EU、ウクライナとモルドヴァの加盟交渉開始へ ハンガリーは採決を棄権
欧州連合(EU)加盟国は14日の首脳会議 (サミット)で、ウクライナとモルドヴァの加盟交渉を正式に開始すると決定した。併せて、ジョージアを正式な加盟候補国とした。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、「これはウクライナにとっての勝利だ。欧州にとっての勝利だ。動機を与え、活力を与え、強さを与える勝利だ」と述べた。
欧州理事会のシャルル・ミシェル議長の報道官は、この決定は全会一致で決まったと説明した。
ウクライナの加盟交渉開始をめぐっては、ハンガリーが長らく反対していたが、拒否権は発動しなかった。
ハンガリーのオルバン・ヴィクトル首相は、採決の際に一時的に会議場から退出。残る26カ国の首脳が採決に臨んだ。オルバン氏の退出について関係者は、あらかじめ合意された建設的なふるまいだと話している。
オルバン氏はその後、フェイスブックにビデオメッセージを投稿。「ウクライナのEU加盟は悪い決定だ。ハンガリーはこの悪い決定に参加したくないので、今日の決定から離れた」と述べ、他の首脳らから距離を置いた。
ウクライナとモルドヴァは、2022年2月にロシアがウクライナへの全面侵攻を開始した直後にEUへの加盟申請を行った。その後、今年6月に加盟候補国として承認されていた。ジョージアも同時期に申請したが、この時は加盟候補国にならなかった。
モルドヴァのマイア・サンドゥ大統領は、ウクライナとEU加盟への道を共有できたことを光栄に思うと発言。「ロシアの残忍な侵略に対するウクライナの勇敢な抵抗なくして、今日の我々の姿はなかった」と述べた。
2022年2月にロシアがウクライナに侵攻して以来、モルドヴァは、ロシア政府がスパイ行為や国内の反対勢力の支援を行っていると非難している。
今年2月には、ロシアが外国の「破壊工作員」を使い、モルドヴァでクーデターを起こそうとしていると警告。7月には、ロシアの外交官や大使館職員など合わせて45人を「非友好的活動」を理由に国外退去させた。
欧米からの支援に苦慮する中での政治的勝利
EU加盟候補国は、法の支配から経済まで幅広い基準の順守が求められるため、国内で一連の改革法案を通過させる必要がある。だがEU執行部はすでに、ウクライナ政府が司法と汚職への取り組みを90%以上完了させたとたたえている。
ドイツのオラフ・ショルツ首相は、加盟国が「支持への強い意志」を示したことを称賛。ウクライナとモルドヴァが「欧州の家族」の一員なのは明らかだと述べた。
外交筋によると、決議のためにオルバン氏に退場を促したのはショルツ氏の提案だったという。
EU加盟交渉には数年かかる可能性もあり、今回の決定はウクライナの加盟を保証するものではない。
だが、約22カ月に及ぶロシアとの戦争と、欧米からの軍事・財政援助の確保に苦闘を続けているウクライナにとっては、待望の朗報だ。
ゼレンスキー氏は今週初めにアメリカを訪問し、共和党議員に阻まれている610億ドルの軍事費拠出を可決するよう、米議会を説得しようとした。
ロシアの占領軍に対するウクライナの反転攻勢は、冬の始まりとともに停止状態にある。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は14日の演説でウクライナをあざけり、西側の支援はもう限界だと主張した。「下品な言い方で申し訳ないが、ウクライナに持ち込まれる何もかも、おまけ、無料の景品みたいなものだ。しかし、もらえる景品もいつかは尽きるかもしれない。実際、徐々になくなりつつあるようだ」と、プーチン氏は語った。
しかしゼレンスキー氏は少なくとも、今回の政治的勝利を、ウクライナが徐々にパートナーから見放されているわけではないという証拠にできるとみられる。
欧州理事会のミシェル議長は、これは「ウクライナの人々に、我々は彼らの味方だと示す非常に強力なシグナルだ」と述べた。
アメリカのジェイク・サリヴァン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は、EUの「歴史的な」動きを歓迎。ウクライナとモルドヴァの「EUおよび北大西洋条約機構(NATO)加盟の願望を実現するための重要な一歩」だと述べた。
ジョージアにとって「記念すべきマイルストーン」
今回、加盟候補国となったジョージアのサロメ・ズラビシヴィリ大統領は、EUの決定は「記念すべきマイルストーン」だと述べた。
ジョージア国民は親EU派が多いものの、政府はロシアと複雑な関係にあり、ウクライナ侵攻が始まって以降も、対ロ制裁を実施していない。
10月には、ジョージアの独立分離派が実効支配しているアブハジアに、ロシアが海軍基地を建設する予定だと報じられた。
2008年のロシアとジョージアとの紛争の際、ロシアはアブハジアの独立を承認。ジョージアは、アブハジアがロシアに占領されているとしている。
ミシェル欧州議会理事長はさらに、ボスニア・ヘルツェゴビナが加盟基準を満たせば交渉を開始する用意があると述べた。ボスニア・ヘルツェゴビナは1年前に加盟候補国としての地位を与えられたが、先月の報告書では、選挙制度と司法改革でさらに必要とされる措置が列挙されていた。
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