2018年6月4日 立ち上げ記者会見冒頭コメント(1) ー 宮台真司

2018年6月4日 立ち上げ記者会見冒頭コメント(1) ー 宮台真司

<2018年6月4日 オウム事件真相究明の会 立ち上げ記者会見にて>ー 本会あるいはこの事件の真相究明の裁判の問題点などについて

はい、宮台真司と申します。おはようございます。首都大学東京で社会学の教員をやっております。

95年にサリン事件の起こった直後に、関連する書籍を出して、オウム信者あるいは元信者などに取材をして、問題の重要さに気がついてそれ以降インターネット番組、マル激トーク・オン・デマンドなどですね、繰り返し事件については扱ってきている者です。

何故これだけの重大事件が一審だけで終結しているのかと言えば麻原本人の意思を確認できないということからですね、控訴趣意書が出せない。出せ、出せないということをめぐる齟齬から一審で終結してしまったということですね。

その経緯が示しているように、そもそも麻原彰晃、松本智津夫がどのような状態にあるのかということが控訴段階から既に問題になっていたということです。

加えてですね、そのようないわば門前払いに近いような形で裁判が終結させられてしまうということの問題を僕たちは考える必要があるだろうと思っています。
というのは、僕はこれだけの方々、マスメディアの方に集まって下さったことについては非常に、森さん方とも話していたのですが、感動・感激してます。

それは麻原を抹殺しろという世論、あるいはその世論の風を読んで基本的には一審だけで終結したということについて、まあ、ほとんどですね否定的なコメントを出してこなかったマスメディアの方々の中でもおそらく世代交代が生じたのだろう、あるいは僕はまあ、若い人たちを教える仕事をしていますが、麻原を抹殺しろというような意見はほとんど無いんですね。

むしろ若い人たちは、オウム事件から時間が経ったこともあるのか、親が入っているからあるいは友達が入っているからということでね、さまざまな新興宗教に入る人がどんどん増えている状況です。そういう状況があって、なぜ宗教的な帰依をしているはずの人が、あるいはしている人が殺人に、しかもですね沢山の人たちが手を染めたんだろうかということに、つまり、いわゆる真相に非常に強い興味を持っている、そういう若い人が実際増えているんですね。

まあ、いわゆるですね私利私欲に基づく犯罪、人殺し、あるいは、いわゆる誰から見ても脅迫だと分かるような手段による、そうした手段を用いた命令による人殺しと今回の事件は違っているんですね。だから学生達、若い人たちの興味もそこに集中しているわけです。

つまり、もしそうなのであれば、自分たちは宗教に帰依することによって、もしかすると人を殺す立場になるかもしれないという危惧がある、あり得るんですね。

つまり今の凶悪犯罪と違って、自分は攻撃性は無いと、人を憎んではいないと。あるいは、私利私欲にとらわれていないから人を殺さないといったような、構えが気休めにもならないという状況なんですね。そういう若い人・若い世代に対して実際どういうことが起こったのかということを述べ伝えていくということが非常に大事です。

もちろんですね、麻原は本当に人格障害を人格崩壊を遂げている可能性があり、裁判では何もしゃべれない可能性がありますが、裁判が二審、三審というふうに続けられる一つの意味は、いろんな証拠や証言が出され、議論が続き、人々がそれを忘れないで述べ伝えることができるというところにあります。

とりわけですね、裁判のプロセスでの忖度という言葉が話題になりました。いろんなところでですね、民間でも霞ヶ関でも永田町でも忖度が話題になっています。

しかしですね、こと宗教の教祖と教団幹部の関係に集中すると、注目すると単なる忖度ではありえないわけですね。例えばわかりやすい例で言うと麻原彰晃が意図的にアンカーを埋め込んで、教祖の言うことを忖度しなかった場合には何らかの強い不安が生じるようなセットアップをすることができるんですね。ニューロリングィスティックプログラミング・神経言語プログラミングといわれる手法です。こういった手法をもし用いている場合はですね、いわゆる普通の忖度とは違って、意図して忖度をしないことができないようにうまく信者たち、教団幹部たちをバインド・縛り付けていくことを意味したりするんですね。例えばそうしたことも自由に議論されなければならないし、これは宗教教団だけではなくてね、今申し上げたようなタイプの忖度というのは実はどこでもあり得るということですね。

自分たちはこの事件と元々無縁でいられない。私利私欲やですね、怒りによる殺人ではなくて宗教に帰依する者たちのあるいは宗教的な平等心をですね、むしろ育てようとしていたはずの人間たちの殺人であるということですね。なので僕たち年長の世代はですね、若い世代が今や昔とは違ってですね、もういちど冒頭にもどりますが、抹殺しろとか一刻も早く忘れたいというふうなメンタリティーを持っていない以上、彼らに述べ伝える責務があるように思っています。なので、真相を究明する会に参加をさせて、呼びかけ人のグループに参加をさせて頂いたということになります。