本報告ではHZSM-5によるヘキサデカンの接触分解反応に及ぼすバナジウム, ニッケルおよびナトリウムの影響を考察した。
Fig. 1に示すように, バナジウムの沈着によるHZSM-5の
クラッキング
活性への影響は見られず, 一方
クラッキング
生成物分布は変化している。
TPDの結果は, HZSM-5に2種類の酸点が存在することを示唆しており (強酸点と弱酸点), これらはそれぞれ高温と低温の脱離ピークに対応する (
Fig. 2)。バナジウムの沈着によって弱酸点の数は増加し, 強酸点の変化は少ない。またバナジウム沈着後のHZSM-5 (V-HZSM-5) 活性はHZSM-5に近い。
833Kで40~60wt%のN2-水蒸気混合雰囲気での水熱処理によって, V-HZSM-5の活性は低下し (
Fig. 1), 明らかにこれは水熱処理によってもたらされた格子からのアルミニウム除去に関係がある。TPDの結果も, 水熱処理の後, HZSM-5とV-HZSM-5両者の強酸点数が明らかに低下したことを示している (格子からのアルミニウム除去に関係がある) (
Figs. 1, 3)。
ニッケルの沈着は
クラッキング
生成物の分布に影響するばかりでなく, 水熱処理後のNi-HZSM-5の活性に変化をもたらしている (
Fig. 4)。さらに, Ni-HZSM-5の脱水素活性はニッケル沈着量とともに明らかに増加している (
Fig. 5)。ニッケルの沈着レベルが10,000ppmの時, H
2の生成率はHZSM-5の場合より3倍高い。
バナジウム沈着の代わりに0.4wt%のナトリウムをHZSM-5に沈着させても,
クラッキング
活性は低下しない(
Table 1)。しかし, ナトリウムとバナジウムを一緒に沈着した場合,
クラッキング
活性は明らかに低下している。
バナジウムとニッケルの共沈着と同じように, ナトリウムのみの沈着は
クラッキング
生成物の分布に影響を及ぼす (
Fig. 6)。しかし, ナトリウムとバナジウム共存の場合, 生成物の分布の変化はナトリウム, バナジウム単独の場合より大きく, また水熱処理後, 生成物分布はさらに大きく変化している。
以上から, HZSM-5に沈着したナトリウムとバナジウムは協同作用により触媒の活性と選択性に影響することが分かった。
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