河井夫妻所得報告出さず 衆参事務局「提出義務なし」

保坂知晃
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 2019年の参院選をめぐり、公職選挙法違反罪で一審有罪となり控訴した元法相の河井克行被告(58)=衆院議員を辞職=と、妻の案里氏(47)=同罪で有罪確定、参院議員を失職=は、いずれも20年分の所得等報告書を提出しなかった。国会議員資産等公開法が提出を義務づけているのは現職議員が前提のためとみられる。衆参両院事務局も、提出を求めていないとしている。

 30日の国会議員の所得公開で判明した。資産や所得などの公開を国会議員に義務付けた同法は議員がその地位を不正に利用して利益を得ないように国民が監視するため、1992年に定められた議員立法だ。所得については、国会議員(前年1年間を通して議員の職にあった者)に、前年分の所得等報告書を翌年4月1~30日に所属する議院の議長への提出を義務付けており、給与所得不動産所得などが公開される。

 衆院事務局は4月1日に辞職した克行元議員について、「1日の時点では提出義務はあったが、辞職後に提出を求める運用はしていない」とする。参院事務局は2月に失職した案里氏について「提出期間には国会議員ではなかったため、提出する義務がない」と説明。2人は昨年1年間は国会議員だったが、その所得はチェックできない。

 20年に2人に支払われた歳費は期末手当を含めて、それぞれ約1974万円に上る。歳費をめぐってはこの事件を機に、失職などした場合に歳費を返還できるようにする歳費法の改正が議論されたが、今国会での成立は見送られた。一方、克行元議員は逮捕後に支払われた歳費の相当額を、非営利団体に寄付する考えを公判で示した。(保坂知晃)

 「政治とカネ」の問題に詳しい上脇博之・神戸学院大教授(憲法学)の話 国会議員が地位を不当に利用して資産を形成したり、所得を得たりしていないかを国民の監視の下に置くことが国会議員資産等公開法の理念。河井夫妻は昨年1年間、現職だったのだから、提出義務があると解釈するべきではないか。しかしできないのなら、元職にも提出義務を課す法改正が必要だ。今のままでは、辞職すれば所得等報告書の提出を免れることになり、チェックの機会が失われてしまう。

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