやま)に二宮尊徳(1787~1856年)の生家が現存していることをご存知の方も多いでしょう。その生家と敷地が今のように整備されるきかっけを作った人物こそ御木本幸吉なのです。志摩の海で真珠の養殖に努力した御木本が、主に北関東で農村復興に努めた尊徳の遺跡の整備に携わった理由を近代の歴史とからめて、追ってみたいと思います。

 

日  時:平成29年3月18日(土) 14時~15時30分 (開場は13時40分)

会 場:大倉山記念館ホール(東急東横線大倉山駅下車、徒歩7分)
定  員:80名(入場無料、予約なし、当日先着順) ※定員を超えた場合はご入場頂けません。

 

 

第2回

 

江戸時代の商人に見る企業の社会貢献活動の源流

 

講 師:小山 嚴也(関東学院大学教授)

 

「1990年はフィランソロピー(社会貢献活動)元年である」と言われることがあります。日本企業の対米進出に伴って、アメリカにおける企業の社会貢献活動の在り様が我が国に紹介されたことがその理由です。

それ故に、日本企業はそれまで社会貢献活動を行っていなかったような誤解も生じています。しかし、我が国のビジネスと社会貢献活動の歴史は室町時代後期から江戸時代に台頭した商人たちの活動に、その源流を求めることができます。

大坂商人や近江商人、甲州商人などが行なった社会事業、文化芸術支援活動などを例に、アメリカと日本の「社会貢献活動」の概念の違いについて明らかにしていきたいと思います。

 

日 時平成29年4月15日(土) 14時~15時30分 (開場は13時40分)

会 場:大倉山記念館ホール(東急東横線大倉山駅下車、徒歩7分)
定  員:80名(入場無料、予約なし、当日先着順) ※定員を超えた場合はご入場頂けません。

 

 

第3回 

 

「雪印」と「森永」の創業者-キリスト教社会貢献論-

 

講 師:峯岸 英雄(当財団客員研究員)

 

馴染みの深い企業である「雪印」創業者、黒澤酉蔵(くろさわとりぞう)(1885~1982年)と、「森永」創業者、森永太一郎(もりながたいちろう)(1865~1937年)は、共に苦難の青春時代、修業時代をキリスト教によって救われました。二人はその「感謝」を具象化するために、幾多の社会貢献の事績を残しました。

文化や教養を含め、大正期の日本はデンマークから大きな影響を受けていました。講演会では、「クリスチャン実業家」の活動背景として、農業教育を軸とした大正期のデンマーク国民高等学校の影響などを探りながら、その軌跡を辿ります。

 

日 時:平成29年5月20日(土) 14時~15時30分 (開場は13時40分)

会 場:大倉山記念館 ホール(東急東横線大倉山駅下車、徒歩7分)
定  員:80名(入場無料、予約なし、当日先着順) ※定員を超えた場合はご入場頂けません。

 

 

第4回(6月)

 

グンゼ・クラボウ・カネボウの経営者

-明治期企業家の経営思想にみる報徳思想とキリスト教的価値観の融合-

 

講 師:長谷川 直哉(法政大学教授)


郡是製糸(グンゼ)の波多野鶴吉、倉敷紡績(クラボウ)の大原孫三郎、鐘淵紡績(カネボウ)の武藤山治は、近代日本を代表する経営者で、経営する会社を大企業に成長させると共に、社会貢献活動でも顕著な実績を残しました。この3者の経営思想の基盤となった報徳思想とキリスト教的価値観の共通点・相違点を俯瞰し、彼らの思想的背景が経営行動にどのように具現化されたのかを明らかにします。

さらに、彼らの経営行動が現代的な視点に [例えば、CSR(Corporate Social Responsibilty:企業の社会的責任)やCSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)]から、どのように評価されるのかを検討します。

 

日 時:平成29年6月17日(土) 14時~15時30分 (開場は13時40分)

会 場:大倉山記念館 ホール(東急東横線大倉山駅下車、徒歩7分)
定  員:80名(入場無料、予約なし、当日先着順) ※定員を超えた場合はご入場頂けません。

 

平成30年も「実業家の社会貢献とその理念」を総合テーマに連続講演会を開催しています。