イラン国営テレビにハッカー攻撃、最高指導者への抗議メッセージ表示
画像提供, IRINN
イラン国営テレビで8日夜、ニュース放送中に最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイ師に抗議する内容の画面に切り替わる出来事があった。ハッカー攻撃を受けたとみられる。
テレビ画面には白い仮面が映し出され、続いてハメネイ師が炎に囲まれる画面に切り替わった。放送が中断されたのは数秒間で、すぐにスタジオ画面に切り替わった。
攻撃を仕掛けたグループは「アダラト・アリ」（アリの正義）と名乗っている。
イランでは先月、頭髪を覆うよう女性に義務づけた法律に違反したとしてマサ・アミニさん（22）が道徳警察に逮捕され、その後に死亡した。それをきっかけに、抗議デモが拡大。抗議者と治安部隊の衝突で少なくとも3人が撃たれて死亡している。
今回のハッキングは、アミニさんの死がイラン全土で前例のない抗議を巻き起こしている最中に起きた。
イランの法医学機関は7日、アミニさんの死因は低酸素脳症による多臓器不全で、遺族や抗議者が主張するような頭部への打撃によるものではないと発表した。
異例の反抗
国営テレビのニュースは8日午後6時ごろ、白い仮面が映し出されて中断された。続いてハメネイ師とアミニさん、抗議活動で死亡した女性3人の画像が表示された。ハメネイ師の頭には、銃の標的のような赤い丸が表示されていた。
キャプションには「我々と共に立ち上がれ」、「この国の若者の血がお前の両手から、したたり落ちている」などと書かれていた。
イラン国内でほぼ全権を握るハメネイ師に対して、このような反抗が明示されるのはきわめて異例。しかし、アミニさんの死後、多くの人が公然と異議を唱えるようになった。
相次ぐ抗議と抗議者への暴力
また8日には、エブラヒム・ライシ大統領が訪問した大学の女子生徒たちが「失せろ」と声を上げているように見える動画がソーシャルメディア上に浮上した。
北西部の都市サナンダジでは同日、抗議者への支持を示すために車のクラクションを鳴らした男性が、車内で撃たれるなど、2人が死亡した。インターネット上で共有された動画には、北東部マシュハドで首を撃たれた女性が意識を失って地面に横たわる様子が映っていた。
イラン国営通信IRNAは警官の話として、サナンダジで男性1人が「反革命主義者」に殺害されたと伝えた。
複数の人権団体によると、9月17日に抗議行動が始まって以降、150人以上が死亡している。
いくつかの都市では、抗議者への支持を示すため店舗を閉める動きもある。
テヘラン市内のバザールでは交番に火を放ち、治安部隊を追い払う抗議者もいた。
イランでは従来、バザールの商人たちは政府支持者だとみなされてきた。そのバザールでも反政府抗議が及んだことが注目されている。
