神里達博の「月刊安心新聞+」

 中古車販売大手「ビッグモーター(東京都港区)」が、自動車保険の保険金を不正請求していた問題が連日、報じられている。このことはどのような経緯で表面化したのだろうか。実は話は1年以上前にさかのぼる。

 損害保険業界は保険に関する犯罪を防ぐため、各地の都道府県警と連携して「損害保険防犯対策協議会」という組織を設置している。複数の報道を総合すると、2022年3月ごろ、ある地方の「協議会」に、ビッグモーターの内情を知る人から「過剰請求がある」との告発があったという。

 これを受け、ビッグモーターと特に取引が多かった、損害保険ジャパン、三井住友海上火災保険、東京海上日動火災保険の3社が調べたところ、複数の不正請求が見つかったのだ。そこで損保3社は22年6月、同社に実態調査の実施を申し入れた。

 ビッグモーターは内部調査を行って3社に報告したが、損保側は客観性・透明性などの点で不十分と判断し、利害関係のない第三者委員会による調査を求めた。当初、同社は内部調査にこだわったようだが、途中で方針を転換、23年1月に元名古屋高検検事長の青沼隆之弁護士を委員長とする特別調査委員会を設置し、より徹底した調査が開始されたのだ。

 そして先月、同委員会から同社に報告書が提出されたわけだが、その内容は実に驚くべきものだった。わざと車に損傷を与え、余計な修理をして保険金を請求するといった手口に、日本中がショックを受けたのである。ここに来て、国土交通省や金融庁も実態解明に乗り出すとしている。

 ちなみにこの問題については、経済誌の「東洋経済」や自動車雑誌の「ニューモデルマガジンX」が、22年から粘り強く追及している。両誌のこれまでの努力に、読者の一人として、敬意を表したい。

 さて、私がこの事件のことを知ってすぐに連想したのは、「レモン市場」のことだ。「レモン」とはアメリカ英語で「欠陥車」を意味する。

 一般に中古車の市場では、買い…

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