第37回
フェブラリーステークスのゲートが開いた。
芝コース上のスタート地点からダートコースに入ったときには
ワイドファラオが体半分ほど抜け出していた。が、すぐ内の
アルクトスが、鞍上の
田辺裕信に促されて並びかけ、そのまま並走して馬群を引っ張る格好になった。
「自分の馬のほうがスタートは速いので、逃げる形も頭にはありました。
ワイドファラオと一緒に行く形になったのは、下げて後ろにハマるのが嫌だったからです。最後は少し甘くなりましたが、この馬としては、勝ちに行く競馬をした結果です」と田辺。
1馬身半ほど離れた3番手は
タイムフライヤー。逃げると見られていた
武豊の
インティは、その外の4番手になった。
「今日はらしくなかった。返し馬では唸っていたんですけどね。初めて走らなかった。走りの
バランスもよくなかった」と武。
クリストフ・ルメールの
モズアスコットは、そこから3馬身ほど後ろ。3コーナーに入ったときには中団の内につけていた。
「前走の
根岸ステークスは初めてのダートだったので、安全に乗って、大外から伸びました。今回はダートが2戦目なので、馬の間で競馬ができると思いました。内枠にチャンスのある馬たちがいたので、(簡単には下がってこないだろうからと)内を走りました」とルメール。
先頭の
アルクトスと
ワイドファラオが併せたまま直線へ。
ラスト400m地点で、
アルクトスが抜け出しをはかる。やや下がった
ワイドファラオの外から
タイムフライヤーが伸びてくる。
インティはこれらの3馬身ほど後ろに置かれ、伸びずにいる。その内から
モズアスコットが並ぶ間もなくかわし、
タイムフライヤーの外に持ち出した。そして、ラスト200m地点で力強く抜け出し、2着を2馬身半突き放してフィニッシュ。
JRA史上5頭目の芝・ダートGI制覇の偉業を達成した。
「3、4コーナーで馬がちょっとだけ頭を上げた。狭くなって馬が怖がりました。それでも、直線ではすごくいい脚を使った。速さはすごかった。びっくりしました」とルメールは笑顔を見せた。
一方の
インティは、武が「無事ならいいんですけど」と心配するほど伸びず、14着に終わった。
対照的な王者の交代劇となってしまった。
「
根岸ステークスから
モズアスコットは新しい馬になりました」というルメールの言葉が印象的だった。
次走は
オーストラリアの
ドンカスターマイルに向かうとのこと。
矢作芳人調教師は言う。
「今日は自信があっただけに緊張しました。芝・ダートを問わず、本格的な二刀流としてこの馬を育てていきたいと思います」
(文:島田明宏)