「中継ぎ投手」松本総務相 3人が3カ月で閣内復帰 窮状の岸田政権【解説委員室から】
自民党の最大派閥・安倍派の裏金疑惑で、岸田文雄首相は事実上更迭した同派4閣僚の後任に、いずれも閣僚経験者を充てた。このうちの3人は、今年8月の内閣改造で閣外に去っており、わずか3カ月での再入閣。松本剛明総務相に至っては、政治資金問題で昨年11月に辞任した寺田稔元総務相の後任として後始末を任されたばかりの再登板で、さながら野球の「中継ぎ投手」。後任人事から、岸田政権の窮状が浮かび上がる。(時事通信解説委員長 高橋正光) 【主な経歴】松本 剛明(まつもと たけあき)氏 ◇3度目入閣も記念写真なし 更迭されたのは、松野博一官房長官、西村康稔経済産業相、宮下一郎農林水産相、鈴木淳司総務相。松野、西村両氏は、安倍派の実力者「5人衆」の一人で、派閥の実務を取り仕切る事務総長経験者でもある。後任は順に、岸田派の林芳正、無派閥の斎藤健、森山派の坂本哲志、麻生派の松本の各氏。新人を充てなかったのは、後任に不祥事が発覚して辞任という事態になれば、政権の致命傷になりかねないとの判断からとみられる。 このうち、松本氏は旧民主党から無所属を経て自民党に移籍した衆院当選8回のベテラン。旧民主党の菅直人内閣で外相を務めており、今回で3回目の入閣となった。実は、外相就任も、外国人からの献金受領で前原誠司氏が引責辞任したことに伴うもの。3回連続での緊急登板だ。 衆院選後の新内閣発足時や、全員に辞表を提出させて閣僚を入れ替える内閣改造時には、首相と全閣僚らが首相公邸の階段で、記念写真を撮るのが恒例。閣僚経験者のほぼ全員が、議員会館の事務所に、入閣時の記念写真を飾ってある。 しかし、松本氏は3回とも緊急登板のため、この写真はなし。3回入閣しながら、首相と全閣僚による記念写真がないのは、自民党の歴史で前例がないとみられる。まさにギネスものだ。 自民党関係者によると、麻生太郎副総裁は2021年10月の衆院選後の第2次岸田内閣発足に際し、幹事長に異動する茂木敏充外相(当時)の後任に松本氏を推薦。しかし、首相は自身の派閥の林氏を起用した経緯がある。麻生氏の意見が通っていれば、松本氏は外相として、記念写真に納まっていた。 そもそも、辞任する閣僚の後任の人選に当たっては、辞める経緯や後任の条件、政権の現状などさまざまな観点から首相が判断する。3回連続で辞任閣僚の後釜に声が掛かった松本氏は、奇遇と言えよう。