近年、無人機の需要は、軍用をはじめ、災害対策、産業、農業分野などへと急速に拡大している。背景には、敵の支配地域上空での危険な任務、化学物質や放射能などによる汚染地域での任務、長時間の監視・偵察などの単調な任務といった、有人には向かない、3D(Dangerous、Dirty、Dull)と呼ばれる任務を遂行できることに加え、コクピットなど搭乗員用のスペースや装備などが不要なこと、操縦者の安全性の確保が必要ないことや小型化が可能なことなどから、有人機に比べ費用対効果に優れるなどの特性を有していることがあるとみられる。
軍用の無人機については、無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)が標的、偵察などの用途で活用され、その後、各種任務に対応する多目的用や、攻撃用などに発展してきた。近年では、ステルス化や艦載機型、超音速飛行が行えるものなどが開発されている。さらに無人機は、陸上無人機(UGV:Unmanned Ground Vehicle)、海洋無人機(UMV:Unmanned Maritime Vehicle)、海上無人機(USV:Unmanned Surface Vehicle)および無人潜水艇(UUV:Unmanned Undersea Vehicle)などが陸上や海洋にも活動の場を進出させ、無人航空機と同じ用途で開発・運用が行われていることに加え、地雷や機雷の処理、原子力災害への対応1など地勢や用途に応じた開発・運用が行われている。また、従来の無人機は、既存の航空機や車両など有人用のプラットフォームを基に開発が行われてきたが、近年では、昆虫を模したものや、人型の二足歩行、動物型の四足歩行などの近未来的なプラットフォームの開発も報じられている。今後は、ICTをはじめとした各種技術の発展により、人間が操作するものから完全な自律行動型に推移していく可能性があるとみられる2。それは自律型致死兵器システム(LAWS:Lethal Autonomous Weapons System)とよばれ3、目標決定から攻撃まで自動で行われる。近い将来、人工知能開発が進めば実戦配備される可能性も指摘されている。
このような無人機の需要が拡大する中、無人航空機が他国で飛行することによる主権侵害や、攻撃の巻き添えによる被害、無人航空機パイロットの精神的疲労などの運用上の問題点が、国連や無人航空機の運用国で指摘されており、各種の対策が検討されている。
一方で、無人機の有用性は、その特性から各国でより幅広く認識され、有人機に代わり開発・導入が推進されていくものとみられる。
二足歩行型無人機(Atlas Robot image courtesy of Boston Dynamics)