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【世界史の遺風】(91)ディズレーリ 「帝国主義者」の社会改革
2014.1.9 08:30
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□東大名誉教授 本村凌二
イギリス人の動物愛護精神は名高い。「カエルに注意!」という道路標識もあり、競走馬に当てる鞭(むち)の数すら制限されている。でも、歴史をさかのぼると、鎖につながれた熊に犬をけしかける熊攻めが楽しまれ、17世紀には見せ物としての闘犬もはじまっている。
猟犬のたけだけしさが好まれる半面、19世紀のビクトリア朝には愛らしさや優しさを求めてペット犬の飼育が上層社会に広がる。1835年の動物虐待禁止法以降、表向きには闘犬は消えた。だが、裏では下層民の娯楽として楽しまれたという。残酷で野蛮な見せ物に興じる下層階級を文明化すること。動物愛護運動には社会改革運動の一面もあった。
40年、アヘンの密貿易を厳禁した清帝国に対して、自由貿易の正義をかかげ開戦した大英帝国。開戦反対派の若く高潔なグラッドストーンは議会で「なるほど中国人には愚かしい大言壮語と高慢の習癖があり、それも度を越すほどです。でも、正義は異教徒にして半文明な野蛮人たる中国人側にあるのです」と反論した。これに同調して5歳年上のディズレーリも反対票を投じている。後に国際協調を旨とする政敵グラッドストーンらから帝国主義者の権化のように非難される人物だが、はたしてどうだろうか。
ディズレーリはユダヤ人の家系に生まれている。だが、富裕な文人の父がユダヤ教から英国国教会に改宗したので、13歳の少年もそれに従った。学校に通ったのは15歳までだが、その後は父の蔵書を読みふけっていたという。
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