将棋電王戦第3局で人間側が1勝を返す 豊島七段が「序盤、中盤、終盤、隙が無い」指し回しでYSSに圧勝
駒たちが躍動する豊島の将棋を皆さんに見せたよね。
5人のプロ棋士が将棋ソフトと戦う「第3回将棋電王戦」。第3局の豊島将之七段対YSSの対局が、大阪あべのハルカスで行われました。
ここまでコンピュータ側の2連勝と、人間側にとって後がない状況。ここで登場する豊島七段は、「将来の名人は確実」とまで言われる若手のホープ。また、第2局に登場した佐藤紳哉六段の「豊島? 強いよね。序盤、中盤、終盤、隙が無いと思うよ」というプロレス風のあおりは、将棋界随一のネタフレーズとしてファンにはお馴染みとなっています。対局前の予想でも最も人間側の勝つ可能性が高いと期待されており、これからの将棋界を背負う存在として絶対に負けられない1局。豊島七段も「勝負にこだわる」と強い意気込みを見せていました。
激しい展開にも動じない「ノータイム豊島」
戦型は将棋の中でも特に激しい変化の多い「横歩取り」に。後手のYSSは序盤早々、相手の攻めを呼び込むさらに激しい展開へと誘導します。しかし、この手はプロ間では先手に有利な変化が多いとされている一着。恐れず切り合いに踏み込んだ豊島七段が序盤からリードを得る展開となりました。
一手一手に細かく時間を使うYSSに対し、序盤からノータイムで指し手を進める豊島七段。勝負所に持ち時間を温存するこの作戦は、昨年の「電王戦リベンジマッチ」で船江五段も採用しており、中終盤を得意とするコンピュータ相手には有効とされている作戦です。一手のミスが命取りとなる横歩取りで早指しを続ける豊島七段に、ニコ生でも「無慈悲なノータイム」「ノータイム豊島かっけえw」といったコメントが。
ゲストの小藪さんが大活躍
ニコ生の大判解説ではお笑い芸人の小籔千豊さんが登場。小藪さんは先日のニコ生「最強将棋芸人VS電王ponanza」で飛車角落ちのハンデ付きながら電王Ponanzaにも勝った実力者。「相手が池乃めだかさんやったら……」と控え目ながらプロがうなる指し手を次々と指摘し、解説の野月浩貴七段を驚かせます。また、現地で慣れないリポーター役を務める香川愛生女流王将には「最初からそれ言うって決めてたでしょ? 決め打ちだめですよ! 将棋と一緒やトークは!」とツッコミの強手を披露して会場を大いに盛り上げました。
将棋ロボが「電王手ちゃん」としてまさかの美少女化
現地からの中継には、代指しを務める「電王手くん」を開発したデンソーチームのメンバーが登場。ユーザーが電王手くんを擬人化した「電王手ちゃん」のイラストが紹介されると、「メカ部分が詳細に描かれているのが素晴らしい」と開発者ならではの視点で喜びを表現していました。
YSSに痛恨の悪手
一度有利を築いても、そこから粘り強さを発揮するのがコンピュータ将棋。しかし、豊島七段がミスの無い指し回しでリードを広げると、ついにYSSに痛恨の悪手が出ます。その手は貴重な持ち駒の金を働きの悪い場所に打ち込んでしまう1四金。これは谷川浩司会長が「コンピュータのこんな手は久しぶりに見ました」と思わず固まってしまうほどはっきりとした悪手。ここで形勢は完全に豊島七段必勝となります。
将棋は最後にミスをしたほうが負けるゲーム。絶対に負けられないというプレッシャーから緩手を指して負けてしまうということは、人間の将棋ではよくあることです。しかし、豊島七段は終盤もノータイム指しを連発し、YSSを圧倒。まさしく序盤、中盤、終盤、隙の無い完璧な指し回しでプロ棋士の強さを見せつけ、83手でついにYSSの投了となりました。
アンチコンピュータ戦略は「ハメ手」か?
本局や第2回電王戦で人間側唯一の勝利を挙げた阿部光瑠四段のように、コンピュータの癖を見抜いてその隙を突く指し方を「ハメ手ではないか」と見るファンもいます。ですが、それはプロ棋士や将棋ソフトをあまりにも軽んじた見方ではないかというのが個人的な意見。豊島七段が「1000局とはいかないが3ケタは練習対局をした」「何度も逆転負けをする中で、序盤の長い将棋や中盤を省略する激しい将棋に勝ち目があると思った」と語るように、プロがそれだけの準備をしてやっと勝てるのが今の将棋ソフトのレベル。開催前には、事前研究ありのルールを「棋士の宿題発表会になる」と予想する声もありましたが、せいぜい難関大学入試の「傾向と対策」を立てられるくらいのもので、優勢を築いてからミスをせずしっかり勝ちにつなげた豊島七段の実力を評価すべきではないかと思います。
対局後の会見で、豊島七段は「YSSとの練習を重ねる中で自分の将棋が変わっていく実感があった。山下さんに感謝しています」とコメント。山下さんも「評価値が一度もプラスにならなかったのが印象的。負けたのは残念だが、少しでも豊島さんの役に立てたのなら嬉しい」と最後まで紳士的な態度を見せており、対局前にいざこざのあった前局を忘れさせるような爽やかな最後となりました。勝負という形以外に、将棋ソフトとプロ棋士のこうした良い相互関係が見られるのも電王戦の魅力の1つかもしれません。
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