大手PCメーカーの富士通クライアントコンピューティング(FCCL)が、同社製PCであるFMVシリーズの2021年冬モデルを発表しました。受注開始はWeb直販モデルが本日から、店頭向けモデルが10月7日からとなります。

最大の特徴は、もちろんOSに新バージョンとなるWindows 11を搭載した点。合わせてプリインストールされるMicrosoft Officeも、Home & Business 2021(H&B 2021)へと刷新されています。

またハードウェア面では、新シリーズとして14インチ画面搭載ノートPC『LIFEBOOK MH』シリーズ(上写真)が加わる点が特徴。

さらに世界最軽量モバイルノートである『LIFEBOOK UH』シリーズは、(予告されている新設計のモデルではありませんが)Web直販モデルとして『FMV Zero LIFEBOOK WU4/F3』が加わります。

こちらは、キートップの印刷を黒文字として、本体デザインを黒一色のイメージに仕上げ、さらにプリインスールアプリを大幅に減らすなど、ヘビーユーザー好みに仕上げたバリエーション機。FCCL側は“ハイリテラシーユーザ向けモデル”と謳います。

またソフトウェア面でも、リモートワークに向けたマイクのノイズキャンセリング機能を強化した『AIノイズキャンセリング』、PCのWebカメラとしてスマホを使える『スマホカメラ転送機能』などを新規に搭載。

さらにDLNA対応のテレビやビデオレコーダーと接続し、録画した番組や放送中のテレビ番組を見られる『TV視聴アプリ』も加わります。


▲MHシリーズのキーボード面。基本的なキー配列などはUHシリーズと共通となる模様です

注目となる新規シリーズの『LIFEBOOK MH』は、昨今密かにアツい市場となりつつある、“14インチ画面の家庭内モバイル”にフォーカスしたモデル。FCCL側は「家族みんなにちょうどいい14型ノート」とアピールします。

提供時期は12月上旬予定、価格はオープンとなっています。

シリーズは2グレードから構成されており、ディスプレイパネルは両機共通でフルHD解像度液晶。

上位モデル『MH75/F3』はCPUにインテルの『Core i7-1165G7』を搭載し、RAMは8GB、ストレージは512GBのPCI Express接続SSDという布陣。

廉価モデルの『MH55/F3』は、CPUにAMDの6コア12スレッド対応『Ryzen 5 5500U』を搭載し、RAMは8GB、ストレージは256GB SSDという構成です。

天板裏のFCCLメーカーロゴなども、CHシリーズと同じく左端に小さく入るだけ。シンプルさを指向したデザインです

また本体デザインは、2020年末に発表された13.3インチモデル『LIFEBOOK CH』の流れを引き継ぐシンプル指向。本体カラーとなる新色『ダーククロム』と合わせ、ライバルメーカーとはひと味違った、昨今のFCCLらしい仕上げが印象的です。


▲634gからと、ライバルを引き離す軽量さがポイントのUHシリーズ。一部モデルに用意された鮮烈な『ガーネットレッド』カラーなど、外観は現行モデルを引き継ぎます

そしてもう一つの主役とも呼べるのが、世界最軽量の13.3インチモバイルノートPC『LIFEBOOK UH』シリーズ。

本体設計や外装デザインなどといった基本こそ現行モデルを引き継ぎますが(つまり、1月に予告された次世代設計のモデルではありません)、いくつかのモデルの中身はかなりの強化となっているためです。

提供開始時期は10月7日から(Ryzenモデル『UH75』のみは12月中旬)、価格はオープンです。

とくに大きなトピックは、冒頭で紹介した新路線モデル『FMV Zero』(WU4/F3)。提供開始時期は11月中旬予定、価格は現段階では未公開です。

このFMV Zeroは、これまでは良くも悪くも“初心者に優しいパソコン”路線だったFCCLがヘビーユーザー向けにチューニングした、Engadget読者も気になるであろうモデル。

外観の点でも、良くも悪くも印象が強かったキートップの白印字を捨て、Web直販モデルで好評だったかな表記なしとするなど、シンプルさをさらに追求。ライバルメーカーの“黒一色モデル”的な、すっきりした外観となっています。

▲黒系『ピクトブラック』なUHシリーズの天板側。ロゴは一般的な中央部位置です

また、店頭向け最軽量・最上位モデルである『UH-X/F3』は、RAM容量が16GBに増大(現行モデルでは、軽量化の関係もあり8GBでした)。CPUがインテルの『Core i7-1165G7』である点や、SSDが512GBといった点は変わりませんが、このクラスでRAMの8GBと16GBの違いは、性能の余裕度に対してかなりの差となります。

さらにヘビーユーザーからの注目度が高そうなのは、廉価モデル『UH75/F3』でしょう。その理由は、CPUが8コア16スレッド処理対応のAMD製『Ryzen 7 5700U』となったため。

現行モデルは同じくAMDの『Ryzen 7 4700U』を搭載していましたが、こちらは8コア8スレッド対応。つまりモデル名ではわかりにくいですが、昨今のCPU性能では決して影響の小さくないスレッド数が倍増したことで、高負荷時の性能がさらに増しているというわけです。

現行のTDP(発熱と消費電力の目安となる値)15W版Ryzenとしては、CPUコアの世代がより新しい『Ryzen 7 5800U』もありますが、同時処理数は同じ8コア16スレッドのため、性能の違いは意外と大きくありません。


▲ホームノートPC『AHシリーズ』。同社全体の主力となる機種でもあります

また、FMVシリーズ全体で見た場合、今期の特徴と呼べるのが、主力製品にAMD製CPUであるRyzenシリーズを採用する“Ryzenシフト”が進んでいる点。

実はFCCLは、2020年冬モデルの時点でかなりRyzenの採用に積極的だったのですが、ライバルメーカーでも目立ってきた今期はさらに積極的となっています。

▲17.3インチ画面のNHシリーズ。2グレードの両方がRyzen搭載となる、積極的なRyzenシフトモデルです

17.3インチ液晶モデル『LIFEBOOK NHシリーズ』は、2グレード展開。上位でCPUが『Ryzen 7 5800U』に、下位でも同5700Uと強化された点が特徴です。

またそれ以上に目立つのが、15.6インチの主力ホームノートPC『LIFEBOOK AHシリーズ』。今期は4グレード展開ですが、店頭での人気が高い中位2グレードが『Ryzen 7 5700U』と『Ryzen 3 5300U』搭載モデルに。なお、最上位ではインテルのTiger Lake Refresh系の最上位『Core i7-1195G7』を搭載します。

▲画面一体型デスクトップのFHシリーズでも、主力のミドル級モデルはRyzen搭載に

加えて画面一体型デスクトップ『ESPRIMO FHシリーズ』でも、6グレード展開のうち3グレード、しかも店頭で人気の高いミドルクラスがRyzen系となっており、ノートPCに留まらないRyzenシフトを敷いています。


このように今期のFMVシリーズは、主力シリーズの世代交代こそないものの、その中身はわりと積極的な変更を行っているという、実は隠れた注目点の多い布陣。

現在クラウドファンディング中のモバイルキーボード『LIFEBOOK UH Keyboard』をはじめとして、同社製PC40周年の事業展開を広げているFCCLですが、今期のFMVはそうした展開を裏で支える定礎となるモデルと呼べそうです。