Kickstarter リワード企画「Q&A配信」レポート

Kickstarterのリワードアイテムの一つである「Q&A配信」が先日行われましたので、その様子をお届けいたします。参加した開発チームのメンバーは、ディレクター/プロデューサーの高橋宏典、ディレクター/ゲームデザイナーの渡邉哲也、リードアニメーターの福山敦子、リードエンバイロメントアーティストの草場美智子、サウンドデザイナーの花岡拓也、テクニカルアーティストのアレクシス・ジャスミン・ブロードヘッド(海外配信のみ)、3Dアーティストのタバリ・キミア(海外配信のみ)となりました。

WEB会議システムを利用しての配信となりましたが、新型コロナウィルス感染予防の為、開発チームのメンバーも自宅から参加するという状況でした。

メンバーの自己紹介から始まり、バッカーさんのゲームの進行状況を確認してネタバレがどこまで許されるのかを確認しつつ、2019年12月に行われたファンミーティングで出た質問も交えながら進行しました。途中で、メンバーの子供やネコが映りこむなど、リモートワーク定番のアクシデントがありつつも無事、終了いたしました。

以下、質疑応答の一部をご紹介いたします。

※ネタバレ要素を含みますので、ご注意ください。

■サウンドについて

—–カティアが遊ぶ木馬の音は花岡さんの自宅で録音したとのことでしたが?

花岡 素材集にいい感じの音が無かったのと、ちょうど同じような大きさの木馬が家にあったので、録音した方が早いと思って。

福山 あれは確か、最初は床の材質が木ということで録音してきたのに、実は絨毯だったから録り直したという・・・ごめんなさい。

草場 絨毯に置いたのは私です。ごめんなさい(笑)

花岡 (笑) まぁ、やっぱり物の材質によって出てくる音が全然違うのと、木に比べて絨毯だと揺れが収まるのが早いので、録り直しましたね。

福山 さすがプロですね! 私は木馬のアニメーションを付けたけど、木の床と絨毯との違いをちゃんと出せたかな?ってちょっと反省しました。

■死に様について

—–『Last Labyrinth』様々な死に様がありますが、ボツになったものを教えてください。

渡邉 死にざまも沢山考えましたが、結構ボツになりましたね。尖ったものが眉間に刺さるとか。あれは何でボツだったんでしたっけ?

高橋 刺さるのは単純に視線誘導が難しいのと、基本的に人体損壊とか直接刺さるみたいな表現はあんまり見せたくないなと思って。失敗すると隠し矢が飛んできて刺さって死ぬみたいなのとかはボツになりましたね。その他に、アイディアであったのは、液体が入ったプールみたいなのに落ちて溶けて骨になるとか。

渡邉 それは完全に人体損壊ですよね。

高橋 そうそう(笑) あと、水の表現がVRだとちょっと処理負荷が重いというのがあって、薬物の液体とか厳しいし、半透明処理もあるし・・・ということで。あとは、犬に食い殺されるとか。初期の案出ししていたときに、犬がいっぱいでてきて食べられるというのもあったような。

草場 あまり生き物の気配を感じさせたくないから、その辺は結構ボツになったと思うんですけど、なぜか蛇が採用されましたね。

高橋 生き物は別にNGじゃないんだけどね、虫もいるし。

草場 今、私の中では「虫」が生きものというカテゴリーに入ってなかった(笑)

渡邉 ただ、確かに生き物は処理が重くなるということもありますよね。

——案出しの段階ではいろいろな死に様があったんですね。

草場 そうですね。案出しは開発チーム全員でやりましたね。

——採用された率が高いのは誰だったんですか?

草場 基本、あんまり採用されなかった(笑)ただ、やっぱりレベルデザイナーからでたのが一番採用されたかな。

渡邉 雨森さん、朴さんですかね。

草場 そうですね。あの二人が出したものが堅実というか、他は割と夢見がち(笑)かなと。

福山 案出しには段階があって、企画段階で募集したものと、開発に入ってしばらく経ってから募集したものと、開発中盤にレベルデザイナーだけに募集したものがありましたね。

草場 最初はみんなで案出しという感じです。割とフリーダムにだしてもらって。

—–最初は実現できないやつがいっぱいあったんですね。

草場 そうですね。液体系が最初の方でNGになったんですけど、最後にでてきた溶岩のネタとか液体に入らないの?とは思いましたね(笑)

高橋 (笑) 半透明じゃないというのが大きいですね。今、昔の案出し用のデータを見ているんですけど、「回転のこぎり」とか「小型のネズミマシーンが爆発する」とか「機関銃が起動して撃たれて死ぬ」とか。あと、結構あったのが、からくり人形みたいなやつが動いてその人に斬られるとか撃たれるみたいなのですね。あとは幽霊に刺されて死亡とか・・・(笑)

渡邉 それはネタだしに困ってる感がありますね。とりあえず数だけ出すみたいな。

高橋 まず、数をだすのは第一ですからね(笑)

■背景について

——背景を作るときにいつも心がけていることってありますか?

草場 『Last Labyrinth』だけじゃなくて心がけているのは「悪目立ちをしない」ようにということですね。なるべく自然に見えるようにということです。

ただ、それだけだと、「ふ~ん」となってしまうので、ここは目立たせたい、ここに気づいて欲しい、というのをさりげなく入れるようにしているつもりです。それが結果的にうまくいっているかどうかは別ですけど。(笑) 

なので、苦労して作ったところが逆にプレイヤーさんには見えないということが多いですね。まぁ、それが目立たないように作っているつもりなので仕方ないんですが。

高橋 そもそも『Last Labyrinth』の背景が、存在しない罠だったり、レベル班のほうからこんな感じとざっくりな指示しか無い中で、リアリティのある部屋を作るのに背景班は苦労したと思うんですけど、その辺の話も聞きたいですね。

草場 そうですね。とはいえ、「こんな感じ」みたいなものはありましたよ。『Last Labyrinth』の背景は割とリアリティのあるものなので、実際に存在するものの資料をいろいろと探してきて、「こんな感じでいこうか」と決めて、背景班のアーティストの人たちで、それを作り変えるという感じでした。

でも、高橋からは結構ダメ出しはされましたね。

—–背景で大変というか、苦労をしたものはありますか?

草場 パイプオルガンと通称呼んでいるアレです。最初にレベル班からでてきたのは、本当にただのボックスを組み合わせたもので、その状態でテストプレイをデザイナー含めて全員でやって、「この方向性で作ろうか」となった後に、実際のオブジェクトのモデリングとかデザイン起こしをするんですけど、「こんなもん無いし・・・」みたいな感じで・・・

高橋 存在しないものですもんね

草場 最初からパイプオルガン的なイメージがあったけど、そもそもボタンを押している時点で、オルガンでもないし、どういうオブジェクトなんだ?みたいな。途中で、コンセプト的にはリズムをとるというもので、ちょっと違うものをデザイン起こししたんですけど、それもボツになり、今の形にようやく収まったけど、あれは結構大変でしたね。

■『Last Labyrinth』のオススメポイントについて

——ファンミーティングでもお聞きしたんですが、ご自分が担当したところでお気に入りや見逃さないで欲しいポイントはどこですか?

福山 う~ん。これはファンミーティングでは話すと長くなると思って言わなかったんですが、「全部」ですね。一か所とかじゃないんです。全体を通してのキャラクターなんで。一個のモーションでキャラクターを表現しようとはそもそも思ってないので、全部の動きですね。コードも含めて。単体のアニメーションじゃなくて、プログラムされたAIも含めて、全部を組み合わせてのキャラクターを見て欲しいです。

草場 ファンミーティングでは床のシミといったんですが、さっき心がけていることでお答えしたことと通じるのですが、床のシミとか物凄い地味で、「それ、誰がまじまじと見る?」という感じなんですけど、館のちょっとした不気味さとか、ここは何なんだろう?どこなんだろう?と感じる演出の味付けになればとやっていました。
床の部屋の四隅のところに、血だまりみたいなものがある部屋があって、良く見ると何となくテラっと光っているから、もしかしてこれは血なのかな?ぐらいの感じなんですけど。
私はもともと、なるべく自然に見えるようにしつつも、部屋の隅っことかにちょっとしたものを仕込むのが好きで、「あ、気づきましたね?」って感じで、気づかれなくても自分でやってニヤニヤするという・・・
床にこだわったのは、部屋に移動したら部屋をマジマジとみると思うんですけど、拘束されている中で、自分に近いところが床なので、シミとかで演出してみました。

福山 床良かったですよね。部屋の存在感がでましたよね。

渡邉 そういう細かいところをちゃんとやってるから、ギミックなんかはこの世の中には無いものだけど、リアリティが出るというのはあると思います。

高橋 結構部屋ごとに違ったりしてて、ペンキ塗りの床が剥げてるとかバリエーションが結構あるんですよね。

草場 そうなんです!こんなの気づかないだろうなと思いながら、つくってました。床がというだけでなくて、埃がたまったような演出だとか、ちょっとしたところも気を使ってました。自分がやっててある意味楽しいというか(笑)。割と派手なものは他のアーティストにまかせたりして、私はそういった地味なところをやったりしてました。

花岡 サウンド目線で床についてお話すると、足音って、歩く人と床の材質の組み合わせで全部違っていて、おんなじ足音を何度も何度も鳴らすと機械っぽくなっちゃうので、それを自然にするために、履いているものと床材質との組み合わせで、それぞれ10パターンぐらいの音がランダムでなるようにするという機構を実装してもらったりしましたね。VRとしてのリアリティを増すために必要だったと思っています。
オススメとしては、効果音を作った手数が多かった「隠者の部屋」ですね。沢山の仕掛けがあるので、作った効果音も沢山あって、そこに気を付けて聞いていただけると嬉しいなというのと、反対に手数としてはそんなに多くないんですけど、「正義の部屋」と「教皇の部屋」ですね。音の構成要素としては物凄く音の数は少ないんですけど、生理的な嫌さ加減は自分の中でダントツなんで。もし、その部屋で失敗されていなかったら、失敗パターンを聞いて欲しいぐらい、嫌な音ができたかなと。
あとは、ステファニーさんのカティアの声が、最初はすごいそっけないセリフばっかりなんだけど、終盤になっていくほど、感情がどんどん込められていって、収録のときにオペレーションしながら、泣きそうになったシーンがいっぱいあったので、関係性が深まっていって、カティアの感情が爆発するところを気を付けて聞いていただけると嬉しいなと思います。

渡邉 『Last Labyrinth』の中で好きなところは、最初に仮面の男がでてくるところですね。電気をいつも通りつけたら、「ああっ!おったんかいっ!」みたいな感じの、あんなシンプルにドッとあせらせるっていうのが結構難しかったりすると思うんですけども、上手くいくと割と効果的なんだなと思ったんで、あのシーンが好きですね。

高橋 う~ん。崖ですかね。火曜サスペンス劇場・・・と良く書かれてますけど、火サスのイメージだったんで、合ってます(笑) 解放感があるけど、安心する解放感じゃないという意味合いもあって、崖にして。もちろん、「火サスじゃん!」みたいなツッコミが入るのも狙ってはいるんですけど(笑)。
ずっとすごい憂鬱な屋敷の中にいて、外にでて解放感はある一方で、何となく風もふいてるし、崖もエッジだし、あんまり安心できる感じが無いみたいな。そういうシチュエーションがいい具合に作れたかなと。崖のシーンは沢山ありますけど、崖全般割といい感じだなと思います。

■最後に

高橋 Kickstarterで支援を募るというのは我々としても、初めての試みだったんですけど、多くの方にご支援いただいて、世に出して、沢山の人に遊んでいただける、というところまで到達できました。
また今後もいろんなチャレンジしていくと思いますけど、『Last Labyrinth』ともども、引き続きご支援いただけるとありがたいです。今回は『Last Labyrinth』へのご支援本当にありがとうございました。
・・・・こんな緩い感じですけど、お楽しみいただけましたでしょうか。

—–グダグダの進行でごめんなさい!

高橋 Q&A配信自体が初めての試みで、しかも本当は開発チームは集まってやろうとしていたのに、急遽、各自の自宅からの配信になるという、イレギュラーもあったりしたので・・・でも、これだと一人一人に名前出てるからわかりやすいですよね。

福山 しかも自宅公開ですよね

渡邉 望まれてないですけどね(笑)

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