7.公開収録(2003/05/30)
笑いの臨場感 茶の間に
 
 「あたり前田のクラッカー〜」

 冒頭、藤田まことの口から飛び出したセリフに、客席からどっと笑いがわき起こった。

 藤田、白木みのるふんするおとぼけコンビが主人公の、お笑い番組「てなもんや三度笠」(朝日放送)の公開収録。毎週金曜の午後零時十五分から三十分、ビジネス街のど真ん中にあるABCホールは、パンや牛乳を片手にした若いサラリーマンやOL約七百人で埋めつくされた。

 昼休みの解放感も手伝って、客席には笑いがうず巻き、会場は熱気に満ちあふれた。

 「ごっつい反応。押し寄せてくる笑いに僕ら自身、乗せられた」と、藤田が約四十年前を振り返る。

 同番組を手掛けたのは澤田隆治(70)=東京都渋谷区。一九六一年、澤田は、同じお笑い番組の「スチャラカ社員」をプロデュースしていた。しかし、これが視聴率で裏番組のコメディーに後れを取る。向こうはスタジオ撮りではなく、公開収録。翌年、満を持して制作したのが大ヒット作「てなもんや三度笠」だった。

 「劇場からの中継やと役者のギャグとお客さんの笑いが同時に入る」と澤田。観客の姿は一切映さず、舞台とともに観客の笑いだけをブラウン管から届けたのだった。

 以後、関西には続々と公開番組が誕生する。「ヤングおー!おー!」(毎日放送)は、客席の若者がステージに上がり、桂三枝や笑福亭仁鶴らとゲームなどを繰り広げた。当時、司会をしていた同局元アナウンサー、斎藤努(60)がいう。

 「ステージと客席が一緒になって番組を盛り上げ、その臨場感がじかにお茶の間に伝わった」

 公開番組の流れは、今「笑っていいとも」(フジテレビ)や「明石家電視台」(毎日放送)などに受け継がれる。

 客席をも巻き込み、ライブ感を増幅させる仕掛けは、お笑いバラエティーに欠かせないものとなった。(敬称略)

 
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