2016.10.07 08:15

高知FD 駒田監督1年目の総括(上) “イズム”浸透で盛り返す

後期FDに加入した深江(左)。元NPB選手として他の選手の手本となっていた。右はザック=高知球場
後期FDに加入した深江(左)。元NPB選手として他の選手の手本となっていた。右はザック=高知球場
 高知ファイティングドッグス(FD)の2016年度シーズンが終わった。駒田徳広新監督の下、前期こそ最下位だったが、後期は2年ぶりの3位。首位愛媛とはゲーム差1.0で、2010年前期以来の貯金も手にした。「チーム全体で戦う」「自分を変える」をテーマに、確かな成長を遂げた選手もいる。今季の戦いぶりを数字を基に総括する。

 前後期計65試合で25勝30敗10分け(雨天中止の巨人3軍戦は引き分け扱い)。勝率、打率、防御率いずれも4チーム中最低だった(防御率は徳島と同じ)。

 FDは前期中盤まで9勝9敗4分け。優勝を争う順位につけていたが、その後8連敗。失点は少ないのに、得点を奪えず投打がかみ合わない試合が目に付いた。後期も開幕戦こそ白星だったが、5連敗などで借金は一時最大5に。「また定位置の最下位か」と思われた。

 が、ここから見事に盛り返した。最終戦までの5連勝は全て逆転。昨季は見られなかった「粘り」を発揮した。勝ち負けにかかわらず、ゲーム内容に満足する観客は多かったはずだ。

■元NPB手本に
 「1点を返せない野球なんて、僕の目指す野球じゃない」

 0―1で敗れた前期開幕戦。1安打に抑えられた打線を駒田監督が嘆いた。連敗中は好機に一本が出ず、何度もため息をついた。

 それもそのはず。チーム打率は2割3分。総得点91は4チーム中、最低で、2番目に少ない香川と20もの開きがあった。最も期待された河田が打率2割。今季加入した3割超えのザックがもしいなければ、もっと数字は低かったはずだ。

 ところが、後期のチーム打率は2割5分8厘。打線に厚みが増し、総得点は150に。101だった四死球は158、3割だった出塁率は3割5分に上昇した。

 その中心にいたのが、元オリックスの深江だ。

 深江は後期から加入のため規定打席に達していないが、打率3割8分6厘、出塁率4割5分を誇った。本人は「もう少しやれた」と悔しがるが、駒田監督は「打席での粘りやボールの見極め方、練習に取り組む姿勢はさすが」と絶賛していた。

 選手たちも、メンタルや技術面で深江に意見を求めていた。NPBレベルの同世代の選手がたった1人いるだけでチームは劇的に変わった。

■今季を象徴
 深江は後期のFDを大躍進させたが、今季“駒田カラー”を象徴しているのは宮下だろう。

 前期1割4分だった打率は後期3割9厘。2割5分9厘だった出塁率は3割9分4厘。試合を決める一打も多く、チームメートが「神ってる」と言うほどの活躍。元NPB冨田(香川)のフォークを逆方向へ安打し、同じく北方(愛媛)の149キロの直球を左翼スタンドへ運ぶ力を付けた。

 宮下は前期終了後、指揮官に「今のままなら秋にはクビ」と通告されていた。

 「それまでの自分を捨て」(宮下)、バットを極端に短く持つスタイルに変え、公式戦当日でも早朝に特打を繰り返した。すると、低めのボール球を徐々に見極められるようになってきた。「苦しかったけど、絶対乗り越えてやると思った」

 その覚悟が後期の数字を物語る。他にも、大城、中村らが相手投手に球数を多く投げさせるようになるなど、嫌がられる打者が出てきた。

 自分を変えろ―。指揮官は就任直後から口酸っぱく言い続けている。それを何人かでも実践でき始めていることは、来季への収穫であり、大きな希望でもある。

関連記事

もっと見る

カテゴリー: FDスポーツスポーツ

ページトップへ