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高2自殺 「募集中止」広がる困惑

 大阪市立桜宮(さくらのみや)高校の2年男子生徒(17)が部顧問から体罰を受けた翌日に自殺した問題を巡り、橋下市長が同高体育系2科の募集中止を市教委に求めたことに対し、「無関係の受験生を巻き込むのはおかしい」などの抗議が相次いでいる。だが、橋下市長は17日も持論を曲げず、市教委に拒否されれば、自らが握る予算執行権で対抗すると表明。教育現場の困惑がますます広がっている。

大半が反対

 市教委によると、橋下市長が今春入試での募集中止の意向を表明した15日以降、メールや電話は113件にのぼり、うち95件が反対意見。「受験生には罪がない」「子どもの夢を摘むのか」など、受験生の保護者とみられる声が多数あるという。市のホームページなどにも反対意見を中心に200件近くが寄せられた。

 17日の記者会見では、受験生らに影響が及ぶ点に質問が集中。橋下市長は「(桜宮高は)子供を迎えられる体制ではない。受験生がかわいそうといったことよりはるかに深刻な事態」「(今春入試は)あきらめてもらう」などと述べ、「(それでも反対なら)選挙で僕を落とす手段が与えられている」と話した。

顧問給料出さぬ

 さらに、橋下市長は、市教委が2科の募集中止を拒否した場合、対抗措置として「予算執行権をきちんと行使する」と述べ、市立高の今年度の入試関連予算の残り約130万円を支出しない可能性に言及した。

 合わせて要求している、桜宮高の全教員約70人の異動についても、記者会見で「最低限、体育会系のクラブ活動顧問の入れ替えが必要だ。春に顧問が残っているようなら、体育教師分の人件費を出さない」と述べ、人事刷新を迫った。市教委によると、同高で運動部に関わる教員は56人を数え、人件費は年間約3億9000万円にのぼるという。

 また橋下市長は、「大阪市立高校には、危機管理対応能力がない」と突き放し、大阪都構想で「2015年度」としてきた市立高全校の大阪府への移管時期を前倒しする考えも示した。

受験生へ影響

 市長の強硬姿勢に、受験生を預かる中学の現場は戸惑う。市立中学の校長でつくる校長会は17日午前、「生徒、保護者に不安と動揺を与える。影響は非常に大きい」として、2科の募集実施を求める要望書を市教委に提出した。

 だが、こうした動きについても、橋下市長は会見で「事の重大さがわかっていない。教育者失格。そういう校長はいりません。公募でどんどん替えていく」と、ばっさり。受験生の声をくみ取ったものでは、との記者の質問にも、「一番重要なのは亡くなった生徒のこと。(受験生は)生きてるだけで丸もうけ。またチャンスはある」と反論した。

 桜宮高体育科の受験志望生がいるという市立中学の校長は「(志望生徒は)引退後も部活で練習したり、放課後も残って勉強したりして頑張っている。募集中止が決まったら、どうすればいいのか。体罰への意識を変える方法は他にもあるはず」と話す。別の中学校長も「体育科と普通科では学びたいことが違う。今から志望校を変えるには時間がなく、子どもの負担になるのは間違いない」と批判した。

2013年1月18日  読売新聞)
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