イスラエル首相がホロコーストは「パレスチナ人のせい」 ドイツ首相は「いや我々の責任」と

Israeli Prime Minister Benjamin Netanyahu and German Chancellor Angela Merkel hold a joint news conference at the Chancellery in Berlin

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画像説明, ベルリンの独首相府で共同会見したイスラエルのネタニヤフ首相とメルケル独首相(21日)

イスラエルのネタニヤフ首相がホロコースト(ナチス・ドイツによるユダヤ人虐殺)は当時のパレスチナ人指導者のせいで起きたと発言したことに対して、ドイツのメルケル首相は21日、ナチスの責任だとドイツ人は「はっきり認識している」と反論した。

メルケル首相は、毎年恒例の首相会談のためにベルリンを訪れたネタニヤフ首相と会談後、共同会見し、「ショーア」(ホロコースト)がナチス・ドイツによるものだったという認識は今後も、学校などを通じて次の世代に引き継いでいかなくてはならないと述べ、「この問題について歴史認識を変える必要性を感じていない。われわれはドイツとして『ショーア』に対する自分たちの責任を受け入れている」と言明した。

ネタニヤフ首相も、「ホロコーストはヒットラーの責任だったと誰も否定してはならない」と発言した。

動画説明, メルケル独首相、ドイツはホロコーストの責任を受け入れていると

これに先立ちネタニヤフ首相は20日、エルサレムの世界シオニスト機構で、ナチス・ドイツのヒットラー総統はユダヤ人を欧州から追放しようとしていただけで、民族虐殺をヒットラーに提唱したのは当時のエルサレムのイスラム教宗教指導者ハジ・アミン・アル・フセイニ師だったと発言。「ドイツがユダヤ人を追放すればみんな(パレスチナに)来てしまう」と進言されヒットラーが「ではどうすれば?」と尋ねたところフセイニ師が「焼けばいい」と答えたのが、ホロコーストのきっかけとなったと首相は話していた。

動画説明, イスラエル首相がホロコーストは「パレスチナ人のせい」と
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ネタニヤフ氏の発言については、イスラエル国内でも歴史家や政治家の多くが非難した。

エルサレムにあるヤド・バシェム(ホロコースト記念館)の歴史専門家、ディナ・ポラト教授は地元紙に対して、「ユダヤ人を殺したり焼いてしまうべきだという発想をヒットラーに与えたのが(フセイニ師)だったとは言えない」と指摘した。

野党労働党のヘルツォーク党首はフェイスブックで、首相発言は「ホロコーストとナチズムを矮小化し(略)わが民族を襲った悲惨な災いへのヒットラーの役割を矮小化するものだ」と非難した。

パレスチナ解放機構(PLO)のエレカト事務総長は、「イスラエル政府の指導者が、隣人をあまりに憎むあまり、ユダヤ人600万人を殺した史上最大の極悪人さえ免罪してもかまわないという。歴史の上で悲しい日だ」と声明を発表した。

エルサレムやガザ地区では今月から、パレスチナ人とイスラエル人の間の暴力事件が相次ぎ、複数人が死亡している。

Haj Amin al-Husseini meets Adolf Hitler in Berlin in November 1941

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画像説明, ハジ・アミン・アル・フセイニ師とアドルフ・ヒットラー総統は1941年11月にベルリンで会談した

ハジ・アミン・アル・フセイニ師とは?

1974年に死亡したフセイニ師は、パレスチナ民族主義の指導者として、1920年代から1930年代にかけて英国委任統治領だったパレスチナで、ユダヤ人や英当局に対する武力闘争を主導した。

1937年に亡命したが、パレスチナ地域をユダヤ人国家とアラブ人国家に分断しようとする英国の計画に反対し続け、第2次世界大戦ではナチス・ドイツを支持した。

1941年11月にベルリンでヒットラー総統と会談。当時のドイツ報道によると、アラブ人国家樹立の支援表明をヒットラーに求めたという。

戦争犯罪の罪で追及されたが、ニュルンベルク裁判には出廷しなかった。

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イスラエルの国内報道は

  • エルサレム・ポスト紙は、ホロコースト博物館の主任歴史主任が首相発言を「厳しく批判」と報道。記事でポラト教授は、発言を撤回すべきと呼びかけている。
  • イェディオト・アハロノ紙はネタニヤフ氏の発言が「大いに非難」されていると報道。ヒットラーは確かにフセイニと会談したが、そのとき「最終的解決」はすでに始まっていたという複数の歴史家の指摘を引用している。
  • ハアレツ紙は、首相が「多方面から馬鹿にされた」として、首相発言を笑いの種にするオンライン・ユーザーが相次いだと報道。首相が「インターネットを壊した」と書いた。
  • タイムズ・オブ・イスラエル紙は、ホロコーストは自分たちの責任だとドイツが力説している部分を冒頭に出し、首相発言が「とことん否定された」と書いている。
  • オンライン時事サイト「+972マガジン」は、一般のイスラエル人やパレスチナ人は「そうそう簡単にネタニヤフ氏を許しはしない」と書き、首相を嘲笑するネット上の画像やコメントを集めて掲載した。