Mary Kay Bergman
メアリ・ケイ・バーグマン(1961-1999)



キャラクターを演じることの最大の幸せは

(自分という)キャラクターから抜け出して、公然と名無しになれること。


メアリ・ケイ・バーグマン、1998


■目次

Mary Kay Bergman(別名:Shannen Cassidy)の略歴
  「サウスパーク」以前 | 「サウスパーク」との出会い | 永眠の日
CNNによる訃報
サウスパークでの担当キャラクター
自殺防止のための活動(メアリ・ケイ・バーグマン記念基金)
サウスパークによる追悼
メアリ・ケイが語る「私の好きなキャラクター」

補足
リンク




■Mary Kay Bergman(別名:Shannen Cassidy)の略歴
South Park ScriptoriumWackyvoices.com等より要約)


「サウスパーク」以前

1961年6月5日、ロサンゼルス生まれ。小学校から高校までを首席で卒業した後、UCLAで舞台芸術を専攻。大学3年の時、自主演劇の配役を得たことをきっかけに中退。タレント事務所に籍を置きながら、演技コーチのハリー・マストロジョージに師事。のち、カット・レーマンのもとで一流のボイストレーニングを受ける。

14年間の女優人生のうち、12年間を声優としての仕事に捧げた。1989年、憧れのアドリアーナ・カセロッティの後を継ぎ、ディズニーの「白雪姫」の声に抜擢され、この地位を生涯保った。他にもディズニー映画での出演は数多い。


「サウスパーク」との出会い

1996年夏、「ザ・スピリット・オブ・クリスマス」の世界に基づくパイロットフィルム「サウスパーク」制作にあたり、女声の配役が検討された。「シンプソンズ」でバート役を演じているナンシー・カートライトは、フィルムを見るなり憮然として出ていった。二番目に入ってきたのが「白雪姫」、メアリ・ケイ・バーグマンであった。

1997年、コメディ・セントラルで「サウスパーク」の本放映が始まる。その第1回から「シャネン・キャシディ」の変名で出演していた。ほとんど全ての女性キャラクターを一人で担当。名前を伏せることで自分を解放し、再発見したいという思いがあったという。

「サウスパーク」は関係者の予想をはるかに超える人気を獲得し、彼女にもファンレターが殺到するようになったため、周囲は「視聴者に真実を知らせる時が来た」と判断。第2シーズンの途中からは、よく知られた「メアリ・ケイ・バーグマン」の名でクレジットされるようになった。

1999年、ミュージカル映画「サウスパーク・無修正映画版」で、彼女は16種類の異なる声を演じた。9種類の声で歌った楽曲「ブレイム・カナダ」はアカデミー賞(オスカー)にノミネートされ、シーラ・ブロフロフスキー役としてはアニー賞候補となった。が、オスカー賞のセレモニーで彼女が歌う姿を見ることはできなかった。


永眠の日

年々、理由のない不安・恐怖感に悩まされるようになっていたという(重度の鬱病であったとする報道が多いが、夫は「全般性不安障害(GAD)」であったと考えている)。しかし周囲の人には明るく社交的にふるまっており、医師でさえ彼女の内面の変調に気づくことはできなかった。

1999年11月11日、ラジオでディズニーランド45周年記念のトークショーを行って帰宅。夕方、夫のディーノと友人のジョン・ベルに宛てて2通のメモを残し、ピストルで頭を撃って永眠した。書き置きには、「もはや恐怖感をどうすることもできない」とあった。

彼女のウェブサイトはしばらくの間ゲストブックとなり、多くの人がその業績をしのんだ。現在は元のサイトが、生前のままに復元されている。




■CNNによる訃報
CNN.comより全文)


声優 メアリ・ケイ・バーグマンさん死去

〜「サウスパーク」のほとんどの女性を演じる〜

1999年11月17日 Kristin Lemmerman


アニメ番組「サウスパーク」の多くのキャラクターの声を担当していた女優、メアリ・ケイ・バーグマンさんが死去した。享年38歳。

バーグマンさんの代理人、ロバート・ハリソン氏によると、彼女は木曜日の夜に自ら命を絶った。今週末に追悼式が予定されている。

「声で人格を作りあげる」という厳しい分野において、バーグマンさんはおそらく、「サウスパーク」シリーズにおける多彩な表現で、最もよく知られている。彼女が担当したキャラクターは、Mrs.カートマン、ウェンディ・テスタバーガー、スタンの母、ケニーの母、マクダニエルズ市長、Ms.クラブツリー、ヴィクトリア校長、シェリー・マーシュ、ゴーレム看護婦。以上はTVシリーズだ。また、今年公開の映画「サウスパーク・無修正映画版(South Park: Bigger, Longer & Uncut)」では、「ブレイム・カナダ」のほぼ全パートを歌った。

1989年以降、バーグマンさんはディズニー「白雪姫」の公式声優の座を維持していた。14年間の業績の中で、「シャネン・キャシディ」の名で表示されることもあったが、例えば今夏に公開された「スターウォーズ・エピソード1:ファントム・メナス」や、1996年のディズニー映画「ノートルダム」でのカジモドの母親役、また、今年批評家に喝采された映画「アイアン・ジャイアント」にも彼女が声をあてた。

また、400本以上のコマーシャルでも彼女の声が使われた。例えば「Mrs.バタワースのシロップ・全国キャンペーン」ではナレーションを担当。ケロッグのシリアル食品「フルートループス」、アメリカンエキスプレス、ホンダ等々のCMで声の出演を手がけた。

バーグマンさんは今年、アニメーションにおける功績に与えられる第27回アニー賞にノミネートされていた。ノミネート対象となったのは「サウスパーク・無修正映画版」の、シーラ・ブロフロフスキー役。アニメ声優の分野で名前が挙がっていた他の候補者は、Minnie Driverさん、Ralph Fiennesさん、Eli Marenthalさん、Suzanne Pleshetteさん。


「彼女は本当に“クラブの一員”でした」

バーグマンさんは、夫のディーノ・アンドレート氏と、実母パトリシア・マクゴーワンさんと暮らしていた。バーグマンさんの代理人ハリソン氏によると、彼女は鬱病の兆候を見せることが全くなかったため、彼女の死去は家族にとっても驚きであったという。「二重の悲劇です。家族は、自分たちにはしてやれることが何もなかったと感じているのです」

訃報は、「サウスパーク系」サイトのbeef-cake.comをはじめ、いくつかのウェブサイトでも報じられた。また、月曜にはバーグマンさんの所属事務所であるSBV社が、「デイリー・バラエティ」紙に1ページ全面の追悼広告を載せた。所属事務所のリタ・ヴェナリさんによると、ディズニーなど、バーグマンさんと関係のある企業は、今週それぞれの形で哀悼を表明する予定という。

ヴェナリさんは、長年SBV社の看板であったバーグマンさんを亡くして淋しい、とも述べた。「素晴らしい人でした。彼女のような人は他に誰もいません。彼女にはとても特別な何かがありました。大きな茶色の瞳、赤い巻き毛…彼女のような存在は、彼女一人だけだったのです」

「アニメーションの世界は、技術者やタレント(声優)を含めた大きなひとつのグループです。彼女はその一員でした。本当にクラブのメンバーだったんです。あの若さで、すでに彼女は仲間として受け入れられていたのです」

「サウスパーク」での活躍がすぐに思い出されるバーグマンさんだが、ヴェナリさんによると、バーグマンさん自身は自分の一番重要な役を1つに決めることができすにいたという。「彼女にとっては、自分の仕事すべてが大切だったのです。それが彼女の一番の良いところでした。すべてが彼女にとって大切だったのです」

バーグマンさんの死去が、現在制作が進められている「サウスパーク」第3シーズンのエピソードにどのような影響を与えるかは、まだ不明である。




■サウスパークでの担当キャラクター
(1997年8月13日〜1999年12月1日放映分)

シャロン(キャロル)・マーシュ
シェリー・マーシュ
シーラ・ブロフロフスキー
リアーン(ディーアン)・カートマン
ミセス・マコーミック
ミセス・トゥイーク
クレイグの母
ミセス・コッツワルズ&レベッカ
ヴィクトリア校長
グットリー(看護婦)
ゴーラム(保健の先生)
クラブツリーさん
用務員さん
ウェンディ・テスタバーガー
ジョーダン(クラスメイト)
マクダニエルズ市長
サリー・ストラザース
フリーダばあさん
その他 多数

[詳細・後継声優など ※このリンク先には誤りが含まれている可能性があります。]



■自殺防止のための活動

彼女の没後、自殺を防ぐ活動のために、「メアリ・ケイ・バーグマン記念基金」が創設されました。彼女の夫は、「特に俳優・女優は、身近な人にも決して内面を見せまいとしがちだ。誰にも知られず密かに苦しんでいる人たちを助けなければならない」と、いくつかのインタビューで話しています。

寄付等の宛先:
THE MARY KAY BERGMAN MEMORIAL FUND
c/o The Suicide Prevention Center
4760 Sepulveda Blvd.
Culver City, CA 90230 USA
phone: 310 391-1253

受取人名義: 
Suicide Prevention Center--in memory of Mary Kay Bergman

※日本からはMoney Orderで送金できます。
 郵便局で「アメリカへ住所あて送金」と言って用紙をもらい、説明通りに書き、あとは郵便局まかせでOKです。



■サウスパークによる追悼

彼女の逝去から6日後(1999年11月17日)に放映された新作 #311 Starvin' Marvin In Space(宇宙戦士! 腹ぺこマーヴィン)では、冒頭に黒バック・白文字で



In Memory
Mary Kay Bergman




と表示され、通常のオープニングテーマは流れなかったそうです。
この作品には、レギュラーの女性キャラは一人も出てきません。

1999年12月1日に放映された #315 Mr. Hankey's Christmas Classics(Mr.ハンキーのクリスマスDEショー)の最終曲「Have Yourself a Merry Little Christmas」では、メアリ・ケイが担当してきた女性キャラクターたちの映像が流れ、続いて彼女たちが(シェリーもクラブツリーさんも)、全員が笑顔で一堂に会し、シャロンがスタンを抱きしめたりするシーンがありました。この曲自体は彼女の逝去より前にCDに収録されたものと思われます(CDの発売は1999年11月23日)が、映像によって追悼の意味が込められたのでしょう。この作品が、サウスパークにおける彼女の遺作となりました。彼女がCDのために収録した歌声(シーラ、シェリー)が使われたからです。

シーズン3の後半は、映画版の公開やクリスマスアルバムの発売もあってか、エピソード番号の順と実際の放映日に比較的大きな変更があったようです。



■メアリ・ケイが語る「私の好きなキャラクター」
Wackyvoices.comより)


私が好きなキャラクターについて。好きな理由は様々です。
どういう点が好きなのかをお話しましょう。

まず、Ms.カートマン。この人は、こてこての1950年代風お母さんですね。私のこよなく愛する声種なんですが、「古くさい」とか「甘すぎる」とかで、今時のコマーシャルでは使えないよと、これまでいつも言われてきました。でも、ここ(サウスパーク)では、彼女は完璧で、スウィートで、いかにもクッキーを焼きそうなママであると同時に、ふたなりでヤリマン。この意外な組み合わせがすごく可笑しいと思います。

ウェンディも好きなキャラですね。彼女は知的でスウィートなんですが、なんとも予測不能な子です。例えば、代理教師に嫉妬するエピソードでは、その代理教師に死をもたらすべく手を回しました。ふだんは番組の「良心」の役回りで、カートマンの悪ガキぶりとの鋭いコントラストが笑えるわけです。そうそう、前にマットとトレイがどうやってエリックを作り上げたかを話していた時に聞いたんですけど、彼はアーキー・バンカーの子供バージョンなんだそうですよ!

ブロフロフスキー夫人(カイルのママ)は究極のおせっかい。押しつけがましくて横柄で独断的。私とは全然違うでしょ! マコーミック夫人(ケニーのママ)の声をいろいろいじり回して考えたのも楽しかった。最終的には、ビル・クリントンの女バージョンみたいな声に落ちついたんです。

スタンのお姉さんのシェリー・マーシュは、実は悪党。演じるのがいつも楽しいです。シェリーは自己中心的で、実に意地悪。いつも弟を殴ったり怖がらせたりしてます。さらに、歯列矯正器をつけているので、妙なノイズを立てる楽しみもありますね。



■補足(この項は個人的な感想です。)

以上調べていて、メアリ・ケイの心情が少しわかった気がします。

「サウスパーク」での神技が賛嘆され、ファンに慕われる存在になった一方で、彼女は「名誉ある」ディズニー声優でもありました。白雪姫のオフィシャルボイスを10年もの間勤め、他の作品にも出ています。

でも、ディズニーのオフィシャルボイスという仕事は、実際はイベントや遊園地、CM、音声玩具用の吹き込みなどがメインだったのです。映画として残る白雪姫は、先代のカセロッティさんの声(1937年)。1993年の「白雪姫」デジタル修復の際にメアリ・ケイが録音した1カットの声は結局削られ、他のディズニー映画では(白雪姫の声ということが制約となってか)ほとんどが端役、動物の鳴き声などだったのです。「サウスパーク」以前の彼女は、数秒から数分間の声の中に生きる存在でした。

「サウスパーク」は全く違いました。女性キャラ全部が彼女の声。赤ちゃんから老人、果てはクリトリスのような超常的存在(?)まで、声優としての表現の幅を、これ以上ないほど縦横に、限界まで発揮できる場です。しかも彼女の場合は、マット&トレイのような加工をせずに、生の発声がそのまま使われるケースが多かったようです。内容も子供をあやすようなお約束アニメではなく、大人の鑑賞にたえるコメディです。表現者として本当に幸せな、得がたい場だったことでしょう。

しかし、「白雪姫」が、別の仕事では「fuck」や「shit」を連発しているのを、はたして関係者全員が快く思っていたのでしょうか? しかも、その「汚れ系」のほうでアカデミー賞の話が出るほどになった場合…。

事務所の人のコメントの最後の部分が、そのあたりを暗示しているような気がして仕方ありません。



■リンク

Wackyvoices.com メアリ・ケイ・バーグマン オフィシャルサイト
South Park Scriptorium サウスパーク・スクリプトリアム内のメアリ・ケイ記念ページ








Oct 11, 2004 / Oct 13-17, 2004

Special Thanks: 2ちゃんねるサウスパークスレ
※誤訳指摘歓迎です。でも見てないこともありますゴメン。_| ̄|○
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